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ザラードの勧誘を蹴ってから三日、本日はシンカとジュダの二人が狩り担当で外へ出ていた。
ジュダたちに、ザラードのことを教えようとも思ったが、すでに終わったことでもあり、結局何も言わずに過ごしてきたのである。
ただ唯一シンカの悩みに気づいていたニヤは、シンカが清々しい表情をしている事実に喜んでくれていた。
「しかし何だな、ここんとこ目立った争いとかなくて平和だよな」
ジュダの言う通り、上の連中が押し寄せてくることも、下からの下剋上の突き付けもなく文字通り平和な時間が流れていた。
ジュダはどちらかというと騒がしいのが好きだったりするので、若干物足りなさを感じているようだが、シンカはどこか違和感のようなものを覚えていたのだ。
それはまるで嵐の前の静けさのような……胸がざわざわとする予感を……。
「なあシンカ、そういえばよ。ちょいと真面目な話があんだけど」
「? 真面目な話? 嘘でしょ、本当にジュダ?」
「どういう意味だコラッ! 俺が真面目じゃねえってのかよ!」
「うん、バカだし」
「バカって言う方がバカだっつうの!」
「その返しがバカらしいって気づいてる?」
「うぐっ…………ああもう、そんなことはいいから聞け!」
シンカは「はいはい」と軽く返事をして続きを促す。
「あのな、ほれ……ニヤが何度も言ってると思うけどよ」
「何度も?」
「……外に出るってこと」
「ああ、その話か」
「そうだ。俺らも大分力をつけたし、そろそろ本格的に動いてみてもいいんじゃねえかなって」
外の世界に憧れている者たちは【終始の塔】にも存在する。ジュダたちもそうだ。
しかし外界と呼ばれる場所の情報がほとんどないため、未知に手を伸ばそうとする者たちは意外にも少ない。
昔はもっと気軽に外へ出る連中もいたが、たまに入ってくる情報で、外に出た者たちの死亡が多かったため、憧れを抱くものの脱塔への恐怖心が勝ってしまい、今ではそんな行動を起こす者はほとんどいない。
上の連中の中には、外界と塔を出入りしている者もいるらしいが。
「その……シンカもついてくる、よな?」
「何、ジュダはオレを置き去りにするつもりなの?」
「ち、ちげえよっ! ただお前ってば、あまり外界に興味なさそうだしさ!」
「そんなことないって。まだ見たことのない世界があるなら見てみたいってオレも思ってるし。それに……ジュダと弾丸ブラザーズをニヤ一人に任せるのは可哀想でしょ?」
「だからどういう意味だってのっ!」
「そういうことだから、仕方ないしついていってあげるよ。泣いて喜べ」
「おまっ……ホンットーに昔から上から目線な奴だな」
それがシンカクオリティなのである。
「はぁ……はは、でも安心した。これで気兼ねなく外へ出れる」
「でもいいの? この塔に思い入れとかは?」
「んなもんねえよ。俺はただ、ニヤと一緒で、家族全員と旅ができたらいいなって思ってるだけだ」
やはり兄妹だなと思わず笑みが零れてしまう。
「単純でいいね、ジュダは」
「おい、それ褒めてねえよな?」
「褒めてるよ。ここ数年で初めて褒めたよ」
「そんなに褒められるとこねえの俺っ!?」
本当にジュダはからかうと面白いと思いつつ、狩り場である六十八層へと足を延ばしていった。
そこで数時間ほど獲物を狩り、十分な蓄えを手に入れたあと、シンカたちは我が家へ帰宅することにしたのである。
「いやいや、今日も成果は上々だな! にしてもシンカも魔法の扱い上手くなったよな」
「そう? まあ日々鍛錬はしてるしね」
それにニホン人としてのスペックの高さもあるのか、《嘘言魔法》に頼らなくても《二次魔法》だけでも十分に狩りをこなせるようになっていた。
「んふふ~、これだけ狩ったらしばらくは骨休みができるな。ニヤたちも喜ぶぞ~」
シンカたちの両手には大袋がそれぞれ一つずつあり、全部がパンパンに膨れ上がっている。
確かに最近調子が良く、食料やモンスターの素材なども豊富にゲットできていた。ジュダが喜ぶのも無理はない。
早く獲物を見せてやりたいと思い、足早に我が家に向けて歩いていると――ドガァァァンッ!
まるで爆弾が爆発したかのような音が周囲に響いた。
「な、何だ今の音は!?」
「……近いね。ていうか今の音……ホームの方からじゃ」
「は? おいおい、そんなわけ……っ、急いで戻るぞっ!」
嫌な胸騒ぎが止まらない。それどころかどんどん強くなってくる。
(まさか……いや、そんな!)
脳裏に浮かんだ光景を頭を振って全力で振り払う。
二人がホームへ辿り着きその目で見たものは――。
「嘘……だろ?」
「…………っ」
ジュダとシンカは茫然と突っ立ってしまう。
何故なら自分たちのホームが、瓦礫に埋もれてしまっていたのだから。
ジュダたちに、ザラードのことを教えようとも思ったが、すでに終わったことでもあり、結局何も言わずに過ごしてきたのである。
ただ唯一シンカの悩みに気づいていたニヤは、シンカが清々しい表情をしている事実に喜んでくれていた。
「しかし何だな、ここんとこ目立った争いとかなくて平和だよな」
ジュダの言う通り、上の連中が押し寄せてくることも、下からの下剋上の突き付けもなく文字通り平和な時間が流れていた。
ジュダはどちらかというと騒がしいのが好きだったりするので、若干物足りなさを感じているようだが、シンカはどこか違和感のようなものを覚えていたのだ。
それはまるで嵐の前の静けさのような……胸がざわざわとする予感を……。
「なあシンカ、そういえばよ。ちょいと真面目な話があんだけど」
「? 真面目な話? 嘘でしょ、本当にジュダ?」
「どういう意味だコラッ! 俺が真面目じゃねえってのかよ!」
「うん、バカだし」
「バカって言う方がバカだっつうの!」
「その返しがバカらしいって気づいてる?」
「うぐっ…………ああもう、そんなことはいいから聞け!」
シンカは「はいはい」と軽く返事をして続きを促す。
「あのな、ほれ……ニヤが何度も言ってると思うけどよ」
「何度も?」
「……外に出るってこと」
「ああ、その話か」
「そうだ。俺らも大分力をつけたし、そろそろ本格的に動いてみてもいいんじゃねえかなって」
外の世界に憧れている者たちは【終始の塔】にも存在する。ジュダたちもそうだ。
しかし外界と呼ばれる場所の情報がほとんどないため、未知に手を伸ばそうとする者たちは意外にも少ない。
昔はもっと気軽に外へ出る連中もいたが、たまに入ってくる情報で、外に出た者たちの死亡が多かったため、憧れを抱くものの脱塔への恐怖心が勝ってしまい、今ではそんな行動を起こす者はほとんどいない。
上の連中の中には、外界と塔を出入りしている者もいるらしいが。
「その……シンカもついてくる、よな?」
「何、ジュダはオレを置き去りにするつもりなの?」
「ち、ちげえよっ! ただお前ってば、あまり外界に興味なさそうだしさ!」
「そんなことないって。まだ見たことのない世界があるなら見てみたいってオレも思ってるし。それに……ジュダと弾丸ブラザーズをニヤ一人に任せるのは可哀想でしょ?」
「だからどういう意味だってのっ!」
「そういうことだから、仕方ないしついていってあげるよ。泣いて喜べ」
「おまっ……ホンットーに昔から上から目線な奴だな」
それがシンカクオリティなのである。
「はぁ……はは、でも安心した。これで気兼ねなく外へ出れる」
「でもいいの? この塔に思い入れとかは?」
「んなもんねえよ。俺はただ、ニヤと一緒で、家族全員と旅ができたらいいなって思ってるだけだ」
やはり兄妹だなと思わず笑みが零れてしまう。
「単純でいいね、ジュダは」
「おい、それ褒めてねえよな?」
「褒めてるよ。ここ数年で初めて褒めたよ」
「そんなに褒められるとこねえの俺っ!?」
本当にジュダはからかうと面白いと思いつつ、狩り場である六十八層へと足を延ばしていった。
そこで数時間ほど獲物を狩り、十分な蓄えを手に入れたあと、シンカたちは我が家へ帰宅することにしたのである。
「いやいや、今日も成果は上々だな! にしてもシンカも魔法の扱い上手くなったよな」
「そう? まあ日々鍛錬はしてるしね」
それにニホン人としてのスペックの高さもあるのか、《嘘言魔法》に頼らなくても《二次魔法》だけでも十分に狩りをこなせるようになっていた。
「んふふ~、これだけ狩ったらしばらくは骨休みができるな。ニヤたちも喜ぶぞ~」
シンカたちの両手には大袋がそれぞれ一つずつあり、全部がパンパンに膨れ上がっている。
確かに最近調子が良く、食料やモンスターの素材なども豊富にゲットできていた。ジュダが喜ぶのも無理はない。
早く獲物を見せてやりたいと思い、足早に我が家に向けて歩いていると――ドガァァァンッ!
まるで爆弾が爆発したかのような音が周囲に響いた。
「な、何だ今の音は!?」
「……近いね。ていうか今の音……ホームの方からじゃ」
「は? おいおい、そんなわけ……っ、急いで戻るぞっ!」
嫌な胸騒ぎが止まらない。それどころかどんどん強くなってくる。
(まさか……いや、そんな!)
脳裏に浮かんだ光景を頭を振って全力で振り払う。
二人がホームへ辿り着きその目で見たものは――。
「嘘……だろ?」
「…………っ」
ジュダとシンカは茫然と突っ立ってしまう。
何故なら自分たちのホームが、瓦礫に埋もれてしまっていたのだから。
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