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「――――ありがとう! ほんとにありがとうっ!」
チョコから星馬が助けたことを聞いた少女は、真っ先に頭を下げて礼を言ってきた。
「いやいや、別にいいって。何て言うか、たまたまだったし」
「ううん! そんなことないよ! ボクらは本当に感謝してるんだ!」
ここにきて――ボクっ娘……だとは。
“さ、さすがは異世界―――どこまでもオレをかきたてる”
またも脳内には溜め息が零れているが気にはしない。
「ボクはルフナ・フリーディア。妹と一緒に旅をしてるフリーの討伐屋だよ」
聞き慣れない単語が聞こえた。
“シンちゃん、討伐屋って?”
“簡単にいえば、魔物狩りで飯を食う連中のことだ”
“魔物って、さっきみたいなやつ?”
“そうだ。相手が強ければ強いほど報奨金が大きいらしい。ふむ、懐かしいものよ。我がまだ肉体があった頃、様々な討伐屋どもが狙ってきおったが、すべて返り討ちにしてやったものだ”
どうでもいいシンセークンの自慢話は置いておいて、そんな危険な職に就いているということは、この可愛らしい見た目にそぐわないほど彼女は腕利きということなのだろうか。
チョコと同じ夕日色の髪を持ちおさげに結っている。顔立ちもチョコを大人に成長させたような感じで、クリッとした大きな瞳は健在し、鼻立ちもすらっとしていて愛嬌も含んだ美少女ぶりだ。
ただ少し残念なのは水色のクロークっぽい服を着用している胸の辺りの膨らみは謙虚なご様子。細身で童顔だし、この上巨乳なら言うことはなかったが、さすがにそこまで完璧ではなかったようだ。もしかしたら着痩せするタイプかもしれないが。一応薄着になった時を期待しておこう。
「えと……君の名前聞いてもいいかな?」
「オレはセイバ。セイバ・オオモリだね。歳は十六」
「あ、一つ上なんだ。ボクは十五だからね。あとこの子に聞いたけど、魔物を一人であっという間に倒したってほんと?」
「海から来た奴は、それなりに強いからね」
完全に嘘だろうけど。しかしまさか異世界人だとは言えない。言っても信じないだろうし。
「海から。だからそんなに濡れてるの?」
「まあね。泳いで来たから」
「でもあっちの方角からだとしたら、南の大陸かぁ。凄いね、泳いで来たなんて。結構距離あるのに」
「鍛えてるから」
本当は棚からぼた餅感覚で手に入った力だけど。
「でもほんとにありがとね。いつの間にかこの子がいなくなっててさ」
「ごめんなさい。お姉ちゃんのために食べられるものをさがしてたの」
結局見つけられずに、崖から転落してしまったというわけだ。
「今度からは一人でボクから離れないこと、分かった?」
「はぁい」
「でも本当に無事で良かったよぉ」
ルフナがチョコの頭を撫でて、チョコは気持ち良さそうに「えへへ~」と笑っている。
そんな微笑ましい姉妹のやり取りを見ながら、
“そういや気になってたことがあるんだけどさ”
“何だ、セイバよ”
“オレって異世界から来たよね? 何でここの人たちと会話が通じ合うのさ?”
“オマエに関しては我、他の者たちに関しては《加護》があるからだ”
“なるほど。なら字とかも読める?”
“我の知っている文字ならばな。しかし書こうと思ったら文字を理解し覚えるしかないが”
またまた聞きたかった疑問の答えを得られて満足した。あまり読書は趣味ではないが、こちらの世界の図鑑には興味がある。魔物図鑑とか植物図鑑とか一度読みたいと思うし。
「……あのさ」
「ん? 何さ、えっと……フリーディアさん?」
「あ、ルフナでいいよ。さんもいらないし」
「うん。んじゃ、オレもセイバでいいよ、ルフナ」
「うん。あのね、何かお礼したいんだけど」
「ここは別にいいよって言って去るのがカッコ良いと思うんだけど、この大陸に来てまだ何も知らないから、できれば情報とかもらえると嬉しいかな」
「うん、何でも聞いて」
「街や村が近くにあるなら教えてほしい」
「あ、それならこれからボクたちも【リングスの村】に向かうところだから一緒に行く?」
「いいの? こう言ってはなんだけどさ、よく知りもしない男と一緒に行動するのは控えた方がいいと思うよ」
「ん~でもセイバは良い人だから」
良い人――それは多分間違っている。チョコを助けたのも、たまたま彼女が興味のある対象だったためで、まだ幼いという部分が大きかった。
これが男なら知らず存ぜぬを通した可能性が非常に高い。
良くも悪くも自分の欲求に素直なので、良い人というのはやはり違うと星馬は自分でそう分析している。
「ま、いいけど。方角は?」
ルフナが「あっちだね」と言いながら北東の方を指差す。西でなくて良かった。もしかしたらこのまま【ザッフィロ聖地】を指差されたら、猛スピードで逃げ出しているところだ。
(それにしても、旅を始めて最初にケモミミ少女二人と知り合うことができるとは。なかなか幸先の良い旅になるかもしれない)
男としてもやはり潤いがほしいと思っていたので、女性が傍にいるのは歓迎である。
“このまま奇妙なドラゴンとしばらく一緒っていうのはどうかと思ってたし”
“――失礼な”
何となく反りのあった竜と、初めての旅仲間二人を得て、星馬は異世界最初の村へ歩を進めて行く――。
チョコから星馬が助けたことを聞いた少女は、真っ先に頭を下げて礼を言ってきた。
「いやいや、別にいいって。何て言うか、たまたまだったし」
「ううん! そんなことないよ! ボクらは本当に感謝してるんだ!」
ここにきて――ボクっ娘……だとは。
“さ、さすがは異世界―――どこまでもオレをかきたてる”
またも脳内には溜め息が零れているが気にはしない。
「ボクはルフナ・フリーディア。妹と一緒に旅をしてるフリーの討伐屋だよ」
聞き慣れない単語が聞こえた。
“シンちゃん、討伐屋って?”
“簡単にいえば、魔物狩りで飯を食う連中のことだ”
“魔物って、さっきみたいなやつ?”
“そうだ。相手が強ければ強いほど報奨金が大きいらしい。ふむ、懐かしいものよ。我がまだ肉体があった頃、様々な討伐屋どもが狙ってきおったが、すべて返り討ちにしてやったものだ”
どうでもいいシンセークンの自慢話は置いておいて、そんな危険な職に就いているということは、この可愛らしい見た目にそぐわないほど彼女は腕利きということなのだろうか。
チョコと同じ夕日色の髪を持ちおさげに結っている。顔立ちもチョコを大人に成長させたような感じで、クリッとした大きな瞳は健在し、鼻立ちもすらっとしていて愛嬌も含んだ美少女ぶりだ。
ただ少し残念なのは水色のクロークっぽい服を着用している胸の辺りの膨らみは謙虚なご様子。細身で童顔だし、この上巨乳なら言うことはなかったが、さすがにそこまで完璧ではなかったようだ。もしかしたら着痩せするタイプかもしれないが。一応薄着になった時を期待しておこう。
「えと……君の名前聞いてもいいかな?」
「オレはセイバ。セイバ・オオモリだね。歳は十六」
「あ、一つ上なんだ。ボクは十五だからね。あとこの子に聞いたけど、魔物を一人であっという間に倒したってほんと?」
「海から来た奴は、それなりに強いからね」
完全に嘘だろうけど。しかしまさか異世界人だとは言えない。言っても信じないだろうし。
「海から。だからそんなに濡れてるの?」
「まあね。泳いで来たから」
「でもあっちの方角からだとしたら、南の大陸かぁ。凄いね、泳いで来たなんて。結構距離あるのに」
「鍛えてるから」
本当は棚からぼた餅感覚で手に入った力だけど。
「でもほんとにありがとね。いつの間にかこの子がいなくなっててさ」
「ごめんなさい。お姉ちゃんのために食べられるものをさがしてたの」
結局見つけられずに、崖から転落してしまったというわけだ。
「今度からは一人でボクから離れないこと、分かった?」
「はぁい」
「でも本当に無事で良かったよぉ」
ルフナがチョコの頭を撫でて、チョコは気持ち良さそうに「えへへ~」と笑っている。
そんな微笑ましい姉妹のやり取りを見ながら、
“そういや気になってたことがあるんだけどさ”
“何だ、セイバよ”
“オレって異世界から来たよね? 何でここの人たちと会話が通じ合うのさ?”
“オマエに関しては我、他の者たちに関しては《加護》があるからだ”
“なるほど。なら字とかも読める?”
“我の知っている文字ならばな。しかし書こうと思ったら文字を理解し覚えるしかないが”
またまた聞きたかった疑問の答えを得られて満足した。あまり読書は趣味ではないが、こちらの世界の図鑑には興味がある。魔物図鑑とか植物図鑑とか一度読みたいと思うし。
「……あのさ」
「ん? 何さ、えっと……フリーディアさん?」
「あ、ルフナでいいよ。さんもいらないし」
「うん。んじゃ、オレもセイバでいいよ、ルフナ」
「うん。あのね、何かお礼したいんだけど」
「ここは別にいいよって言って去るのがカッコ良いと思うんだけど、この大陸に来てまだ何も知らないから、できれば情報とかもらえると嬉しいかな」
「うん、何でも聞いて」
「街や村が近くにあるなら教えてほしい」
「あ、それならこれからボクたちも【リングスの村】に向かうところだから一緒に行く?」
「いいの? こう言ってはなんだけどさ、よく知りもしない男と一緒に行動するのは控えた方がいいと思うよ」
「ん~でもセイバは良い人だから」
良い人――それは多分間違っている。チョコを助けたのも、たまたま彼女が興味のある対象だったためで、まだ幼いという部分が大きかった。
これが男なら知らず存ぜぬを通した可能性が非常に高い。
良くも悪くも自分の欲求に素直なので、良い人というのはやはり違うと星馬は自分でそう分析している。
「ま、いいけど。方角は?」
ルフナが「あっちだね」と言いながら北東の方を指差す。西でなくて良かった。もしかしたらこのまま【ザッフィロ聖地】を指差されたら、猛スピードで逃げ出しているところだ。
(それにしても、旅を始めて最初にケモミミ少女二人と知り合うことができるとは。なかなか幸先の良い旅になるかもしれない)
男としてもやはり潤いがほしいと思っていたので、女性が傍にいるのは歓迎である。
“このまま奇妙なドラゴンとしばらく一緒っていうのはどうかと思ってたし”
“――失礼な”
何となく反りのあった竜と、初めての旅仲間二人を得て、星馬は異世界最初の村へ歩を進めて行く――。
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