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ホームへと帰還したシンカたちは、ニヤたちを連れてシンカが最初に寝ていたベッドがある薄暗い部屋まで向かった。
当然右目のことをニヤたちが追及してきたが、それもあとで必ず話すと言って、とにかくホームから離れることを優先したのである。
そして目的地の部屋に辿り着くと、シンカは自分が経験したことを告げた。
「――俺らが……殺されるって?」
シンカの話を聞いてまず最初に発言したのはジュダだった。
「じゃ、じゃあ何か。今から数時間後に、領域長の部下のガストって奴にホームが襲撃されて、俺らは全滅するってのか?」
「……多分生き残ったのはオレだけだよ」
ジュダの死体は見ていないけど、あの状況だ。死んでもおかしくはない。
「そ、そんな……俺たちが」
「殺される……? マジですか……」
ダンとガンも呆気にとられながらも、どこか軽々しい物言いだ。まだ完全には信じていないのだろう。無理もないことだが。
「オレの〝嘘玉〟の能力は知ってるでしょ? アレで数時間後の出来事を嘘にしたんだ。まあそのせいできっちり対価は支払うことになったけどね」
その時、右目に温かいものが触れた。
見れば悲しそうにニヤがその手で触っていたのだ。
「ごめんね……シンカ……わたしたちのために……右目が……っ」
「いや、元はといえばオレの考えが甘かったせいなんだ。領域長の誘いを蹴ってガストから恨みを買ってしまった。もっとフォローしてればあるいは避けられたかもしれないのに」
「何だよそれ! シンカは全然悪くないじゃん! だって俺たちの繋がりを絶とうとしやがったんだろ!」
憤り怒鳴ったのはガンだった。それに次いでダンも吠える。
「そうだよ! 大体断ったからって皆殺しっておかし過ぎだっての! ああもう! だから上の連中ってのは嫌いなんだ!」
「……恨んでないの、オレのこと?」
「「は? 恨む? 何で?」」
二人してハモってくる。
「オレのせいで殺されたんだよ?」
「んーでもそれってさ、未来の話だろ?」
「そうそう、大体実感とかないしね」
「「だから気にするな、マイブラザー!」」
弾丸ブラザーズが揃ってグーサインを向けニカッと笑う。
彼らの気持ちが素直に嬉しいと思えたのは、もうシンカの中でも家族としての繋がりが深くなっているからだろう。
「そうだぜシンカ。まだ半信半疑の部分はあるけど、お前がこんな意味のねえ嘘なんかつかねえし、実際に右目が見えなくなっちまったのも事実だ。だから……信じる」
「うん、わたしもだよシンカ」
「ジュダ、ニヤ……ありがと」
本当にありがたい。普通ならこんな与太話など信じてはもらえないだろう。
だからこそシンカは、自分を信じてくれるニヤたちを守りたい。
「でもシンカの話じゃ、襲撃まであんまり時間ねえんだろ? 今日はここに隠れてやり過ごすか?」
ジュダの提案も悪くはないかもしれないが……。
「いいや、どうせ今後も狙われるんだ。だったら戦力が分かってる今のうちに潰すのが一番良いと思う」
「あ、そっか。未来で経験してんだから知ってるわけだ。つまり先手を狙えるってことか」
「ジュダにしては冴えてるね」
「俺にしてはってのは余計だシンカ!」
「ただ……残念なことに懐に入れておいたはずの〝嘘玉〟が全部なくなってる。前の時はストックも十分にあって、そのお蔭でずいぶん助かったんだけどね」
これもきっと時を戻した対価なのかもしれない。
「朝に確か一個作ってたよね? それもなのシンカ?」
ニヤの質問に頷くと、彼女も残念そうに肩を落とす。
シンカの〝嘘玉〟はいってみればワイルドカードだ。ここぞという時に使えば、不利な状況でも一瞬でひっくり返すこともできる。
だからこそ特に上手の輩と対峙する時はストックしておきたいのは本音だ。
「でも魔法は使える。手札が全部なくなったわけじゃない。本当はもっと時間が欲しいけど、奴らを一網打尽にできるチャンスでもある。後顧の憂いはここで絶っておきたい」
中でもやはり注意を払わなければいけないのはガストだろう。いや、正しくはガストが呼び出した《殺戮人形》……。
(七房……)
彼女を呼び出す前に、できればガストを始末しておきたい。
だが同時に、前回で敗北を喫したことも悔やまれている。リベンジをしたいという思いもまたあった。
しかし今は、とにかく策を練ることだ。
「作戦を伝えるよ。心して聞いてね」
今度こそ皆で勝利し生き残るために――。
当然右目のことをニヤたちが追及してきたが、それもあとで必ず話すと言って、とにかくホームから離れることを優先したのである。
そして目的地の部屋に辿り着くと、シンカは自分が経験したことを告げた。
「――俺らが……殺されるって?」
シンカの話を聞いてまず最初に発言したのはジュダだった。
「じゃ、じゃあ何か。今から数時間後に、領域長の部下のガストって奴にホームが襲撃されて、俺らは全滅するってのか?」
「……多分生き残ったのはオレだけだよ」
ジュダの死体は見ていないけど、あの状況だ。死んでもおかしくはない。
「そ、そんな……俺たちが」
「殺される……? マジですか……」
ダンとガンも呆気にとられながらも、どこか軽々しい物言いだ。まだ完全には信じていないのだろう。無理もないことだが。
「オレの〝嘘玉〟の能力は知ってるでしょ? アレで数時間後の出来事を嘘にしたんだ。まあそのせいできっちり対価は支払うことになったけどね」
その時、右目に温かいものが触れた。
見れば悲しそうにニヤがその手で触っていたのだ。
「ごめんね……シンカ……わたしたちのために……右目が……っ」
「いや、元はといえばオレの考えが甘かったせいなんだ。領域長の誘いを蹴ってガストから恨みを買ってしまった。もっとフォローしてればあるいは避けられたかもしれないのに」
「何だよそれ! シンカは全然悪くないじゃん! だって俺たちの繋がりを絶とうとしやがったんだろ!」
憤り怒鳴ったのはガンだった。それに次いでダンも吠える。
「そうだよ! 大体断ったからって皆殺しっておかし過ぎだっての! ああもう! だから上の連中ってのは嫌いなんだ!」
「……恨んでないの、オレのこと?」
「「は? 恨む? 何で?」」
二人してハモってくる。
「オレのせいで殺されたんだよ?」
「んーでもそれってさ、未来の話だろ?」
「そうそう、大体実感とかないしね」
「「だから気にするな、マイブラザー!」」
弾丸ブラザーズが揃ってグーサインを向けニカッと笑う。
彼らの気持ちが素直に嬉しいと思えたのは、もうシンカの中でも家族としての繋がりが深くなっているからだろう。
「そうだぜシンカ。まだ半信半疑の部分はあるけど、お前がこんな意味のねえ嘘なんかつかねえし、実際に右目が見えなくなっちまったのも事実だ。だから……信じる」
「うん、わたしもだよシンカ」
「ジュダ、ニヤ……ありがと」
本当にありがたい。普通ならこんな与太話など信じてはもらえないだろう。
だからこそシンカは、自分を信じてくれるニヤたちを守りたい。
「でもシンカの話じゃ、襲撃まであんまり時間ねえんだろ? 今日はここに隠れてやり過ごすか?」
ジュダの提案も悪くはないかもしれないが……。
「いいや、どうせ今後も狙われるんだ。だったら戦力が分かってる今のうちに潰すのが一番良いと思う」
「あ、そっか。未来で経験してんだから知ってるわけだ。つまり先手を狙えるってことか」
「ジュダにしては冴えてるね」
「俺にしてはってのは余計だシンカ!」
「ただ……残念なことに懐に入れておいたはずの〝嘘玉〟が全部なくなってる。前の時はストックも十分にあって、そのお蔭でずいぶん助かったんだけどね」
これもきっと時を戻した対価なのかもしれない。
「朝に確か一個作ってたよね? それもなのシンカ?」
ニヤの質問に頷くと、彼女も残念そうに肩を落とす。
シンカの〝嘘玉〟はいってみればワイルドカードだ。ここぞという時に使えば、不利な状況でも一瞬でひっくり返すこともできる。
だからこそ特に上手の輩と対峙する時はストックしておきたいのは本音だ。
「でも魔法は使える。手札が全部なくなったわけじゃない。本当はもっと時間が欲しいけど、奴らを一網打尽にできるチャンスでもある。後顧の憂いはここで絶っておきたい」
中でもやはり注意を払わなければいけないのはガストだろう。いや、正しくはガストが呼び出した《殺戮人形》……。
(七房……)
彼女を呼び出す前に、できればガストを始末しておきたい。
だが同時に、前回で敗北を喫したことも悔やまれている。リベンジをしたいという思いもまたあった。
しかし今は、とにかく策を練ることだ。
「作戦を伝えるよ。心して聞いてね」
今度こそ皆で勝利し生き残るために――。
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