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「はぁぁぁぁぁ~…………」
肺活量の計測をしているのではないかと思うくらいに大きく溜め息を吐くのはジュダである。
現在彼が歩いているのは六十八階層のモンスターフロアだ。今日も今日とて狩りに来ていた。ポツポツと木が生えている場所を、モンスターを探しながら歩いているのだ。
そんなジュダの背後では、彼の様子に訝しんだダンとガンの二人がこそこそと会話をしている。
「あのさ、最近ジュダってば元気ないよね?」
「だよねだよね。あれかな、恋煩いかな」
「ええ!? だったら相手は誰!?」
「……はっ!? も、もしかしたら!」
「もしかしたら?」
「妹との禁断の愛に思い悩んでいるのでは!?」
「な、何とぉっ!?」
「何とじゃねえよっ! さっきから聞こえてんだよクソ坊主どもがっ!」
「「テヘペロ~」」
「憎ったらしいだけで可愛さゼロだよチクショウ!」
確かにハゲ頭の小生意気な小坊主二人が、舌を出してウィンクしても絵にはならないだろう。
「てかだったらどうしたんさ?」
「そうそう、悩みがあるなら言ってみ。解決は……自信ないけど」
「ないのかよっ!」
ダンの言葉にキレのあるツッコミで応えるジュダ。
「はぁ……ったく。……最近よぉ、あの二人怪しくね?」
「「二人?」」
「いちいちハモらないでくれ。ニヤとシンカだよ」
「あの二人が?」
「どこが怪しいっての?」
無邪気な少年の瞳がジュダを見据える。
「いやまあ……何がどうっていうわけじゃねえんだけど。こう……ニヤがシンカに耳打ちしてるとこを見てさ」
「なるほど。それで盗み聞いたわけだ」
「うわー堂々と盗聴をしたって胸を張って言うとは、さすがはリーダー。そこに痺れないし憧れない」
「もうお前らには死んでも相談せん!」
「「ああウソウソ!」」
踵を返すジュダをニヤニヤしながらも止めようとする二人。
その顔を見れば、完全に面白がっているのは明らかである。
「ほらほら、ユー言っちゃいなよ」
「そうそう。楽になるからさ?」
あまりにも軽薄そうな物言いの彼らを疑いの目で見つめるジュダだったが、頼れるのは彼らしかいないと思ったのか、諦めて口を開き始める。
「…………ニヤがよ、シンカに『今日も……いいよね?』って言ってたんだ」
「「な、何だってぇぇぇっ!?」」
「どういう意味だと思う?」
「ど、どどどどどういう意味って奥さんそりゃ……ねえ?」
「でしょうね。きっと、多分、恐らく……二人っきりの情事じゃ」
「あ? じょうじ? 何だじょうじって? 何かの遊びか?」
「うわー、十五にもなってこの純朴さ。何だか俺たちが穢れてるみたいだよね」
「いいんだよガン。俺たちは一足先に大人になったってことさ」
「あのよ、お前らの言ってること何一つ理解できねえんだけど」
するとダンがジュダに近づいてポンとジュダの肩に手を置く。
「いいかいジュダ。ニヤもいつかは大人に……いや、もうなっちゃってるかもしれないけど」
「だからどういう意味だよ!」
「もうしょうがないなぁ。ちょっと耳を貸して」
「何だよガン、いきなり耳を引っ張んなって……あ? 何? じょうじってのは……」
「だからね……つまりは」
「ふんふん………………っっっ!?」
瞬間的に顔を真っ赤に染め上げたジュダは、ザザザッとガンから距離を取った。
「にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃにをバカなぁっ!」
情事の意味を知って、シンカとニヤがそんな男と女の深い関係になっているとは信じたくないのだろう。
しかしながらそんな反応が楽しいのか、弾丸ブラザーズたちは続ける。
「いやぁ、だってニヤなんてあからさまだしね~」
「うんうん、気づいてないのってジュダだけだと思うし~」
「ちょ、ちょっと待て! じゃあ何か! ニヤがシンカを誘ってその……あの……だから……」
「「ねえシンカ、今日も……いいよね?」」
「ぐはぁっ!?」
何故か吐血しながら四つん這いに倒れるジュダ。痛烈なダメージを心に受けたようだ。
「ゆ、許さんっ! お兄ちゃんは許さんぞっ! ニヤにそんな大人な世界なんてまだ早いんだよぉっ! しかも相手がシンカだとぉぉぉっ! おのれぇシンカ! ニヤが欲しければ俺を超えてゆけこの野郎がぁっ!」
完全に自分の世界に入り込んでしまったジュダを、ダンたちが心底楽しそうに眺めている。
「いやぁ、やっぱジュダはからかい甲斐あるよね~」
「けど正直な話、確かにあの二人って最近距離が近いわな」
ガンの言葉にダンがウンと頷く。
「だよね。多分何か二人でやってるのは確かだと思うけど」
「ま、情事なんかじゃないのは確かだよね。だって二人ともまだ子供だし。それにシンカってばニヤの気持ちに気づいてないしね~」
「そうそう、さっきはジュダだけって言ってたけど、シンカも相当にニブチンくんだよなぁ」
そう二人が好き勝手に喋っていると、ボコボコボコっと周囲の地面が浮き上がった。
同時にダンとガンは警戒態勢に入る。
「くっそぉ! ニヤは! ニヤはまだ渡さんぞぉぉぉっ!」
「ああもうこのバカリーダー! いつまでやってんの! モンスターが出たよ!」
そんなダンの忠告に「は?」と我に返るジュダ。
盛り上がった三つの場所から現れたのは、鼻がドリルのようになっている巨大なモグラだった。
肺活量の計測をしているのではないかと思うくらいに大きく溜め息を吐くのはジュダである。
現在彼が歩いているのは六十八階層のモンスターフロアだ。今日も今日とて狩りに来ていた。ポツポツと木が生えている場所を、モンスターを探しながら歩いているのだ。
そんなジュダの背後では、彼の様子に訝しんだダンとガンの二人がこそこそと会話をしている。
「あのさ、最近ジュダってば元気ないよね?」
「だよねだよね。あれかな、恋煩いかな」
「ええ!? だったら相手は誰!?」
「……はっ!? も、もしかしたら!」
「もしかしたら?」
「妹との禁断の愛に思い悩んでいるのでは!?」
「な、何とぉっ!?」
「何とじゃねえよっ! さっきから聞こえてんだよクソ坊主どもがっ!」
「「テヘペロ~」」
「憎ったらしいだけで可愛さゼロだよチクショウ!」
確かにハゲ頭の小生意気な小坊主二人が、舌を出してウィンクしても絵にはならないだろう。
「てかだったらどうしたんさ?」
「そうそう、悩みがあるなら言ってみ。解決は……自信ないけど」
「ないのかよっ!」
ダンの言葉にキレのあるツッコミで応えるジュダ。
「はぁ……ったく。……最近よぉ、あの二人怪しくね?」
「「二人?」」
「いちいちハモらないでくれ。ニヤとシンカだよ」
「あの二人が?」
「どこが怪しいっての?」
無邪気な少年の瞳がジュダを見据える。
「いやまあ……何がどうっていうわけじゃねえんだけど。こう……ニヤがシンカに耳打ちしてるとこを見てさ」
「なるほど。それで盗み聞いたわけだ」
「うわー堂々と盗聴をしたって胸を張って言うとは、さすがはリーダー。そこに痺れないし憧れない」
「もうお前らには死んでも相談せん!」
「「ああウソウソ!」」
踵を返すジュダをニヤニヤしながらも止めようとする二人。
その顔を見れば、完全に面白がっているのは明らかである。
「ほらほら、ユー言っちゃいなよ」
「そうそう。楽になるからさ?」
あまりにも軽薄そうな物言いの彼らを疑いの目で見つめるジュダだったが、頼れるのは彼らしかいないと思ったのか、諦めて口を開き始める。
「…………ニヤがよ、シンカに『今日も……いいよね?』って言ってたんだ」
「「な、何だってぇぇぇっ!?」」
「どういう意味だと思う?」
「ど、どどどどどういう意味って奥さんそりゃ……ねえ?」
「でしょうね。きっと、多分、恐らく……二人っきりの情事じゃ」
「あ? じょうじ? 何だじょうじって? 何かの遊びか?」
「うわー、十五にもなってこの純朴さ。何だか俺たちが穢れてるみたいだよね」
「いいんだよガン。俺たちは一足先に大人になったってことさ」
「あのよ、お前らの言ってること何一つ理解できねえんだけど」
するとダンがジュダに近づいてポンとジュダの肩に手を置く。
「いいかいジュダ。ニヤもいつかは大人に……いや、もうなっちゃってるかもしれないけど」
「だからどういう意味だよ!」
「もうしょうがないなぁ。ちょっと耳を貸して」
「何だよガン、いきなり耳を引っ張んなって……あ? 何? じょうじってのは……」
「だからね……つまりは」
「ふんふん………………っっっ!?」
瞬間的に顔を真っ赤に染め上げたジュダは、ザザザッとガンから距離を取った。
「にゃ、にゃにゃにゃにゃにゃにをバカなぁっ!」
情事の意味を知って、シンカとニヤがそんな男と女の深い関係になっているとは信じたくないのだろう。
しかしながらそんな反応が楽しいのか、弾丸ブラザーズたちは続ける。
「いやぁ、だってニヤなんてあからさまだしね~」
「うんうん、気づいてないのってジュダだけだと思うし~」
「ちょ、ちょっと待て! じゃあ何か! ニヤがシンカを誘ってその……あの……だから……」
「「ねえシンカ、今日も……いいよね?」」
「ぐはぁっ!?」
何故か吐血しながら四つん這いに倒れるジュダ。痛烈なダメージを心に受けたようだ。
「ゆ、許さんっ! お兄ちゃんは許さんぞっ! ニヤにそんな大人な世界なんてまだ早いんだよぉっ! しかも相手がシンカだとぉぉぉっ! おのれぇシンカ! ニヤが欲しければ俺を超えてゆけこの野郎がぁっ!」
完全に自分の世界に入り込んでしまったジュダを、ダンたちが心底楽しそうに眺めている。
「いやぁ、やっぱジュダはからかい甲斐あるよね~」
「けど正直な話、確かにあの二人って最近距離が近いわな」
ガンの言葉にダンがウンと頷く。
「だよね。多分何か二人でやってるのは確かだと思うけど」
「ま、情事なんかじゃないのは確かだよね。だって二人ともまだ子供だし。それにシンカってばニヤの気持ちに気づいてないしね~」
「そうそう、さっきはジュダだけって言ってたけど、シンカも相当にニブチンくんだよなぁ」
そう二人が好き勝手に喋っていると、ボコボコボコっと周囲の地面が浮き上がった。
同時にダンとガンは警戒態勢に入る。
「くっそぉ! ニヤは! ニヤはまだ渡さんぞぉぉぉっ!」
「ああもうこのバカリーダー! いつまでやってんの! モンスターが出たよ!」
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