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「……アルト。それにライトも」
少し意気を鎮めたネネネが、彼らを見ながら名前を呼んだ。
どうやら知り合いらしいが、どこかネネネは歓迎していない様子の表情である。
「相変わらずここはボロっちいよな」
「そんなこと言わないでアルト。ここは昔、アタシたちのコミュニティが使ってた修練場だヨ」
壁の奥にあったネネネの拠点から、さらに奥にある扉の先に行けば、屋根が無く外を見渡せる広々とした空間に出る。
そこが今、ニヤたちが居る場所だ。まるで建物の屋上のような造りになっていて、ここではネネネが小さな菜園を作ったり、弓矢の修練場として使ったりしている。
「ふぅん、まあいいけどな別に。ところで例のことなんだけど」
完全にニヤたちをいないものとして扱ってくるアルトたち。子供でも縄張り争いというものがあるし、競争相手でもあるので仲間ではない者と親しくなろうとしない者たちは珍しくない。
「……ごめんネ。やっぱりアタシは今の仕事は捨てたくないヨ」
「……昔馴染みの俺の頼みでも、か?」
「……ごめん」
「はぁ……何でだ? 前にも言ったけど、俺たちはもうあの頃の俺たちじゃない。上を目指せるくらいに強くなったんだ。領域長だって目じゃない」
「アルト、野心があるのはいいことだヨ。でも、慌てる必要なんてないネ。まだアルトたちは若いんだから、下の子たちをじっくり育てて」
「大丈夫だっつってんだろ! な、ライト!」
「うん、アルト兄さん。ネネ姉さんも、チマチマ情報屋なんかやってないで、前みたいに一緒に上を目指そうよ!」
「ライト…………できないネ」
頑なに断るネネネに対し、呆れた様子のアルトたちは大きな溜め息を吐く。
「こんだけ誘っても無理か。……お前なら分かってくれると思ったんだけどな」
「アルト……」
「俺たちは明日、上のエリアへの侵入を試みる」
「! ……本気なの?」
「俺のコミュニティは全員やる気だぜ。弱腰のお前と違ってな」
そう言われて苦々しい表情を浮かべるネネネ。
「俺たちは上の連中を絶対許さない。仲間たちが殺されたんだ。そうだろ、ネネ」
何となく話の流れから、ネネネとアルトたちの関係性は見えてきた。
恐らく前にネネネから聞いた、離散した仲間なのだろう。アルトたちは。
そしてアルトは、再びネネネと一緒に上を目指したくて前から勧誘していたが、ネネネはずっと断り続けている。
「俺は絶対に最上階に辿り着いて、この塔の支配者になってやる。行くぞ、ライト」
「うん、アルト兄さん!」
「ま、待って二人とも! やっぱり考え直した方が良いネ! この塔はそんなに甘くないヨ! それは分かってるよネ?」
「うるせえ!」
怒鳴られネネネはビクッと後ずさってしまう。
「仲間にならない以上、お前はもう敵だ」
「ア、アルト……!」
きっと彼は他人を敵か味方でしか判断できないのだろう。いや、したくないのだ。
ここがどういう場所か分かっているからこそ。
「じゃあな。元仲間として、お前の無事を一応祈っておいてやる」
それだけを言うと、アルトはもう振り向くことなくライトと一緒に去って行った。
とてつもない気まずさが周囲に流れる。
ただシンカだけは別に気にしていない様子を保ち成り行きを見守っていた。
こういう時、シンカの無関心っぷりは少し羨ましい。
「あ、あはは……ごめんネ。何か変なとこ見られて」
「い、いえ。その……大丈夫なんですか?」
「アタシ? アタシはダイジョーブだヨ! こう見えても割と吹っ切ってるから」
「師匠のこともそうなんですけど、その……あの人たちのこと」
「ああ…………何度も言ったネ。上を目指すのはまだ早いって。さっきのはアルトとライトっていう名前の兄弟でね。五年ほど前、アタシも彼が作ったコミュニティに入ってたネ」
やはり、と自分の考えが的を射ていたようだ。
「でもある日、上の連中から襲撃があったネ。アタシはすぐに逃げることを提案したけど、アルトは逃げるのは恥だって戦いを望んだヨ」
それは……無茶だ。五年も前ということは、今のニヤたちのような時分である。とてもではないが賢い選択とは言えない。
「結果は火を見るよりも明らかだった。当然戦いを挑んだほとんどの子たちは死んだネ。アルトは重症だったけど何とか生き残ったのヨ」
アルトの選択についていけず逃げたネネネだったが、つい最近アルトが姿を見せたのだという。
そこでもう一度仲間になれと言ってきたらしい。
「アルトは才能はあるヨ。きっともっと強くなる。でも残念ながら上だけを見過ぎだし猪突猛進過ぎて、アタシとは合わなかったネ」
だから勧誘を断ったと彼女は言う。
「別にそれでいいんじゃない?」
そこへ今まで黙っていたシンカが口を開いた。
「シンシン?」
「どう生きようが本人の自由でしょ。あのアルトって奴にはアルトの、ネネにはネネの人生がある。アイツは戦いの道を、そしてネネは生きる道を選んだ。それだけだよ。だからネネが必要以上に気にする必要はないと思うけど」
「……もしかして慰めてくれてる?」
「思ったことを口にしただけだから」
「あぁんもう! やっぱりシンシンってばツンデレさ~んっ!」
「こ、こら! いきなり抱き着くなぁーっ!」
「はぁ、はぁ、クンクンクンクン」
「ニオイを嗅ぐな!」
「んん~ペロペロペロ」
「首筋を舐めるな変態ィィィィッ!」
本当にさっきまで落ち込んでいた人なの?
と思うほどの変わり身ぶりに、ニヤは空笑いが出る。
シンカがネネネの頭に拳骨を落とし距離を取っていた。
当のネネネは「甘露甘露~」と満足げに唇を舐めている。これがなければ人としても女性としても立派なのに……。
だが不意に寂しそうな表情をすると、ネネネは呟くように言う。
「ココを見てももう何も思わないんだネ……アルト」
やはり離散したからといっても、ネネネはアルトやライトのことを大切に思っているのだろう。だからこそ忠告もするのだ。
「全然吹っ切れてないよね。女々しいよネネ」
「ああ、そゆこと言う? いいもーん、今は可愛い可愛い愛弟子がいるから~!」
「ふぎゅ!? ちょ、師匠! 苦しいでふぅ~!」
ネネネがその豊満な胸を顔に押し付けてくるので息苦しい。
というよりこのスタイル、本当に羨ましい。あと五年で自分もこんなに成長できるだろうか。
そうして一度は変な空気になったものの、すぐに持ち前の明るさで再度練習を再開してくれたネネネだった。
少し意気を鎮めたネネネが、彼らを見ながら名前を呼んだ。
どうやら知り合いらしいが、どこかネネネは歓迎していない様子の表情である。
「相変わらずここはボロっちいよな」
「そんなこと言わないでアルト。ここは昔、アタシたちのコミュニティが使ってた修練場だヨ」
壁の奥にあったネネネの拠点から、さらに奥にある扉の先に行けば、屋根が無く外を見渡せる広々とした空間に出る。
そこが今、ニヤたちが居る場所だ。まるで建物の屋上のような造りになっていて、ここではネネネが小さな菜園を作ったり、弓矢の修練場として使ったりしている。
「ふぅん、まあいいけどな別に。ところで例のことなんだけど」
完全にニヤたちをいないものとして扱ってくるアルトたち。子供でも縄張り争いというものがあるし、競争相手でもあるので仲間ではない者と親しくなろうとしない者たちは珍しくない。
「……ごめんネ。やっぱりアタシは今の仕事は捨てたくないヨ」
「……昔馴染みの俺の頼みでも、か?」
「……ごめん」
「はぁ……何でだ? 前にも言ったけど、俺たちはもうあの頃の俺たちじゃない。上を目指せるくらいに強くなったんだ。領域長だって目じゃない」
「アルト、野心があるのはいいことだヨ。でも、慌てる必要なんてないネ。まだアルトたちは若いんだから、下の子たちをじっくり育てて」
「大丈夫だっつってんだろ! な、ライト!」
「うん、アルト兄さん。ネネ姉さんも、チマチマ情報屋なんかやってないで、前みたいに一緒に上を目指そうよ!」
「ライト…………できないネ」
頑なに断るネネネに対し、呆れた様子のアルトたちは大きな溜め息を吐く。
「こんだけ誘っても無理か。……お前なら分かってくれると思ったんだけどな」
「アルト……」
「俺たちは明日、上のエリアへの侵入を試みる」
「! ……本気なの?」
「俺のコミュニティは全員やる気だぜ。弱腰のお前と違ってな」
そう言われて苦々しい表情を浮かべるネネネ。
「俺たちは上の連中を絶対許さない。仲間たちが殺されたんだ。そうだろ、ネネ」
何となく話の流れから、ネネネとアルトたちの関係性は見えてきた。
恐らく前にネネネから聞いた、離散した仲間なのだろう。アルトたちは。
そしてアルトは、再びネネネと一緒に上を目指したくて前から勧誘していたが、ネネネはずっと断り続けている。
「俺は絶対に最上階に辿り着いて、この塔の支配者になってやる。行くぞ、ライト」
「うん、アルト兄さん!」
「ま、待って二人とも! やっぱり考え直した方が良いネ! この塔はそんなに甘くないヨ! それは分かってるよネ?」
「うるせえ!」
怒鳴られネネネはビクッと後ずさってしまう。
「仲間にならない以上、お前はもう敵だ」
「ア、アルト……!」
きっと彼は他人を敵か味方でしか判断できないのだろう。いや、したくないのだ。
ここがどういう場所か分かっているからこそ。
「じゃあな。元仲間として、お前の無事を一応祈っておいてやる」
それだけを言うと、アルトはもう振り向くことなくライトと一緒に去って行った。
とてつもない気まずさが周囲に流れる。
ただシンカだけは別に気にしていない様子を保ち成り行きを見守っていた。
こういう時、シンカの無関心っぷりは少し羨ましい。
「あ、あはは……ごめんネ。何か変なとこ見られて」
「い、いえ。その……大丈夫なんですか?」
「アタシ? アタシはダイジョーブだヨ! こう見えても割と吹っ切ってるから」
「師匠のこともそうなんですけど、その……あの人たちのこと」
「ああ…………何度も言ったネ。上を目指すのはまだ早いって。さっきのはアルトとライトっていう名前の兄弟でね。五年ほど前、アタシも彼が作ったコミュニティに入ってたネ」
やはり、と自分の考えが的を射ていたようだ。
「でもある日、上の連中から襲撃があったネ。アタシはすぐに逃げることを提案したけど、アルトは逃げるのは恥だって戦いを望んだヨ」
それは……無茶だ。五年も前ということは、今のニヤたちのような時分である。とてもではないが賢い選択とは言えない。
「結果は火を見るよりも明らかだった。当然戦いを挑んだほとんどの子たちは死んだネ。アルトは重症だったけど何とか生き残ったのヨ」
アルトの選択についていけず逃げたネネネだったが、つい最近アルトが姿を見せたのだという。
そこでもう一度仲間になれと言ってきたらしい。
「アルトは才能はあるヨ。きっともっと強くなる。でも残念ながら上だけを見過ぎだし猪突猛進過ぎて、アタシとは合わなかったネ」
だから勧誘を断ったと彼女は言う。
「別にそれでいいんじゃない?」
そこへ今まで黙っていたシンカが口を開いた。
「シンシン?」
「どう生きようが本人の自由でしょ。あのアルトって奴にはアルトの、ネネにはネネの人生がある。アイツは戦いの道を、そしてネネは生きる道を選んだ。それだけだよ。だからネネが必要以上に気にする必要はないと思うけど」
「……もしかして慰めてくれてる?」
「思ったことを口にしただけだから」
「あぁんもう! やっぱりシンシンってばツンデレさ~んっ!」
「こ、こら! いきなり抱き着くなぁーっ!」
「はぁ、はぁ、クンクンクンクン」
「ニオイを嗅ぐな!」
「んん~ペロペロペロ」
「首筋を舐めるな変態ィィィィッ!」
本当にさっきまで落ち込んでいた人なの?
と思うほどの変わり身ぶりに、ニヤは空笑いが出る。
シンカがネネネの頭に拳骨を落とし距離を取っていた。
当のネネネは「甘露甘露~」と満足げに唇を舐めている。これがなければ人としても女性としても立派なのに……。
だが不意に寂しそうな表情をすると、ネネネは呟くように言う。
「ココを見てももう何も思わないんだネ……アルト」
やはり離散したからといっても、ネネネはアルトやライトのことを大切に思っているのだろう。だからこそ忠告もするのだ。
「全然吹っ切れてないよね。女々しいよネネ」
「ああ、そゆこと言う? いいもーん、今は可愛い可愛い愛弟子がいるから~!」
「ふぎゅ!? ちょ、師匠! 苦しいでふぅ~!」
ネネネがその豊満な胸を顔に押し付けてくるので息苦しい。
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