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闇のオークションがついに開催された。
最初は奴隷ではなく、稀少なアイテムなどが舞台に上がり、続々と値が吊り上がっていく。
中にはモンスターの糞もあり、何が稀少なのか分からないが、コレクターたちにとっては手にしたいものなのか、信じられないくらいの値で落札された。
会場内は想像以上に盛り上がっており、熱気もあってウツワなどは当てられてあわあわとなっている。
極上の酒というのも出品されて、真悟がアレを落としたいと言ったので頭を小突いて本気で止めた。
そして熱気冷めやらぬ中、奴隷オークションの時間帯がやってくる。
リストでは笹時が出てくるのは――最後。
それまでの奴隷たちもまた絶望の表情を浮かべており、見ているだけで辛いものがあったが、さすがに彼女たちまで救える術がない。これからのことを考えても。
ウツワも悲痛な表情をしていたが、現状を理解しているようで顔を背けて耐えていた。
対照的に他の参加者たちは愉快気に笑っているが。本当に趣味の悪い連中である。
(それにしてもアイツ、凄いな)
天満の視線の先にいるのは、先程前方に座る者たちの話題にも上がっていたユーバッハ郷という人物だ。
これまで出てきた奴隷たちをすべて競り落としている。
それもどれも驚愕の値を口にして、他の追随を許さない。
(相当の資産家ってことだな)
問題はアレと対立しなければならないということ。
恐らく異世界人の奴隷ということで、是が非でも手に入れようとしてくるだろう。
織奈にどれだけの値がつくか想像もつかない。
(まあ、別にいい。どんだけの価値がついても……いや、多額になればなるほどこっちには都合が良いからな)
そして織奈の一つ前と思われる奴隷が前へ出てくる。
それまでの女性たちも美人だったが、彼女もまたレベルの高い美女だった。
「さあさあ、彼女は何と! 魔法も扱える奴隷でございます!」
舞台で進行をしている男が奴隷の説明に入る。
「しかし両親に捨てられてしまい、気づけば奴隷に……何と泣ける話でしょうか」
それも本当の話かどうかなど分かりはしまい。
「できれば優しい主に仕えたい。健気な彼女の気持ちに応えてあげてくださいませ! さあ、お値段は百万ギラから!」
一斉に手が上がり、凄まじい勢いで値が吊り上がっていく。
恰幅の良い男性が手を上げて「三億ギラ!」と高らかに宣言し、場の空気を静寂にさせる。さすがにそれ以上は出せないのか、悔しそうに歯噛みする者たちが出る。
そんな中――スッと手が上がった。ユーバッハである。
「――三億五千」
いきなり二千万も上乗せ。参加者もほとんどが観客となり歓声を上げる。
恰幅の良い男性も「うぐぐ」と呻きながらさらに「三億六千万ギラ」と口にする――が、
「――四億」
その言葉に、男性は項垂れてしまった。諦めたのだ。
「四億! 四億が出ました! さあ、他にいらっしゃいませんかぁ!」
誰も手は上げない。
「決まりました! こちらの奴隷は、番号札22番の方が落札されましたぁ!」
同時に拍手が巻き起こる。
(本当に凄まじい奴だな。計算すればアイツ、すでに十億くらい使ってるぞ)
一体どんな種類の金持ちなのか若干興味が湧いてくる。
日本にいたら「どんな石油王だよ」とツッコミを入れているところだろう。
「さあ、皆様お待たせいたしました! 次の出品が此度のオークション最後の品にございまーすっ!」
瞬時にして雰囲気が張りつめた。
先程の奴隷よりもさらに緊迫した雰囲気だ。
(やっぱりどいつもこいつも笹時を手に入れようとしてるのか)
ただの興味深さもあるだろうが、一体どんな高額落札になってしまうのか定かではない。
下手からゆっくりと、《隷属の首輪》を嵌められた一人の少女が、鎖に繋がれ舞台の中央まで連れて来られる。
(――笹時!)
それは間違いなく、自分たちと同じ同郷人――笹時織奈だった。
着用している服は、制服のままだ。その方が見栄えが良いという判断なのだろうか。
また彼女も不安気に顔を上げた時に、天満を視界に収めたようで目が合った。
何かを言いたそうに口を開けたが、すぐに閉じる。
彼女の今の外見だけで、捕まってからどれほどの辛い思いをしてきたのかが伝わってきた。
目の隈に若干頬もこけている。髪もボサボサだ。
それでも僅かな希望に縋って生きてきたのだろう。
親しくはない彼女だが、天満はそんな彼女の痛々しいまでの姿を見て助けてやりたいと強く思った。
(もうすぐだ、だからちょっとだけ辛抱してくれ)
という思いを込めて彼女に頷きを見せた。
すると泣きそうな顔をしながらも、確かに彼女は小さく首を縦に振る。
「……おい天満」
「分かってる。今すぐに助けたいって思ってるんだろ。でももう少しだけ我慢してくれ。暴れてしまって追い出されたらすべてが水の泡になる」
「ああ……分かってる。分かってるよ」
ギリギリと音が鳴るほどに握りしめられている拳を見て、真悟が相当の怒りを覚えていることが伝わってくる。
「まずはご説明致しましょう! 彼女の出品者は、あのカギモリ様でございます! カギモリ様は今までにも多くの異世界人と思われる者たちを出品なさってこられました!」
多くの者たちがうんうんと頷きを見せている。もしかしたらこの中に、クラスメイトを購入した者がいるのかもしれない。
「そして彼女もまた異世界人! これが証拠にございます!」
そうしてプロジェクターのようなもので舞台の壁に映し出されたのは、織奈のステータスだった。
《ステータス》
名前:オリナ・ササトキ 種族:人間
Lv:1 NEXT:8
《パラメーター》
HP :8/32 MP :2/33
STR:25 DEX:32
VIT:24 AGI:31
MND:33 LUC:11
《魔法》
風魔法(Lv1)
《特性》
異世界人補正
最初は奴隷ではなく、稀少なアイテムなどが舞台に上がり、続々と値が吊り上がっていく。
中にはモンスターの糞もあり、何が稀少なのか分からないが、コレクターたちにとっては手にしたいものなのか、信じられないくらいの値で落札された。
会場内は想像以上に盛り上がっており、熱気もあってウツワなどは当てられてあわあわとなっている。
極上の酒というのも出品されて、真悟がアレを落としたいと言ったので頭を小突いて本気で止めた。
そして熱気冷めやらぬ中、奴隷オークションの時間帯がやってくる。
リストでは笹時が出てくるのは――最後。
それまでの奴隷たちもまた絶望の表情を浮かべており、見ているだけで辛いものがあったが、さすがに彼女たちまで救える術がない。これからのことを考えても。
ウツワも悲痛な表情をしていたが、現状を理解しているようで顔を背けて耐えていた。
対照的に他の参加者たちは愉快気に笑っているが。本当に趣味の悪い連中である。
(それにしてもアイツ、凄いな)
天満の視線の先にいるのは、先程前方に座る者たちの話題にも上がっていたユーバッハ郷という人物だ。
これまで出てきた奴隷たちをすべて競り落としている。
それもどれも驚愕の値を口にして、他の追随を許さない。
(相当の資産家ってことだな)
問題はアレと対立しなければならないということ。
恐らく異世界人の奴隷ということで、是が非でも手に入れようとしてくるだろう。
織奈にどれだけの値がつくか想像もつかない。
(まあ、別にいい。どんだけの価値がついても……いや、多額になればなるほどこっちには都合が良いからな)
そして織奈の一つ前と思われる奴隷が前へ出てくる。
それまでの女性たちも美人だったが、彼女もまたレベルの高い美女だった。
「さあさあ、彼女は何と! 魔法も扱える奴隷でございます!」
舞台で進行をしている男が奴隷の説明に入る。
「しかし両親に捨てられてしまい、気づけば奴隷に……何と泣ける話でしょうか」
それも本当の話かどうかなど分かりはしまい。
「できれば優しい主に仕えたい。健気な彼女の気持ちに応えてあげてくださいませ! さあ、お値段は百万ギラから!」
一斉に手が上がり、凄まじい勢いで値が吊り上がっていく。
恰幅の良い男性が手を上げて「三億ギラ!」と高らかに宣言し、場の空気を静寂にさせる。さすがにそれ以上は出せないのか、悔しそうに歯噛みする者たちが出る。
そんな中――スッと手が上がった。ユーバッハである。
「――三億五千」
いきなり二千万も上乗せ。参加者もほとんどが観客となり歓声を上げる。
恰幅の良い男性も「うぐぐ」と呻きながらさらに「三億六千万ギラ」と口にする――が、
「――四億」
その言葉に、男性は項垂れてしまった。諦めたのだ。
「四億! 四億が出ました! さあ、他にいらっしゃいませんかぁ!」
誰も手は上げない。
「決まりました! こちらの奴隷は、番号札22番の方が落札されましたぁ!」
同時に拍手が巻き起こる。
(本当に凄まじい奴だな。計算すればアイツ、すでに十億くらい使ってるぞ)
一体どんな種類の金持ちなのか若干興味が湧いてくる。
日本にいたら「どんな石油王だよ」とツッコミを入れているところだろう。
「さあ、皆様お待たせいたしました! 次の出品が此度のオークション最後の品にございまーすっ!」
瞬時にして雰囲気が張りつめた。
先程の奴隷よりもさらに緊迫した雰囲気だ。
(やっぱりどいつもこいつも笹時を手に入れようとしてるのか)
ただの興味深さもあるだろうが、一体どんな高額落札になってしまうのか定かではない。
下手からゆっくりと、《隷属の首輪》を嵌められた一人の少女が、鎖に繋がれ舞台の中央まで連れて来られる。
(――笹時!)
それは間違いなく、自分たちと同じ同郷人――笹時織奈だった。
着用している服は、制服のままだ。その方が見栄えが良いという判断なのだろうか。
また彼女も不安気に顔を上げた時に、天満を視界に収めたようで目が合った。
何かを言いたそうに口を開けたが、すぐに閉じる。
彼女の今の外見だけで、捕まってからどれほどの辛い思いをしてきたのかが伝わってきた。
目の隈に若干頬もこけている。髪もボサボサだ。
それでも僅かな希望に縋って生きてきたのだろう。
親しくはない彼女だが、天満はそんな彼女の痛々しいまでの姿を見て助けてやりたいと強く思った。
(もうすぐだ、だからちょっとだけ辛抱してくれ)
という思いを込めて彼女に頷きを見せた。
すると泣きそうな顔をしながらも、確かに彼女は小さく首を縦に振る。
「……おい天満」
「分かってる。今すぐに助けたいって思ってるんだろ。でももう少しだけ我慢してくれ。暴れてしまって追い出されたらすべてが水の泡になる」
「ああ……分かってる。分かってるよ」
ギリギリと音が鳴るほどに握りしめられている拳を見て、真悟が相当の怒りを覚えていることが伝わってくる。
「まずはご説明致しましょう! 彼女の出品者は、あのカギモリ様でございます! カギモリ様は今までにも多くの異世界人と思われる者たちを出品なさってこられました!」
多くの者たちがうんうんと頷きを見せている。もしかしたらこの中に、クラスメイトを購入した者がいるのかもしれない。
「そして彼女もまた異世界人! これが証拠にございます!」
そうしてプロジェクターのようなもので舞台の壁に映し出されたのは、織奈のステータスだった。
《ステータス》
名前:オリナ・ササトキ 種族:人間
Lv:1 NEXT:8
《パラメーター》
HP :8/32 MP :2/33
STR:25 DEX:32
VIT:24 AGI:31
MND:33 LUC:11
《魔法》
風魔法(Lv1)
《特性》
異世界人補正
応援ありがとうございます!
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