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97:俺だけに。 side:ロブ
しおりを挟む「セオドリック殿下、ザラ嬢とリジー嬢に休むよう命令して下さい」
「……」
もうこれ以上は無理だと思った。
セオドリック殿下に頼むのは、正直、不本意だ。
だが、俺から言っても、侍女長から言っても、ザラ嬢は譲らない。
俺たちじゃ駄目なんだ。頼らざるを得ない。
そして、セオドリック殿下も、もうギリギリだ。
早朝から深夜まで、軍を動かし、協議を重ね、お嬢を繋ぎ止めようとしている。
「ロブ」
「はい」
「お前も休め。明日と明後日は私がミラベルを見ておく。いいな?」
「……はい。お願いいたします」
殿下から二人に命令してもらった。
なのに、ザラ嬢は頑として引かなかった。
「私の主人はミラベルお嬢様です。セオドリック殿下のご命令でも、聞くことはできません」
「ザラ嬢、セオドリック殿下に任せるべきです」
「ですが――――」
なんとかザラ嬢を説得して、残務処理や、控えの間に置かれていたザラ嬢の荷物などを運ぶ手伝いをしていた時だった。
耳を劈くような叫び声と、縋るように呼ばれる名前。
駆けつけなければと思う気持ちと、セオドリック殿下に任せるべきだという気持ちが、拮抗した。
目の端で茶色と黒と白の物体が素早く動いた。
慌てて追いかけて、腕を掴んだが、一足遅かった。
いったい、どこにそんな力があるのか……。
ザラ嬢に引きずられるように、俺までお嬢の部屋に入ってしまった。
「入ってくるなと言っていたはずだが?」
「で、ですが……」
「とにかく、お前たちは二日間しっかりと休め」
「「はい」」
いつの間にか横にいたリジーも殿下に了承の返事をし、一緒にザラ嬢の背中を支えながら、お嬢の部屋を出た。
侍女棟のザラ嬢の部屋に荷物を運んだ。
棟入り口にいた警備の女騎士は知り合いだったため、事情を話して特別に通してもらった。
「荷物はここでいいですか?」
「ええ、ありがとう存じます」
「「……」」
部屋の机の上に荷物を置いたら、会話が途切れた。
いや、元々なにも話してはいなかったけども。
気まずい。
とても、気まずい。
何か話さなければ……。
「お嬢……大丈夫っすかね」
「…………まだ、お嬢様の事が好きなの?」
「へ⁉」
予想だにしていなかった方向性の返しだったせいでびっくりしてしまったのと、やっぱバレバレだよなぁと、考えてしまったこと、この前キスされた事を思い出したのが合わさって、顔が真っ赤になってしまった、んだと思う。
高熱を出したのかと思うくらいに、全身が熱かった。
「っ、あ、いや――――」
――――好き。
好き、なんだと思う。
だけど、もうどうにもならない事だ。
既に諦めは付いている。
といっても、わりと最近そう思えるようになったんだけど。
お嬢のために国ひとつ落とそうとしたり。国王陛下――父親――を脅したり。今までの努力を捨て、皆の前で普通に話し、軍をまとめあげたり。
王族との婚姻は相応しくない、と言われてしまっているお嬢を、絶対に守り通そうとする殿下。
正直なところ、格好良い、と思った。
「ハハッ。そうっすね」
キラキラした笑顔で殿下を見つめるお嬢と、表情が崩れそうになるのを必死に我慢する殿下。そんな、いつだかに見た二人の姿を思い出して、自然と笑いが溢れた。
「…………っ、ふ」
詰まったような声が聞こえて、その方向を見ると、ザラ嬢が緑の瞳からボロボロと雫を落としていた。
眉を寄せ、下唇を噛み、両手をきつく握りしめていた。
いつも澄ました顔で、凛として、そつなく何でもこなす、優秀な女性。
そんな人の弱った姿を見て、俺の頭は真っ白になった。
ふらふらと近付き、両手で彼女の頬を包み、親指で涙を拭い、下瞼を撫でる。
噛み締めていた唇が「ふぇ」という少し間抜けな声とともにプルンと解放されたのを見て、全身が滾るように熱くなり、そこに吸い寄せられた。
重ねた唇は、熱く、甘かった。
舌を絡め合い、唾液を交換しながら、服を脱がせあった。
ベッドに倒れ込み、ささやかな胸にキスを落とし、膨れ上がった果実を貪り食った。
密を啜り、震えさせ、喘がせ、懇願させ、貫いた。
「あぁぁ! ロブッ!」
「くっ…………ザラ嬢、ザラッ!」
ドクドクと中に注ぎ込み、また腰を振った。
「あっ、ひゃっ、い、イってるの……や、まって!」
「嬉しそうに、締め付けているのに?」
「っ――――」
へその下を掌でクッと押すと、ザラは背中を仰け反らせ、いっそう艷やかに喘いだ。
凛とした人を、俺が乱しているのだと思うと、妙な愉楽を感じ、もっと乱して、前後不覚にしたい、そう思った。
何度も腹の中に滾ったモノを放出した。
くたりと倒れ込んでいるザラから、ズルリと自身を引き出すと、ザラの蜜口から、ゴプリゴプリと白濁が溢れ出した。
ソレを見て何故か、栓をしなければ、という焦燥感に駆られ、また貫いてしまった。
「ひあぁぁぁ!」
「ザラ、綺麗だ」
「ゃ、んっ、あっ、あっ」
「ザラ、可愛い。なぁ、もっと乱れて、もっと素を見せてくれよ。ザラ――――」
――――あぁ、俺は。
「好きだ」
「っ⁉ そんっ……あっ、んあぁぁぁぁぁ!」
ザラは、何度目かの絶頂で疲れていたのか、そのまま意識を飛ばして眠ってしまった。
ザラの体を拭き清め、汚れたシーツを剥ぎ、ベッドの上に寝かせると、するりと腕を伸ばし、首に抱きついて来た。
「ザラ?」
スヤスヤとあどけない顔で、俺の胸に頬を寄せて寝ている。
その無防備な姿に、俺の下半身はまた芯を持ち出してしまった。
「……猿かよ」
ザラの頬を撫で、額にキスを落とし、ギュッと抱き寄せ、目を閉じた。
彼女は、「同情だったんでしょう」「その場の成り行きよ」「貴方は流されただけ」「恋や愛じゃない」なんて言うけれど。
体から始まる『恋や愛』があっても良いじゃないか。
黒い侍女服でガチガチに武装し、完璧を装う彼女の弱い部分を知っているのは、きっと俺だけだ。
――――もっと、俺だけに見せて?
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