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シンカたちのホームに、ゆっくりと忍び寄る人影が幾つもあった。
その中にホームの外側に立ち壁を見据えるガタイの良い男がいる。その敵には大きな鉄製のハンマーを持ち、その場で何度か素振りをし始めた。
他の者たちは、男の背後に陣取り成り行きを見守っている様子だ。
ハンマーを持つ者が一人、その後ろに控えているのは四人で、合計五人である。
そんな後ろに控えている中の一人が確かめるように呟く。
「情報じゃ、例の黒髪のガキと長身の獣人は狩りに出かけてる。今、奴らのこの小汚ぇホームには残り三人のメンバーが待機しているはずだ。いいか、ガスト様の命令通り、女のガキがいるはずだから、そいつ以外は殺すぞ」
その言葉に、全員が首肯する。
ハンマーを持つ男がさらに壁へと近づく。
目一杯身体を捻り、最大限に遠心力を使った一撃を壁に向けて放った。
――ドゴォォォォッ!
痛快な衝撃音とともに壁が一瞬にして砕かれ大きな穴が開いた。
「よし、潜入!」
控えていた者の掛け声で、ハンマー男以外の全員が武器を持って動き出す。
素早く二人が穴の中へ入り、ターゲットを確認するが……。
「――っ!? い、いないだと!?」
部屋には誰一人見当たらなかった。
隠れてると思ったのか、段ボールや机などを蹴飛ばしたり武器で刺したりなどして探すがやはり見つからない。
その時、通気口から大量の液体が溢れ出てきて中にいる者も、その勢いで濡れてしまう。
そのまま液体は開けられた穴を通して外へと流れていく。
「うっぷ! 何だこれは!? ……ぺっ、ぺっ! しかもドロドロしてて……水じゃない?」
「――そうそう、水じゃあないんだなぁこれが」
その声は、ホームの外――穴から直線状に位置した場所から聞こえてきた。
「お、お前は!?」
五人の男たちの視線の先に立っていたのは、ホームにいるとされていたはずのガンだった。
「いやぁ、マジで時間通り襲撃なんてびっくらこいたけど、一言だけ言わせてもらうぜぃ」
スーッと息を吸うと、ガンはキメ顔を浮かべながら言う。
「よくも未来じゃ殺してくれたな、クソども!」
だがガンの胆力も、五人の男たちには効いていないようで、
「はっ、何をわけの分からんことを! どうせてめえは始末対象だ! のこのこ出てきたことを後悔させうわぁぁっ!?」
「お、おいどうしたぐおぉぉっ!?」
突然部屋の中にいた二人が動こうとした瞬間にツルンと滑ってしまった。
「ちっ、何をしておわあっ!?」
「す、滑るぅぅぅっ!?」
外にいる他の三人のうち、ハンマー男以外の二人が同様に転げてしまう。
「ナハハハハ! どぉぉぉだぁぁぁっ! 特性のローションだぜ! 滑るだろぉ!」
どうやら通気口から流れ出ているのは潤滑性の液体だったようだ。
見れば穴から外へ流れてしまっていることで、男たちの足元の摩擦力を極限まで低下させている。
ハンマー男も滑りそうになっているが、持ち前のハンマーを床に突き立てて踏ん張っていた。
「く、くそっ! ふざけた真似をしやがってぇっ!」
「ナーッハッハッハ! あ、そういや言い忘れてたわ」
「???」
「そのローションさ……可燃性なんだよね」
「は……は? おおおおお前、まさか!?」
ガンがニヤリと笑みを浮かべる、すぐ足元にまで広がってきたローションに向かって右手をかざした。
「――燃え散れ、ベロウバーナーッ!」
ガンの右手から放射された炎がローションに触れた瞬間、一気に燃え広がっていく。
当然ローションの中にいる男たちも例外ではない。特に転倒したことにより全身が濡れた者たちは……。
「「「「ぎゃあァァァァァァァァァッ!?」」」」
全身に火が回り、動き回ろうとするがその度に滑り脱出できず、その場でもがき苦しむことしかできない。
ガンはその光景を目を逸らさずジッと見つめている。自分の引き起こしたことから逃げないという意志を感じさせた。
次第に四人の男たちが動かなくなるが、ただ一人だけまだ倒れていない者がいる。
それはハンマー男だった。
彼が吐く黒いブーツは耐火性に優れているのか、足元が炎に包まれていても溶け出していない。
すると何を思ったのかハンマーを踏み台にして乗り上げ、そこから前方へ大きくジャンプした。……ローションが行き渡っていない床まで、だ。
「ふぅ……よくもやってくれたなガキが!」
「! ……て、てめえらだって俺たちを殺しにきたんだろうが!」
「フン! だからどうした! 上に逆らった奴は死ぬ! それがここの掟だろうが!」
「ふざけんなっ! 俺たちだって必死に生きてんだ! やりたいことだってある! それをただムカついたってだけで殺されちゃたまんねえんだよ!」
ガンも負けじと言い返すと、先程と同様の炎の塊をハンマー男に向けて放つ。
――だが。
「おらぁっ!」
あろうことかその剛腕を振るい、炎を弾き飛ばしてしまった。
「んなっ!? 何ちゅう奴だよ!」
ハンマー男の両手は重厚そうな篭手が装着されている。そのお蔭で無傷で炎を弾き飛ばせたのだ。
「さあ、他の連中の居所を言え。楽に死にたいだろ?」
「くっ…………へへへ」
「あ? 何を笑ってやがる? 死に際におかしくなったか?」
「……仲間がどこかって? なら教えてやるよ」
「……?」
「――――こっちだデカブツッ!」
そこへホームの裏手の方から駆け寄ってきたのは――ジュダだった。
その手に持った剣をハンマー男に向けて振るう。
その中にホームの外側に立ち壁を見据えるガタイの良い男がいる。その敵には大きな鉄製のハンマーを持ち、その場で何度か素振りをし始めた。
他の者たちは、男の背後に陣取り成り行きを見守っている様子だ。
ハンマーを持つ者が一人、その後ろに控えているのは四人で、合計五人である。
そんな後ろに控えている中の一人が確かめるように呟く。
「情報じゃ、例の黒髪のガキと長身の獣人は狩りに出かけてる。今、奴らのこの小汚ぇホームには残り三人のメンバーが待機しているはずだ。いいか、ガスト様の命令通り、女のガキがいるはずだから、そいつ以外は殺すぞ」
その言葉に、全員が首肯する。
ハンマーを持つ男がさらに壁へと近づく。
目一杯身体を捻り、最大限に遠心力を使った一撃を壁に向けて放った。
――ドゴォォォォッ!
痛快な衝撃音とともに壁が一瞬にして砕かれ大きな穴が開いた。
「よし、潜入!」
控えていた者の掛け声で、ハンマー男以外の全員が武器を持って動き出す。
素早く二人が穴の中へ入り、ターゲットを確認するが……。
「――っ!? い、いないだと!?」
部屋には誰一人見当たらなかった。
隠れてると思ったのか、段ボールや机などを蹴飛ばしたり武器で刺したりなどして探すがやはり見つからない。
その時、通気口から大量の液体が溢れ出てきて中にいる者も、その勢いで濡れてしまう。
そのまま液体は開けられた穴を通して外へと流れていく。
「うっぷ! 何だこれは!? ……ぺっ、ぺっ! しかもドロドロしてて……水じゃない?」
「――そうそう、水じゃあないんだなぁこれが」
その声は、ホームの外――穴から直線状に位置した場所から聞こえてきた。
「お、お前は!?」
五人の男たちの視線の先に立っていたのは、ホームにいるとされていたはずのガンだった。
「いやぁ、マジで時間通り襲撃なんてびっくらこいたけど、一言だけ言わせてもらうぜぃ」
スーッと息を吸うと、ガンはキメ顔を浮かべながら言う。
「よくも未来じゃ殺してくれたな、クソども!」
だがガンの胆力も、五人の男たちには効いていないようで、
「はっ、何をわけの分からんことを! どうせてめえは始末対象だ! のこのこ出てきたことを後悔させうわぁぁっ!?」
「お、おいどうしたぐおぉぉっ!?」
突然部屋の中にいた二人が動こうとした瞬間にツルンと滑ってしまった。
「ちっ、何をしておわあっ!?」
「す、滑るぅぅぅっ!?」
外にいる他の三人のうち、ハンマー男以外の二人が同様に転げてしまう。
「ナハハハハ! どぉぉぉだぁぁぁっ! 特性のローションだぜ! 滑るだろぉ!」
どうやら通気口から流れ出ているのは潤滑性の液体だったようだ。
見れば穴から外へ流れてしまっていることで、男たちの足元の摩擦力を極限まで低下させている。
ハンマー男も滑りそうになっているが、持ち前のハンマーを床に突き立てて踏ん張っていた。
「く、くそっ! ふざけた真似をしやがってぇっ!」
「ナーッハッハッハ! あ、そういや言い忘れてたわ」
「???」
「そのローションさ……可燃性なんだよね」
「は……は? おおおおお前、まさか!?」
ガンがニヤリと笑みを浮かべる、すぐ足元にまで広がってきたローションに向かって右手をかざした。
「――燃え散れ、ベロウバーナーッ!」
ガンの右手から放射された炎がローションに触れた瞬間、一気に燃え広がっていく。
当然ローションの中にいる男たちも例外ではない。特に転倒したことにより全身が濡れた者たちは……。
「「「「ぎゃあァァァァァァァァァッ!?」」」」
全身に火が回り、動き回ろうとするがその度に滑り脱出できず、その場でもがき苦しむことしかできない。
ガンはその光景を目を逸らさずジッと見つめている。自分の引き起こしたことから逃げないという意志を感じさせた。
次第に四人の男たちが動かなくなるが、ただ一人だけまだ倒れていない者がいる。
それはハンマー男だった。
彼が吐く黒いブーツは耐火性に優れているのか、足元が炎に包まれていても溶け出していない。
すると何を思ったのかハンマーを踏み台にして乗り上げ、そこから前方へ大きくジャンプした。……ローションが行き渡っていない床まで、だ。
「ふぅ……よくもやってくれたなガキが!」
「! ……て、てめえらだって俺たちを殺しにきたんだろうが!」
「フン! だからどうした! 上に逆らった奴は死ぬ! それがここの掟だろうが!」
「ふざけんなっ! 俺たちだって必死に生きてんだ! やりたいことだってある! それをただムカついたってだけで殺されちゃたまんねえんだよ!」
ガンも負けじと言い返すと、先程と同様の炎の塊をハンマー男に向けて放つ。
――だが。
「おらぁっ!」
あろうことかその剛腕を振るい、炎を弾き飛ばしてしまった。
「んなっ!? 何ちゅう奴だよ!」
ハンマー男の両手は重厚そうな篭手が装着されている。そのお蔭で無傷で炎を弾き飛ばせたのだ。
「さあ、他の連中の居所を言え。楽に死にたいだろ?」
「くっ…………へへへ」
「あ? 何を笑ってやがる? 死に際におかしくなったか?」
「……仲間がどこかって? なら教えてやるよ」
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そこへホームの裏手の方から駆け寄ってきたのは――ジュダだった。
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