厨二病設定てんこ盛りの王子殿下が迫って来ます。 〜異世界に転生したら、厨二病王子の通訳者にされました〜【R18版】

笛路

文字の大きさ
98 / 196

97:俺だけに。 side:ロブ

しおりを挟む



「セオドリック殿下、ザラ嬢とリジー嬢に休むよう命令して下さい」
「……」

 もうこれ以上は無理だと思った。
 セオドリック殿下に頼むのは、正直、不本意だ。
 だが、俺から言っても、侍女長から言っても、ザラ嬢は譲らない。
 俺たちじゃ駄目なんだ。頼らざるを得ない。
 そして、セオドリック殿下も、もうギリギリだ。
 早朝から深夜まで、軍を動かし、協議を重ね、お嬢を繋ぎ止めようとしている。

「ロブ」
「はい」
「お前も休め。明日と明後日は私がミラベルを見ておく。いいな?」
「……はい。お願いいたします」

 殿下から二人に命令してもらった。
 なのに、ザラ嬢は頑として引かなかった。

「私の主人はミラベルお嬢様です。セオドリック殿下のご命令でも、聞くことはできません」
「ザラ嬢、セオドリック殿下に任せるべきです」
「ですが――――」

 なんとかザラ嬢を説得して、残務処理や、控えの間に置かれていたザラ嬢の荷物などを運ぶ手伝いをしていた時だった。
 耳をつんざくような叫び声と、縋るように呼ばれる名前。
 駆けつけなければと思う気持ちと、セオドリック殿下に任せるべきだという気持ちが、拮抗した。
 
 目の端で茶色と黒と白の物体が素早く動いた。
 慌てて追いかけて、腕を掴んだが、一足遅かった。
 いったい、どこにそんな力があるのか……。
 ザラ嬢に引きずられるように、俺までお嬢の部屋に入ってしまった。

「入ってくるなと言っていたはずだが?」
「で、ですが……」
「とにかく、お前たちは二日間しっかりと休め」
「「はい」」

 いつの間にか横にいたリジーも殿下に了承の返事をし、一緒にザラ嬢の背中を支えながら、お嬢の部屋を出た。



 侍女棟のザラ嬢の部屋に荷物を運んだ。
 棟入り口にいた警備の女騎士は知り合いだったため、事情を話して特別に通してもらった。

「荷物はここでいいですか?」
「ええ、ありがとう存じます」
「「……」」

 部屋の机の上に荷物を置いたら、会話が途切れた。
 いや、元々なにも話してはいなかったけども。
 気まずい。
 とても、気まずい。
 何か話さなければ……。

「お嬢……大丈夫っすかね」
「…………まだ、お嬢様の事が好きなの?」
「へ⁉」

 予想だにしていなかった方向性の返しだったせいでびっくりしてしまったのと、やっぱバレバレだよなぁと、考えてしまったこと、この前キスされた事を思い出したのが合わさって、顔が真っ赤になってしまった、んだと思う。
 高熱を出したのかと思うくらいに、全身が熱かった。

「っ、あ、いや――――」

 ――――好き。

 好き、なんだと思う。
 だけど、もうどうにもならない事だ。
 既に諦めは付いている。
 といっても、わりと最近そう思えるようになったんだけど。

 お嬢のために国ひとつ落とそうとしたり。国王陛下――父親――を脅したり。今までの努力を捨て、皆の前で普通に話し、軍をまとめあげたり。
 王族との婚姻は相応しくない、と言われてしまっているお嬢を、絶対に守り通そうとする殿下。
 正直なところ、格好良い、と思った。

「ハハッ。そうっすね」

 キラキラした笑顔で殿下を見つめるお嬢と、表情が崩れそうになるのを必死に我慢する殿下。そんな、いつだかに見た二人の姿を思い出して、自然と笑いが溢れた。

「…………っ、ふ」

 詰まったような声が聞こえて、その方向を見ると、ザラ嬢が緑の瞳からボロボロと雫を落としていた。
 眉を寄せ、下唇を噛み、両手をきつく握りしめていた。
 いつも澄ました顔で、凛として、そつなく何でもこなす、優秀な女性。
 そんな人の弱った姿を見て、俺の頭は真っ白になった。

 ふらふらと近付き、両手で彼女の頬を包み、親指で涙を拭い、下瞼を撫でる。
 噛み締めていた唇が「ふぇ」という少し間抜けな声とともにプルンと解放されたのを見て、全身が滾るように熱くなり、そこに吸い寄せられた。

 重ねた唇は、熱く、甘かった。



 舌を絡め合い、唾液を交換しながら、服を脱がせあった。
 ベッドに倒れ込み、ささやかな胸にキスを落とし、膨れ上がった果実を貪り食った。
 密を啜り、震えさせ、喘がせ、懇願させ、貫いた。

「あぁぁ! ロブッ!」
「くっ…………ザラ嬢、ザラッ!」

 ドクドクと中に注ぎ込み、また腰を振った。

「あっ、ひゃっ、い、イってるの……や、まって!」
「嬉しそうに、締め付けているのに?」
「っ――――」

 へその下を掌でクッと押すと、ザラは背中を仰け反らせ、いっそう艷やかに喘いだ。
 凛とした人を、俺が乱しているのだと思うと、妙な愉楽を感じ、もっと乱して、前後不覚にしたい、そう思った。

 何度も腹の中に滾ったモノを放出した。
 くたりと倒れ込んでいるザラから、ズルリと自身を引き出すと、ザラの蜜口から、ゴプリゴプリと白濁が溢れ出した。
 ソレを見て何故か、栓をしなければ、という焦燥感に駆られ、また貫いてしまった。

「ひあぁぁぁ!」
「ザラ、綺麗だ」
「ゃ、んっ、あっ、あっ」
「ザラ、可愛い。なぁ、もっと乱れて、もっと素を見せてくれよ。ザラ――――」

 ――――あぁ、俺は。

「好きだ」
「っ⁉ そんっ……あっ、んあぁぁぁぁぁ!」

 ザラは、何度目かの絶頂で疲れていたのか、そのまま意識を飛ばして眠ってしまった。

 ザラの体を拭き清め、汚れたシーツを剥ぎ、ベッドの上に寝かせると、するりと腕を伸ばし、首に抱きついて来た。

「ザラ?」

 スヤスヤとあどけない顔で、俺の胸に頬を寄せて寝ている。
 その無防備な姿に、俺の下半身はまた芯を持ち出してしまった。

「……猿かよ」

 ザラの頬を撫で、額にキスを落とし、ギュッと抱き寄せ、目を閉じた。



 彼女は、「同情だったんでしょう」「その場の成り行きよ」「貴方は流されただけ」「恋や愛じゃない」なんて言うけれど。
 体から始まる『恋や愛』があっても良いじゃないか。

 黒い侍女服でガチガチに武装し、完璧を装う彼女の弱い部分を知っているのは、きっと俺だけだ。
 
 ――――もっと、俺だけに見せて?


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...