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「さっきも言ったが、それはお前の生まれつきの蛇口の捻り方だ。チョロチョロか、ドバァーッとか、二つに一つ。だから今まで、普通のやり方はお前には意味がねえって言ったんだ」
するとその時、また身体の奥底で鍵が閉まるような音がした。と思ったら、溢れ出ていた魔力が急速に萎み、普段と変わらない状態になる。
「えっと……」
「お前の中には、元々大量の魔力が眠ってる。それは今見せた通りだ」
「……初めて知った」
「だろうな。珍しい体質だし。リリーシュもこういう事例はあんま詳しくねえんじゃねえかな」
「そう、なの?」
「ああ。オレも冒険してて、極稀にそういう奴に出会ったりするだけだ。まあ、そいつらは自分の鍵の外し方は知ってるけどな」
「うぅ……ボクは自分のことすら何も知らなかったわけかぁ」
とんだダメ人間である。益々落ち込んでしまう。
「そう悲観することもねえぞ。自分のことを完璧に分かってる奴なんてそうそういねえし、その体質の持ち主は総じて魔族みてえな魔力が多い種族に見られるもんだしな。現在の勇者にも一人いるかいないかくらいじゃねえの?」
「そ、そんなにボクの魔力量って多いの?」
「そうだな。潜在的な魔力量でいえば、リリーシュの十倍以上は確実にあると思うぞ」
「じゅっ……っ!?」
吃驚してしまうほどの解答が返ってきた。
(リリーシュ先生は、《上級呪文》だって何発も打てるほど魔力量が多いのに……!)
実技の授業で何度かリリーシュの魔法を見ているのだ。その時に《上級呪文》を発動する時の魔力量を目にしていた。その十倍とは明らかに異常だと思われるほどだ。
「まあ、扱えなきゃただの宝の持ち腐れだけどな」
「あぅ……そうだよねぇ……」
「でもこれで、お前に合う修業方法は明確になったんじゃねえか?」
修業方法と聞いて、ついワクワクしている自分がいることに気づく。思わず物欲しさにイオの顔を見上げる。
「まずは自分で鍵を外せるようになること。そんで小手先よりも大呪文をマスターすることだ」
大呪文をマスター。その言葉を聞いただけで胸が躍る。
今までは《下級呪文》でさえまともに扱えなかったのに。
「……あ、でも」
「ん? 何だ?」
「えと……ボク、家庭教師を雇えるほどお金に余裕が……ない」
「んなもん気にすんな」
「へ?」
「これはお前の依頼じゃなくて、リリーシュの依頼だからな。依頼料はアイツからもらうし、アイツだってそのつもりだから、こうやってオレの家まで用意したんだろうよ」
「そんな!? これはボク自身のことなのに!?」
「そんなに気にすんなら、お前が早く勇者になって稼いで、アイツに返せばいいんじゃねえの?」
「け、けど……いいのかな、そんなに甘えて……」
「子供はな、甘えられる時に甘えとけ。大人になったらそんなことできなくなるんだしよ」
しかしさすがに何も対価を支払わないというのは……。
「……ちょっとずつでもお小遣いからリリーシュ先生に返すようにする!」
「……まあ、好きにすりゃいいけどよ。一応現役の勇者を個人で雇ってんだから、普通は結構高えぞ?」
「う……ど、どれくらい?」
「勇者を個人で雇うのはピンキリだけど……普通で百万ドリーくらいじゃねえか?」
「ひゃっ……!?」
耳を疑ってしまう値段が飛び込んできた。
この世界で店に気軽に手に入る果実が一つで50ドリーほどだ。一般的な宿に一泊するのは一万~二万ドリーほど。つまり単純計算で宿には最低でも五十泊できる金額ということ。
さすがは高給取りの勇者である。
「ま、今は出世払いってことで納得しとけ。けどまぁ、これで益々勇者にならねえといけなくなったみてえだけどな」
「うぅ……ぜ、絶対になるもん! 勇者に絶対なってやるもんっ!」
あとには引けなくなった感じだが、それでもこれが良い転機になればとアミッツは願った。
するとその時、また身体の奥底で鍵が閉まるような音がした。と思ったら、溢れ出ていた魔力が急速に萎み、普段と変わらない状態になる。
「えっと……」
「お前の中には、元々大量の魔力が眠ってる。それは今見せた通りだ」
「……初めて知った」
「だろうな。珍しい体質だし。リリーシュもこういう事例はあんま詳しくねえんじゃねえかな」
「そう、なの?」
「ああ。オレも冒険してて、極稀にそういう奴に出会ったりするだけだ。まあ、そいつらは自分の鍵の外し方は知ってるけどな」
「うぅ……ボクは自分のことすら何も知らなかったわけかぁ」
とんだダメ人間である。益々落ち込んでしまう。
「そう悲観することもねえぞ。自分のことを完璧に分かってる奴なんてそうそういねえし、その体質の持ち主は総じて魔族みてえな魔力が多い種族に見られるもんだしな。現在の勇者にも一人いるかいないかくらいじゃねえの?」
「そ、そんなにボクの魔力量って多いの?」
「そうだな。潜在的な魔力量でいえば、リリーシュの十倍以上は確実にあると思うぞ」
「じゅっ……っ!?」
吃驚してしまうほどの解答が返ってきた。
(リリーシュ先生は、《上級呪文》だって何発も打てるほど魔力量が多いのに……!)
実技の授業で何度かリリーシュの魔法を見ているのだ。その時に《上級呪文》を発動する時の魔力量を目にしていた。その十倍とは明らかに異常だと思われるほどだ。
「まあ、扱えなきゃただの宝の持ち腐れだけどな」
「あぅ……そうだよねぇ……」
「でもこれで、お前に合う修業方法は明確になったんじゃねえか?」
修業方法と聞いて、ついワクワクしている自分がいることに気づく。思わず物欲しさにイオの顔を見上げる。
「まずは自分で鍵を外せるようになること。そんで小手先よりも大呪文をマスターすることだ」
大呪文をマスター。その言葉を聞いただけで胸が躍る。
今までは《下級呪文》でさえまともに扱えなかったのに。
「……あ、でも」
「ん? 何だ?」
「えと……ボク、家庭教師を雇えるほどお金に余裕が……ない」
「んなもん気にすんな」
「へ?」
「これはお前の依頼じゃなくて、リリーシュの依頼だからな。依頼料はアイツからもらうし、アイツだってそのつもりだから、こうやってオレの家まで用意したんだろうよ」
「そんな!? これはボク自身のことなのに!?」
「そんなに気にすんなら、お前が早く勇者になって稼いで、アイツに返せばいいんじゃねえの?」
「け、けど……いいのかな、そんなに甘えて……」
「子供はな、甘えられる時に甘えとけ。大人になったらそんなことできなくなるんだしよ」
しかしさすがに何も対価を支払わないというのは……。
「……ちょっとずつでもお小遣いからリリーシュ先生に返すようにする!」
「……まあ、好きにすりゃいいけどよ。一応現役の勇者を個人で雇ってんだから、普通は結構高えぞ?」
「う……ど、どれくらい?」
「勇者を個人で雇うのはピンキリだけど……普通で百万ドリーくらいじゃねえか?」
「ひゃっ……!?」
耳を疑ってしまう値段が飛び込んできた。
この世界で店に気軽に手に入る果実が一つで50ドリーほどだ。一般的な宿に一泊するのは一万~二万ドリーほど。つまり単純計算で宿には最低でも五十泊できる金額ということ。
さすがは高給取りの勇者である。
「ま、今は出世払いってことで納得しとけ。けどまぁ、これで益々勇者にならねえといけなくなったみてえだけどな」
「うぅ……ぜ、絶対になるもん! 勇者に絶対なってやるもんっ!」
あとには引けなくなった感じだが、それでもこれが良い転機になればとアミッツは願った。
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Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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