1 / 7
1
しおりを挟む私は目の前に座る婚約者からもう何度目かの、
「俺は運命の女性を見つけた」
「また?」
「信じてないな?今度こそ運命の女性だ」
「そう」
「エマ」
エマと呼ばれる女性が彼の隣に座った。
目の前でベタベタとする彼とエマ…
私は何を見せられているのかしら。
今日は週に一度の婚約者とデートの日。いつも待ちあわせをする喫茶店。
彼も私も子爵家、そして2歳だったか3歳だったかに婚約者になって以来、15年?14年?が経った。
彼、ロニーと、私、ライラは幼馴染みでお互いお腹の中にいる時からの付き合いなの。ロニーが私より1ヶ月早く産まれ、産まれてからほとんど一緒に育ったわ。
お互いの母親同士が親友で家も近くて同じ時期に子を宿し、産まれたのが男の子と女の子、「これは結婚させないと」と張り切ったお母様達のおかげで物心ついた頃にはロニーとの記憶しかないわ。
それでも、張り切ったお母様達が婚約を決めたんじゃないのよ?
2歳だったか3歳だったか、親の真似を多分したのか、偶然か、キスをしたらしいの。覚えていないから分からないけど。一度したら面白くてか何度もしていたらしいの。
それを見たロニーのお父様が、
「嫁入り前の女性の唇を奪い傷物にしてしまった。責任を取らせてほしい。それに、口付けは婚約者とするものだ、ライラをロニーの婚約者にしてはもらえないだろうか」
元々乗り気だったお母様達は喜び、私のお父様もいずれ誰かに嫁ぐなら知り合いの方が良いとなって婚約したみたい。
でも、考えてみて?
17歳にもなれば、結婚する前にキスをする人はいるし、まぁ婚約者とだけど、それでも婚約者以外とする人だっているでしょ?
目の前のロニーも「運命の女性」ときっとキスしてるわよ?その先は知らないけど。
幼い頃から一緒に居すぎてお互い、家族、兄妹、友達、まぁ、恋愛感情は全くないのよね。
ならどうして婚約解消しないのかって?
ロニーは私と婚約解消をしたら家から勘当され、私は窓の外で待ってるロニーの家の騎士を見ていたいから。
13歳年上だから憧れに近いけどね。
「おい、聞いてるのか?ライラ」
「え?何を?」
「今度こそ運命の女性なんだ」
「なら頑張って?」
「ああ」
ロニーが運命の女性を探している間は憧れの人を見れるし、ロニーの事も嫌いじゃない。
でも、どうしてロニーは運命の人を探しているんだろ?
詳しく聞いた事は無かったな…。
エマさんが帰り、
「エマさん良かったの?」
「今日はライラとの時間だろ?」
「そうだけど」
「ライラ、ケーキ食べるか?」
「そうね」
「ライラはチーズケーキだろ?」
「ええ」
「今日は紅茶?それともハーブティー?」
「う~ん、なら紅茶」
「なら俺はハーブティーを頼むよ。どうせ一口飲ませてって言うだろ?」
「言わないわよ」
目の前に運ばれたケーキと飲み物、私はチーズケーキを食べ、
「ロニー」
「なら交換な」
「ありがとう」
ロニーのチョコケーキを食べる。
「ライラはいつも美味しそうに食べるよな?」
「だって美味しいもの」
私達はいつも半分食べたら交換するの。
「ロニー」
「だと思った」
「ありがとう」
私はハーブティーを飲んだ。
「ねぇ、エマさんとは今度はどこで知り合ったの?」
「エマとは本屋で知り合ったんだ。同じ本を取ろうとして、これは運命だって思ったよ」
「そうなんだ」
「さあ、帰ろうか」
「今日はどっち?」
「今日は俺の家」
「ならこの前の本の続き読もうかな?」
「なら俺は少し寝る」
ある時はハンカチを拾った、ある時は回避しようとしたら同じ方に回避した、ある時は席が横になった、ある時は落とした小銭が足元にあった、まだまだ色々あるけど、それでも数ヶ月すると「運命の人とは違った」って言うのよね。「なんで?」って聞くと「しっくりこない」って。
まあ、好きなだけ運命の人を探して?
65
あなたにおすすめの小説
呪いを受けて醜くなっても、婚約者は変わらず愛してくれました
しろねこ。
恋愛
婚約者が倒れた。
そんな連絡を受け、ティタンは急いで彼女の元へと向かう。
そこで見たのはあれほどまでに美しかった彼女の変わり果てた姿だ。
全身包帯で覆われ、顔も見えない。
所々見える皮膚は赤や黒といった色をしている。
「なぜこのようなことに…」
愛する人のこのような姿にティタンはただただ悲しむばかりだ。
同名キャラで複数の話を書いています。
作品により立場や地位、性格が多少変わっていますので、アナザーワールド的に読んで頂ければありがたいです。
この作品は少し古く、設定がまだ凝り固まって無い頃のものです。
皆ちょっと性格違いますが、これもこれでいいかなと載せてみます。
短めの話なのですが、重めな愛です。
お楽しみいただければと思います。
小説家になろうさん、カクヨムさんでもアップしてます!
自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。
カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。
そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。
ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。
意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。
「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」
意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。
そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。
これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。
全10話
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。
※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。
※小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
悪役令嬢はいない、癒やす女はいる
kieiku
恋愛
「わたくしの婚約者であるアルフレッド殿下を癒やしているというのは、あなたで間違いなくて?」
突然の侯爵令嬢の襲来に、ミーニャは青ざめた。アルフレッドと親しくしているのは間違いない。侯爵令嬢の不興をかい、牢屋にぶちこまれてしまうのだろうか?
「わたくしのことも癒やしなさい!」
「…………えぇ?」
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
私の完璧な婚約者
夏八木アオ
恋愛
完璧な婚約者の隣が息苦しくて、婚約取り消しできないかなぁと思ったことが相手に伝わってしまうすれ違いラブコメです。
※ちょっとだけ虫が出てくるので気をつけてください(Gではないです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる