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170:新たな一歩。
しおりを挟むテオ様にお話しした三日後の朝、離乳食を食べさせてみることになりました。
初めての離乳食は、液状の薄いお粥のようなものです。
「テオ様、さぁどうぞ」
「む? 私が一番でいいのか⁉」
キラッキラの笑顔で言われても。
ここで駄目とか言ったら、たぶん泣きますよね?
あら、それはそれで見てみたい…………おっと。
サディスティックミラベルがひょこっと顔を出してしまいました。
「もちろんですわ!」
「んっ!」
あらあら、少年のように笑われましたわ。
それほどに嬉しいのですねぇ。テオ様、可愛いです。
テオ様が、小さなスプーンにお粥を少しだけ掬い、レジナルドの口元に、そうっとそうっと持って行きました。
レジナルドは、スプーンをジッと見つめ、パカーッと口を開けました。
「口を開けたぞ!」
「ふふふ、はい。お口に入れてあげてくだい」
「ん!」
テオ様、大興奮です。
小声で叫ぶという、謎の特技を披露されました。
テオ様がスプーンをレジナルドの口に入れると、レジナルドはムグムグと口を動かしながら、お粥を食べました。
テオ様は、そんなレジナルドのムグムグを破顔しつつ眺めています。
そして、レジナルドに話しかけながら、再度スプーンでお粥を掬ったところでビクリと身体を揺らしました。
「美味いか? もっとか? あっ、ミラベルも与えたいよなっ!」
「あははっ!」
こんなにも子育てに参加したり、率先して手伝ってくださる男性はいないのではないかと思います。
特に、貴族や王族などの身分の高い方になればなるほどに。
そう考えると、嬉しくて、楽しくて、幸せで。
何より、夢中になっているテオ様が可愛くて、面白くて、いつの間にか笑い声を上げてしまっていました。
「ぜひ、テオ様が食べさせてあげてください。私は見ているだけで、幸せいっぱいです」
「ん? そうか? ほら、レジナルド、あーんしろ」
急に笑いだした私を見て、テオ様もレジナルドとキョトンとしています。
ふとした表情がそっくりだなぁと思うと、また笑いが込み上げてきて、クスクスと笑ってしまっていました。
「変な母上だな?」
「だぶー」
「こら、口から溢すな! あーん、だ。あーん!」
「だー」
「よし、良い子だ」
テオ様が最後のひと掬いをレジナルドに与えて、離乳食初体験は終わりました。
これからは、アレルギーが出ないかの確認をしつつ、日を置きながら徐々に食材を増やしていく予定です。
「アレルギーか。私は全くなかったが、ミラベルはどうだ?」
「私もありませんでしたが、お兄様は小さい頃だけ卵白に反応が出ていたそうです」
「あぁ、卵白は出やすいとよく聞くな。レジナルドに与えるときも、気をつけねばな」
「ええ、そうですね」
うんうんと頷いていましたら、テオ様がレジナルドを抱き上げて、こちらに近付いてきました。
抱っこは、初めの頃は恐る恐るといった感じでしたが、最近はとても自然です。
上手になったなぁ、なんて見ていましたら、ちゅ、と唇にキスされました。
「んっ⁉」
「……ミラベル、私達も新たな一本を踏み出そうか?」
「新たな一歩、ですか?」
「ん。そろそろ、な。また、愛し合おう?」
「――――っ!」
不覚にも、ときめいたとかは、テオ様には内緒です。
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