どうやらオレは滅びたはずの最強種らしい ~嘘使いの世界攻略~

十本スイ

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 最近シンカの様子がおかしい。
 多分真っ先に気づいたのは自分だろうとニヤは思っていた。
 ふと考え込むような仕草をシンカはする。それはこれまで長年一緒に居続けて分かったことだが、たまに彼は物思いに耽ることがあるので、兄であるジュダたちもいつものことだろうと重要視していないのだと思う。
 しかし考え込む回数が最近増えたような気がする。しかもその時の目つきが、少し鋭いものに変わったりするので怖さが含まれていた。

 今まではあまりそんな様子を見せるシンカではなかったので、ニヤは誰よりも逸早く異変に気付いたのである。
 それは恐らく……いや、確実だがニヤがいつもシンカのことを見ていたからに他ならないだろう。

 そして自分の直感もあり、彼は何か悩み事を抱えていると判断した。
 だからある日のこと、ジュダと弾丸ブラザーズが狩りに出かけて二人きりの時に意を決して尋ねることにしたのである。

「ねえシンカ、最近変わったこととかあった?」
「変わったこと? 別にないけど」
「悩んでることあるでしょ?」
「だからそんなもんないって」
「嘘」
「は? 別に嘘なんてついてないよ」
「ついてるよ」
「いやいや、その根拠は?」
「直感」
「出たよ。その何の根拠もない自信」
「でも外れたことはないから。知ってるでしょ?」

 特にシンカのことに関しては外れたことがない。これも自分が毎日シンカのことを考えているからかもしれないが、そう思うと顔が熱くなってくる。

「別に何でもないから。たとえ何があっても大丈夫だし」
「ほらまた嘘ついた」
「いやだから……」
「だって、今シンカすっごく寂しそうな顔してるもん」
「! ……そんなことは……ない」

 とは言いつつ、シンカも自信がないのか苦々しい表情をしている。

「話せないこと?」
「……違う。話さなくていいことだ」

 彼は強い。それは肉体もそうだが、心もである。もう十五歳で、世間でいうと大人と評価されるジュダよりも、彼は精神的に成熟していると思う。
 だからこそジュダや自分たちも彼に頼っている。いや、頼り過ぎているのかもしれない。

「ごめんね……力になれなくて。わたしがまだ弱いせいで……」
「そんなことない。ニヤたちがいてくれるだけで、オレは多分道を間違えずに進める」
「そこは多分はつけないでほしかったなぁ」
「あ、ごめん」

 他の人はシンカのことを捻くれた子供だと言うけれど、自分はそうは思わない。ただ彼は素直に自分の気持ちを口にできない不器用なだけ。
 その心根はとても優しく仲間思いで、誰よりもニヤたちのことを考えてくれている柱のような存在だ。こんなことを言ったら、きっとジュダは「俺が柱だっての!」と怒ってくるだろうが、ニヤはそう思っている。

「……ニヤ」
「何?」
「ニヤは自分が弱いって言うけど、オレはニヤの強さを知ってる。まだ狩り場には出してもらえないけど、弓の腕だってメキメキ上達してるし」
「シンカ……」

 戦闘能力が低い自分は、今はまだ皆の帰りを家で待つだけの置物のような存在だと思っている。得意の掃除や料理なんて、やろうと思えば誰でもできるし……安全だ。
 それに比べてシンカたちは、それこそ命をかけて食料を確保してくれている。本当に感謝と申し訳なさしかない。
 そんな自分のどこに強さがあるかまったく分からない。

「わたしは……強くなんてないよ」
「強さもいろいろだよ。オレたちみたいに戦闘に特化した奴もいれば、ニヤみたいな強さを持つ奴だっている」
「わたしの強さ……って?」
「それは――いつも笑顔でいられる強さだ」
「ふぇ?」

 予想外の答えが飛び込んできて、思わずキョトンとしてしまった。

「こんな厳しい環境の中でずっと笑い続けていられるのは強いからだ。そしてオレたちが狩りから帰ってきて、いつもニヤが笑顔で出迎えてくれるからオレたちはまた頑張ろうって思えるんだ」
「そんな……ことで……」
「大きいことだよ。とてもとても、ね。オレはニヤが家族の柱になってくれていると思っているんだ」

 またも驚愕の言葉を胸に受け言葉を失う。
 まさか自分が柱だと言われるとは微塵も思っていなかったからだ。ついさっきも、シンカがソレだと考えていたから。

「ニヤの笑顔が、オレたちに活力を与えてくれるんだよ。これって、何よりも価値のある強さだと思う。だから……いつもありがとうな」
「っ! …………ばか」

 小声で言ったので、多分彼には聞こえなかっただろう。
 何で泣きそうなことを言ってくるのだと文句を言いたい。
 でも……でも……。

(嬉しい……!)

 シンカの言葉だから尚更心に染み渡り喜びに変わっていく。

(ああ、やっぱり私はシンカのことを……)

 自覚はずっと前からしていたが、改めて認識した感情だった。
 だからこそ、彼が悩んでいたら力になりたいし、なれない自分の無力感が歯痒い。
 もっと弓の腕が上がれば彼は頼ってくれるのだろうか……。

「ねえシンカ」

 シンカは本を読みながら「ん?」と尋ねてきた。

「わたしは幸せだよ」
「……ニヤ?」
「お世辞にも裕福な暮らしなんて言えないけど、わたしは今の生活が楽しい。わたしの一番で、ここがわたしの居場所。そしてね、そこにはシンカもいてほしい。ずっと……」
「ニヤ…………うん、そうだね。はは、何を考え込んでいたんだろう。ありがと、ニヤ。やっぱり君はとても強いや」
「えへへ、よく分からないけど、シンカが笑ってくれるだけでわたしは嬉しいよ」

 それは偽らざる本音。

「もしニヤがオレたちみたいに戦えるようになったら、名実ともにオレたちの中で最強になるかもね」

 もしそれになることで皆を守れるなら、目指してみたい。

(神様、どうかこれからも彼の傍で一緒に笑っていられますように)

 それがニヤの切なる願いだった。



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