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「社交に疎い私の耳にも公爵の病弱な三男の噂は入ります。貴方の体は病弱だったとは思えません」
「ああ、俺は公爵から声がかかり死んだ三男に成り代わった。公爵はいつかの為に三男の死を報告していない。三男は隣国の田舎で静養していると今でも生きていると思わせていた。とうの昔に死んだのにな」
「でも公爵の奥様は、」
「公爵は自分の妻も騙してる。子爵から金を貸さないと言われた時にこの計画が始まった。公爵は三男を隣国の田舎に移した。そして子爵を恨んでいる俺を捜し出し俺を三男の代わりにした。
公爵の妻には俺が三男に成り代わり手紙を出した。俺はその田舎の家で公爵令息としての学やマナー、心得、目的の為ならどんな努力もした。
公爵は例え三男の母親でも妻を息子に会わせなかった。幼い頃見た息子の姿が大人になり多少変わっていても元気になって良かった、それだけだ。髪の色は薬の影響で変わったそう何度も手紙に書いた。だから母上に会うのが怖いと、嫌われるのが怖いとそう何度も書いた。
母上は俺を三男として受け入れた」
「なら公爵様と貴方の計画は子爵家の乗っ取りですか?」
「ああそうだ。公爵はこの家の金と子爵の妻、そして俺を子爵にさせ金の維持。俺は妹の仇が取れればそれでいい」
「ならお母様は公爵様の奥様になると?公爵様の奥様は大公殿下の娘です。そのお方と離縁なんて出来るでしょうか」
「いいや、もうそれは出来ない。お前の母親はお前の父親が殺した」
「そう…、ですか……。ならお父様は?お父様がすんなり、」
「お前の父親は俺が殺した。そして俺はお前を殺し、子爵家一家惨殺事件の出来上がりだ。俺は命からがら逃げ出してなんとか助かった、それが筋書きだ。賊の捕縛は難しい。お前の父親を恨む奴は多いからな。それにこの家の金を奪う奴も多い」
「そうですね…、お金は人を狂わせます。でもお金がないと生きていけない、それも残念な事に事実です。
どうぞ筋書き通りに私を殺して下さい」
「どうしてお前はすんなり命を差し出す。お前の父親も今思えば、」
「お父様がどうかは分かりませんが、私は何人もの無念な死に払うものが多すぎます。私の命を守る為に勝手に死を選ばされた少女達の身内に殺されるなら、それを受け入れます。私一人の命ですが、少しでも彼女達に返せるのなら。
それに愛する貴方に殺されるのならそれも本望。私は貴方の心に永遠に残り続けるでしょう。
貴方は妹の仇を討った、アニーを思い出すたび私の事も思いだす、そうでしょ?」
私もお父様と同じ血が流れているのね。お父様とは違う愛の形。どんな形であれ愛する人の心に残り続けるのならそれも私の愛。
あぁ、なんて自分勝手な愛なの。
最後の最後まで愛する人の温もりに触れられ、愛する人に殺される。そして私は永遠に愛する人の心に残る。
きっとお父様はお母様を死んでも離すつもりはない。
それに、昔お父様が言っていた。
『目的の為なら手段を選ばない。それが善でも悪でも。俺を止めれるのは俺だけだ』
幼すぎで意味は分からなかった。
でも、お父様は言った。
『彼の目かな。俺は俺と同じ奴に興味が湧いた、それだけだ』
お父様は自分に似たヒュース様に殺されるのならそれならそれでいい、そう思いすんなり殺させた。
それもまた一興
そうね、そうだわ。きっとお父様は笑っているわ。
お父様にとってお金よりもこの家よりも大事なお母様を永遠に手に入れ後を追った。死んでも逃さないと。
そこまでお母様を愛していたなんて知らなかった。
お母様も大変ね。執念深いお父様に狙われ、ようやく離れられたと思っていたのにまた狙われる。
可哀想なお母様…。
でも安心して。私はそちらに行っても二人の邪魔はしないわ。アニーに会えるか分からないけど、もし、会えたら…、また一緒に遊びたい。あの楽しかった頃のように…。
あぁ、ブローチを持っていけないのが残念だわ…。
私室の衣装部屋の奥、鍵のかかった小部屋。祭壇に毎朝お祈りする。そこにアニーのブローチも飾ってある。渡せなかったブローチ…。
私の為に犠牲になった少女達に私が出来る事は懺悔と祈りだけ。子供の頃から欠かした事のない私の日課。
あぁ神よ…、彼女達に幸福を…
最後に私は心の中で祈りを捧げた。
「ひと思いに、どうぞ」
私は目を瞑った。音だけが鮮明に聞こえる。
ヒュース様が剣を振り上げ、剣を振り下ろした……
これで私は永遠に貴方の心に残る………
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