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何故か【アビッソタウン】まで一緒についてくると言うヒノデ。その理由を尋ねてみると、やはりオレに武術指南を願いたいということ。
「あ、あのな、だからオレはさ……」
「承知しているでござる! イックウ殿が街を離れられないということは!」
「ん……だったら何で?」
「ですから拙者もその街にしばらく住むでござる!」
「え……ええっ!? す、住むって【アビッソタウン】に!?」
「はいでござる! そうすれば、ずっと傍にいられるので、指南も受けられるでござろう?」
「いや、ござろう? とか言われても……」
正直に言おう。かな~りめんどくさい。確かに強くなるためにどうすれば効率よく経験値を稼げるかとかは熟知しているが、店もあるし、ポアムと違って毎日手合せとかを望まれそうで甚だ面倒だ。
「ダ、ダメでござる……か?」
だ、だからそんな捨てられた子犬のような目で見てこないで! すっげえ良心が痛むから!
「え、えっと……ポアムゥ」
情けないが、マイエンジェルに助けを請う。
「そうですね。よいのではないでしょうか?」
「そうだよなぁ。ポアムもそう思って……ってはあ!?」
な、何を仰いやがりますか、この子は!?
「ですが、ヒノデくん。いろいろ条件がありますが、それでも構いませんか?」
「条件……でござるか?」
「はい。その条件を呑んで頂けるなら、イックウ様と修業ができます。つまり強くなれます!」
「ちょ、ちょっと待ってポアム!」
「はい、何でしょうか?」
「何でしょうか? じゃなくて! オレには店もあるし、毎日修業とか正直めんど……いや、そんな時間ないぞ!」
実際に料理の仕込とかもあったりして本当に時間が限られているのだ。
「認知です。つまりイックウ様の言い分も理解しています」
「な、ならさぁ……」
「ですからそのことも含めて条件なんです」
彼女がヒノデに突きつけた条件。
一、修業は主に定休日に行う。
二、修業に関して、イックウが許せば他の時間も行ってもらえる。
三、イックウの言うことは良く聞く。
四、離れる際は、必ず報告する。
五、店で一緒に働く。
「この条件を呑んで頂けるのなら、イックウ様も力を貸すのは吝かではないはずです」
いや~、何というか、この子は本当に十一歳なのだろうか。確かにこれなら、オレの負担は今までとは変わらないし、いや、店で働いてくれるなら楽になる。
アルバイトを募集していたこともあり、これで一気に問題解決にもなるし、良い案件だと思う。
「むむむ、そのお店とやらで働けば、一緒にいられるのでござるかな?」
「そうですよ。それに普段のイックウ様を観察していれば、その強さも自ずと掴めるかもしれません。つまりヒノデくんにとって、最良の仕事場だと思いますが」
「おお~っ!? ぜ、是非ともお願いするでござる!」
「ふふふ、賢明な判断ですね。ふふふふふ」
え、なにこの子怖い。完全に計画通りって顔してるし。三歳も上のはずの男を手玉にとる手腕……。きっとこの子は将来とんでもねー大物になるだろうなぁ。
「良かったですね、イックウ様! これでお店も大分楽になります! それにわたしも修業相手ができて嬉しいです! つまり一石二鳥ですね!」
「あ、うん……そう、だね」
オレは感じた。ポアムの底知れない可能性を――。
「あ、ですが“四”の離れる際は報告とはどういった時にでござるかな?」
「どういった時にでも、ですよ。たとえば、店から出てどこかに出掛ける時も、店を辞めて他の街へ出て行く時も、わたしたちが心配しないように、どこかに行くときは必ず報告してほしいんです」
「なるほど、了解したでござる。しからば!」
何故かまた刀を地面に置き、片膝をつくヒノデ。
「不肖このヒノデ! 今この時をもって、イックウ殿にお仕えする家臣になるでござる!」
「か、家臣!?」
「左様! 命を救われたご恩もあり、それをお返ししたく! 身命を賭してイックウ殿に従事るもののふとなるでござる!」
「い、いや、オレは友達とかでいいと思うんだけど」
「うぅ……家臣……ダメでごじゃるのか?」
うっわぁ、そんな噛みながら眼を潤ませるってチートォ……。
「う~わ、分かったよ! んじゃ、家臣兼友達ってことでな!」
「りょ、了解でござるっ! 今後ともよろしくお願いするでござるよ殿!」
「と、殿……だとっ」
笑顔はまんま女の子だ。そんな子から殿と慕われて良い気分……になっちゃダメなんだが、呼び名に関してはこれからじっくり話す必要がありそうだ。
とにもかくにも、奇妙な縁からいきなり一緒に店で過ごすことになったヒノデ。
ヒノデとなら楽しくやれるだろうと思うし、文句はないんだけど、何となくやっぱり何かに巻き込まれてる感は否めねーんだよなぁ。
そんな主人公体質は御免被るのだが、それでも何とかなるだろうと楽観的に考える。慌てても仕方ないし、なるようにしかならない。
とりあえず今は、熱い風呂に入ってのんびりしたかった。
「あ、あのな、だからオレはさ……」
「承知しているでござる! イックウ殿が街を離れられないということは!」
「ん……だったら何で?」
「ですから拙者もその街にしばらく住むでござる!」
「え……ええっ!? す、住むって【アビッソタウン】に!?」
「はいでござる! そうすれば、ずっと傍にいられるので、指南も受けられるでござろう?」
「いや、ござろう? とか言われても……」
正直に言おう。かな~りめんどくさい。確かに強くなるためにどうすれば効率よく経験値を稼げるかとかは熟知しているが、店もあるし、ポアムと違って毎日手合せとかを望まれそうで甚だ面倒だ。
「ダ、ダメでござる……か?」
だ、だからそんな捨てられた子犬のような目で見てこないで! すっげえ良心が痛むから!
「え、えっと……ポアムゥ」
情けないが、マイエンジェルに助けを請う。
「そうですね。よいのではないでしょうか?」
「そうだよなぁ。ポアムもそう思って……ってはあ!?」
な、何を仰いやがりますか、この子は!?
「ですが、ヒノデくん。いろいろ条件がありますが、それでも構いませんか?」
「条件……でござるか?」
「はい。その条件を呑んで頂けるなら、イックウ様と修業ができます。つまり強くなれます!」
「ちょ、ちょっと待ってポアム!」
「はい、何でしょうか?」
「何でしょうか? じゃなくて! オレには店もあるし、毎日修業とか正直めんど……いや、そんな時間ないぞ!」
実際に料理の仕込とかもあったりして本当に時間が限られているのだ。
「認知です。つまりイックウ様の言い分も理解しています」
「な、ならさぁ……」
「ですからそのことも含めて条件なんです」
彼女がヒノデに突きつけた条件。
一、修業は主に定休日に行う。
二、修業に関して、イックウが許せば他の時間も行ってもらえる。
三、イックウの言うことは良く聞く。
四、離れる際は、必ず報告する。
五、店で一緒に働く。
「この条件を呑んで頂けるのなら、イックウ様も力を貸すのは吝かではないはずです」
いや~、何というか、この子は本当に十一歳なのだろうか。確かにこれなら、オレの負担は今までとは変わらないし、いや、店で働いてくれるなら楽になる。
アルバイトを募集していたこともあり、これで一気に問題解決にもなるし、良い案件だと思う。
「むむむ、そのお店とやらで働けば、一緒にいられるのでござるかな?」
「そうですよ。それに普段のイックウ様を観察していれば、その強さも自ずと掴めるかもしれません。つまりヒノデくんにとって、最良の仕事場だと思いますが」
「おお~っ!? ぜ、是非ともお願いするでござる!」
「ふふふ、賢明な判断ですね。ふふふふふ」
え、なにこの子怖い。完全に計画通りって顔してるし。三歳も上のはずの男を手玉にとる手腕……。きっとこの子は将来とんでもねー大物になるだろうなぁ。
「良かったですね、イックウ様! これでお店も大分楽になります! それにわたしも修業相手ができて嬉しいです! つまり一石二鳥ですね!」
「あ、うん……そう、だね」
オレは感じた。ポアムの底知れない可能性を――。
「あ、ですが“四”の離れる際は報告とはどういった時にでござるかな?」
「どういった時にでも、ですよ。たとえば、店から出てどこかに出掛ける時も、店を辞めて他の街へ出て行く時も、わたしたちが心配しないように、どこかに行くときは必ず報告してほしいんです」
「なるほど、了解したでござる。しからば!」
何故かまた刀を地面に置き、片膝をつくヒノデ。
「不肖このヒノデ! 今この時をもって、イックウ殿にお仕えする家臣になるでござる!」
「か、家臣!?」
「左様! 命を救われたご恩もあり、それをお返ししたく! 身命を賭してイックウ殿に従事るもののふとなるでござる!」
「い、いや、オレは友達とかでいいと思うんだけど」
「うぅ……家臣……ダメでごじゃるのか?」
うっわぁ、そんな噛みながら眼を潤ませるってチートォ……。
「う~わ、分かったよ! んじゃ、家臣兼友達ってことでな!」
「りょ、了解でござるっ! 今後ともよろしくお願いするでござるよ殿!」
「と、殿……だとっ」
笑顔はまんま女の子だ。そんな子から殿と慕われて良い気分……になっちゃダメなんだが、呼び名に関してはこれからじっくり話す必要がありそうだ。
とにもかくにも、奇妙な縁からいきなり一緒に店で過ごすことになったヒノデ。
ヒノデとなら楽しくやれるだろうと思うし、文句はないんだけど、何となくやっぱり何かに巻き込まれてる感は否めねーんだよなぁ。
そんな主人公体質は御免被るのだが、それでも何とかなるだろうと楽観的に考える。慌てても仕方ないし、なるようにしかならない。
とりあえず今は、熱い風呂に入ってのんびりしたかった。
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