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「ま、まさかそんなことになってたなんて……っ!?」
シンカからガスト襲撃の話を聞いたネネネの顔色が蒼白に染まっている。
ここは彼女の仕事部屋で、ジュダたちも現在ここに来ていた。
ニヤの鍛錬もそうだが、ニヤがネネネにも今回の事件のことは伝えておきたいと言ったので、せっかくだからと皆でお邪魔しているのだ。
「でもガスト、かぁ。確かにアタシが掴んでる情報でも結構なことを裏でしてたらしいし」
ネネネが言うには、以前ザラードから聞いたような所業を幾つもしていたとのこと。
力を集めてザラード領域長からその座を奪おうとしていたのではないかというのがネネネの見解だ。
「それにしてもみんなが無事で良かったヨ~!」
そう言いながら愛弟子のニヤを抱きしめるネネネ。
(まあ本当は無事じゃなかったんだけどな)
仮に時間を戻せていなかったらと思うとゾッとする。
今頃自分がどうなっていたのか想像すらしたくない。
ニヤたちが死んで、生きる目的も失って自決を選んだかも。
そう考えると、本当に〝嘘玉〟の奇跡には感謝しかない。
(だけど今回のことでよく分からなくなったのも確かだ)
時間を巻き戻す力なんて、一個人が持っていていいものなのだろうか。
いや、持てるものではないはずだ。
それこそまさに神の御力であるべきものである。
そんな力が自分に宿っていることに、改めて疑問を浮かべた。
正直自分が何者なのか本当のところよく分かっていないのかもしれない。
『ニホン人』――。
状況からそう判断するが、そもそも何故自分だけが生き残っているのか不思議だ。
それに自我が芽生えたというか、眠りから覚めた時から五歳ほどの肉体だった。
一体自分がどのようにして生まれ、何故あの場に寝ていたのか……。
(ま、いくら考えても推測の域から出ないけどね)
ザラードが言っていた。
『ニホン人』が遺した遺産が世界中に散らばっていると。そして恐らくこの塔の中にもあるのだろう。
あれの〝喚〟と書かれた六面体があったように。
(ゼドムなら何か知ってるかもしれないけど)
ただ彼と接触するのは危険過ぎる。できればもう二度と会いたくないものだ。
「どうしたシンカ。何か考え事か?」
「ジュダ……ま、君と違ってオレは頭脳派だから」
「それはケンカ売ってんだな。そーなんだな! いいぜ買ってやるよ!」
「もうお兄ちゃん、大きな声出したらダメだよ!」
「そうそう、騒音の罪で罰金取るからネ。これもう確定ヨ」
「罰金確定なの!? マジで守銭奴だなお前はよ!」
本当にジュダにだけはネネネは冷たい。どこかあのアルトと似ているから、厳しく接してしまうのかもしれないが。
「ところでシンカ、ダンとガンは?」
「あっち」
ニヤの問いに対し、壁際を指を差して答えてやる。
そこにはシュゥゥゥ……っと、頭から煙を出してぐったりとした二人が横たわっていた。
久しぶりの弾丸ブラザーズの登場に、ネネネはすぐに彼らの頭を擦りまくった結果、ああなったというわけだ。
(赤くなってる部分、ハゲないといいな二人とも)
気絶している二人には少しだけ同情しておこう。
「ったく、そんなんだから男にモテねえんだよお前は!」
「うるさいネ! 女性経験もない童貞くんに言われたくないヨ!」
「ど、どどど童貞って! 女がそんな恥ずかしい言葉を堂々と言うんじゃねえバカ!」
「あ~ヤダヤダ。今時純朴な硬派って逸らないネ。そんなことよりバカって侮辱した罪として罰金確定だから」
「お前はどんだけ俺から搾り取ったら気が済むんだよぉぉっ!」
傍から見たら結構仲が良いように思えるが、マジでネネネはジュダから罰金を取るので良い金ズルくらいにしか思っていないかもしれない。
ジュダもまた彼女のことは心底苦手のようだし。
「……ねえシンカ」
「ん? どうしたのさニヤ」
「わたしね……やっぱりいつか外に出たい」
「…………ジュダはそろそろ本格的に動いてもいいんじゃないかなって言ってたけど?」
「うん。でもね、それはまだ先の方が良いって気がしたの。もっともっと強くなって、立派に成長してからじゃないと、何だかまた怖いことが起きそうで」
「……そっか」
「シンカはそれでもいいと思う?」
「オレは何だっていいよ。ニヤたちと一緒にいられるなら」
「シンカ……!」
「だからニヤが強くなるまで、オレは君を守る。だから強くなった時は、オレを守ってほしい」
「! うん! それまで待っててね、シンカ!」
満面の笑みを見せるニヤ。
(この笑顔をオレは守れたんだ)
そう思うだけで救われる気がした。
自分が何のために生まれたのかなんて知らない。
だがシンカはそんなことはもうどうでもいいと思うくらいの夢を見つけた。
それは――家族と生き続けること。
だからそれを邪魔する者は許さない。
たとえそれが〝野蛮な毛皮衆〟であろうと、さらにその上に住まう者たちであろうと、また塔の中にいると言われる神であろうと、だ。
(守り続けるよ、どんな相手からでも)
それがシンカの生きる目的なのだから――。
シンカからガスト襲撃の話を聞いたネネネの顔色が蒼白に染まっている。
ここは彼女の仕事部屋で、ジュダたちも現在ここに来ていた。
ニヤの鍛錬もそうだが、ニヤがネネネにも今回の事件のことは伝えておきたいと言ったので、せっかくだからと皆でお邪魔しているのだ。
「でもガスト、かぁ。確かにアタシが掴んでる情報でも結構なことを裏でしてたらしいし」
ネネネが言うには、以前ザラードから聞いたような所業を幾つもしていたとのこと。
力を集めてザラード領域長からその座を奪おうとしていたのではないかというのがネネネの見解だ。
「それにしてもみんなが無事で良かったヨ~!」
そう言いながら愛弟子のニヤを抱きしめるネネネ。
(まあ本当は無事じゃなかったんだけどな)
仮に時間を戻せていなかったらと思うとゾッとする。
今頃自分がどうなっていたのか想像すらしたくない。
ニヤたちが死んで、生きる目的も失って自決を選んだかも。
そう考えると、本当に〝嘘玉〟の奇跡には感謝しかない。
(だけど今回のことでよく分からなくなったのも確かだ)
時間を巻き戻す力なんて、一個人が持っていていいものなのだろうか。
いや、持てるものではないはずだ。
それこそまさに神の御力であるべきものである。
そんな力が自分に宿っていることに、改めて疑問を浮かべた。
正直自分が何者なのか本当のところよく分かっていないのかもしれない。
『ニホン人』――。
状況からそう判断するが、そもそも何故自分だけが生き残っているのか不思議だ。
それに自我が芽生えたというか、眠りから覚めた時から五歳ほどの肉体だった。
一体自分がどのようにして生まれ、何故あの場に寝ていたのか……。
(ま、いくら考えても推測の域から出ないけどね)
ザラードが言っていた。
『ニホン人』が遺した遺産が世界中に散らばっていると。そして恐らくこの塔の中にもあるのだろう。
あれの〝喚〟と書かれた六面体があったように。
(ゼドムなら何か知ってるかもしれないけど)
ただ彼と接触するのは危険過ぎる。できればもう二度と会いたくないものだ。
「どうしたシンカ。何か考え事か?」
「ジュダ……ま、君と違ってオレは頭脳派だから」
「それはケンカ売ってんだな。そーなんだな! いいぜ買ってやるよ!」
「もうお兄ちゃん、大きな声出したらダメだよ!」
「そうそう、騒音の罪で罰金取るからネ。これもう確定ヨ」
「罰金確定なの!? マジで守銭奴だなお前はよ!」
本当にジュダにだけはネネネは冷たい。どこかあのアルトと似ているから、厳しく接してしまうのかもしれないが。
「ところでシンカ、ダンとガンは?」
「あっち」
ニヤの問いに対し、壁際を指を差して答えてやる。
そこにはシュゥゥゥ……っと、頭から煙を出してぐったりとした二人が横たわっていた。
久しぶりの弾丸ブラザーズの登場に、ネネネはすぐに彼らの頭を擦りまくった結果、ああなったというわけだ。
(赤くなってる部分、ハゲないといいな二人とも)
気絶している二人には少しだけ同情しておこう。
「ったく、そんなんだから男にモテねえんだよお前は!」
「うるさいネ! 女性経験もない童貞くんに言われたくないヨ!」
「ど、どどど童貞って! 女がそんな恥ずかしい言葉を堂々と言うんじゃねえバカ!」
「あ~ヤダヤダ。今時純朴な硬派って逸らないネ。そんなことよりバカって侮辱した罪として罰金確定だから」
「お前はどんだけ俺から搾り取ったら気が済むんだよぉぉっ!」
傍から見たら結構仲が良いように思えるが、マジでネネネはジュダから罰金を取るので良い金ズルくらいにしか思っていないかもしれない。
ジュダもまた彼女のことは心底苦手のようだし。
「……ねえシンカ」
「ん? どうしたのさニヤ」
「わたしね……やっぱりいつか外に出たい」
「…………ジュダはそろそろ本格的に動いてもいいんじゃないかなって言ってたけど?」
「うん。でもね、それはまだ先の方が良いって気がしたの。もっともっと強くなって、立派に成長してからじゃないと、何だかまた怖いことが起きそうで」
「……そっか」
「シンカはそれでもいいと思う?」
「オレは何だっていいよ。ニヤたちと一緒にいられるなら」
「シンカ……!」
「だからニヤが強くなるまで、オレは君を守る。だから強くなった時は、オレを守ってほしい」
「! うん! それまで待っててね、シンカ!」
満面の笑みを見せるニヤ。
(この笑顔をオレは守れたんだ)
そう思うだけで救われる気がした。
自分が何のために生まれたのかなんて知らない。
だがシンカはそんなことはもうどうでもいいと思うくらいの夢を見つけた。
それは――家族と生き続けること。
だからそれを邪魔する者は許さない。
たとえそれが〝野蛮な毛皮衆〟であろうと、さらにその上に住まう者たちであろうと、また塔の中にいると言われる神であろうと、だ。
(守り続けるよ、どんな相手からでも)
それがシンカの生きる目的なのだから――。
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