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ハイライトを失った瞳をスッと空へと向ける。普段なら清々しいまでの青が広がっているはずなのに、ブラックグレーの雲が覆い尽くす不気味な空がそこにあった。
そして大地は、あちこちが極端に隆起、あるいは沈没し、道路という道路が崩壊している。建物もまともに形を成しているものは少なく、人が住めるような状況ではなくなっていた。
東京のシンボルとなっているスカイツリーも、半ばからポッキリと折れてしまっている。
まるでここで大怪獣でも暴れたのではないかと思うほどの現状。
「……夢、じゃねえよなぁ……さすがに」
一応皮膚を抓ってみたりするが、痛みは感じるし、何よりも異世界で培った鋭敏な感覚が、ここは現実だと伝えてきている。
「一体何があったんだよ……?」
日門が立っている場所は、当時召喚された場所である学校の裏山にある展望台だ。よく放課後に立ち寄って、ここでたまに出している屋台のたい焼きを買って、ベンチに腰掛けたり寝そべったりしながらまったりした時間を過ごすのが癒しの時間だった。
そこから見える景色も絶景で、特に夜にはネオン輝く街並みを一望でき最高である。カップルたちに大人気の場所なのだ。
その日は夏休みだったが、ちょうど登校日であり、学校の日程が終わった後に展望台へとやってきていた。そしてたい焼きを買ってのんびりしていると、突然時間が止まったように、周りにいた人たちが停止し、自分だけが動いているという不可思議な体験をした。
そこへ神と名乗る存在が現れて、異世界へ行ってほしいと頼まれたのだ。正直アニメのような展開にワクワクもしたし、異世界ファンタジーに憧れていたこともあって、神の望みを叶えた後は、必ず地球に戻って来られることを確約させて異世界へ飛んだ。
そして、こうして普段と変わりない展望台へ戻って来られたかと思ったのだが、あまりも変わり果てた周囲の状況に困惑中というわけである。
「学校……そうだ、学校はどうなってんだ?」
ふと我に返るように思い出し、すぐ近くにある学校へと向かおうとしたその時だ。
不意に背後から近づいてくる何者かの気配に気づいて振り向いてギョッとする。
そこにいたのは、まるで大事故にでも遭ったかのようなボロボロの身形をした人間。いや、人間と言っていいのか。
右腕が肘から先が千切れていて、そこから得体の知れない黒々とした液体が流れており、顔も手も足も、全身が腐ったように腐食している。それでも日門に向かって少しずつ歩を進めてくる。
その風貌に動き。それはまさに――。
「え…………ゾ、ゾンビ……?」
アニメや漫画も好きだが、日門はゾンビものの海外ドラマや映画も好んで視聴していた。その中で出てくるゾンビに似通った存在が、今まさに目の前にいるのだ。
「さ、撮影……じゃねえよな?」
ここにカメラマンや照明などのスタッフがいればいいが、そんなものはいないし。先ほど見ていた街並から推察するに、この街がゾンビ映画のような終末世界になっているのはすぐに理解できた。
「ァ……ァァアア……」
呻き声のような不愉快な音を口から発しながらゾンビが確実に近づいてくる。しかも一体だけでなく、奥の方からゾロゾロと現れる。
「おいおい、マジかよ……」
しかし慌てふためいたり腰を抜かすようなことはしない。
幸か不幸か、日門にとって驚きはあるものの恐怖を呼び起こすような相手ではない。
何せ今までコイツらよりも恐ろしい連中が闊歩する世界にいたのだから。
向こうでもアンデッド系のモンスターはいたし、気持ち悪くはあるが怖いとはもう思わない。
それにドラゴン系や悪魔系などと比べると、ただのゾンビなんて実に可愛いものだった。
「けどまあ……学校に行くにはコイツらを何とかしないとな」
日門は大口を開けて飛びついてきた一体のゾンビの攻撃を回避すると同時に腹部に蹴りを放つ。
するとゾンビの身体が真っ二つに砕けてしまう。
「ありゃりゃ、威力があり過ぎたか?」
これでも全力とは程遠い威力で蹴ったにもかかわらずこの結果。それを見て、この世界のゾンビが向こうのアンデッドと比べても遥かに劣ることを察した。
この世界に戻ってくる際に、神からは鍛え上げた身体能力を維持したまま帰還することを褒美の一つとして授与された。それもあるからゾンビ程度に恐怖は覚えなかったのだ。
(これだと警戒する必要ねえかもな)
もう少し厄介な身体能力や特殊能力を持っているかもしれないと考えたがそれもなさそうだ。実際に砕けたゾンビはまだ動いてはいるものの脅威を感じない。
向こうでは毒を放ったり再生したりと面倒な能力持ちが多かったため拍子抜けした。
「なら、これでも十分だよな」
足元に落ちている石を拾い集め、右手に複数個持って同時にゾンビに向かって投擲した。
それらはものの見事にゾンビの頭や身体に命中すると、その部分を弾けさける。
(やっぱ脆いな。まあこっちとしてはその方が助かるけど)
そうして麓に降りる階段まで石を投げながら近づいていくと……。
「うへぇ、ここにも滅茶苦茶いるなぁ」
階段にも多種多様なゾンビの群れ。観光スポットだっただけにゾンビ化した人が多かったのだろう。
さすがに降りながら全員を討伐するのは面倒だと思い、日門はその場で若干屈むと一気に跳躍した。その距離は凡そ人間が跳べるものとは違い、そのまま放物線を描きながら、麓まで一気に跳び下りることができたのである。
だがさらにテンションが下がる光景を目にしてしまう。
そこから伸びている道路上には、当然とばかりにゾンビがウヨウヨいるし、無傷の建物は見当たらないし、車なども廃車のようになっているものばかり。
(マジで終末だなこりゃ……。てかちょっと待てよ。俺が異世界に行ってたのは三年だぞ。たった三年でここまで酷くなるか?)
仮に三年前にゾンビが出現したとて、街全体が見るも無残にぶっ壊れるだろうか。戦争でも起きたなら別かもしれないが。
(今戦って分かったけど、ゾンビ自体にそんな破壊力はないだろうしな)
地面や建物を崩壊させるなんて尋常ではない力が必要だ。それこそ天災クラスの。
ゾンビの力でそれを成せたとは思えない。もちろんゾンビに意思があり、連携したり道具を相応の道具を使う知恵があるなら話は別だが、どうもゾンビは単独で動いているみたいだし、そんな大それたことができそうもない。
「それにスカイツリーが真っ二つって……あんなことミサイルでもぶっ放さねえと無理だろうしよ」
伊達に東京のシンボルではないのだ。災害が起こっても耐えられる強度で造られているはずだ。生半可なことではビクともしないだろう。
(となるとやっぱり戦争か何かが起こったってか?)
考えられるのは、どこかの国がウィルス兵器を開発して、この東京にばら撒いた。それと同時に戦争で都市を完全に崩壊させた。恐ろしい考えだが、それだと一応納得はできる。
しかしこの三年間で、こうも変わり果てるとはまだ信じられない。
そして大地は、あちこちが極端に隆起、あるいは沈没し、道路という道路が崩壊している。建物もまともに形を成しているものは少なく、人が住めるような状況ではなくなっていた。
東京のシンボルとなっているスカイツリーも、半ばからポッキリと折れてしまっている。
まるでここで大怪獣でも暴れたのではないかと思うほどの現状。
「……夢、じゃねえよなぁ……さすがに」
一応皮膚を抓ってみたりするが、痛みは感じるし、何よりも異世界で培った鋭敏な感覚が、ここは現実だと伝えてきている。
「一体何があったんだよ……?」
日門が立っている場所は、当時召喚された場所である学校の裏山にある展望台だ。よく放課後に立ち寄って、ここでたまに出している屋台のたい焼きを買って、ベンチに腰掛けたり寝そべったりしながらまったりした時間を過ごすのが癒しの時間だった。
そこから見える景色も絶景で、特に夜にはネオン輝く街並みを一望でき最高である。カップルたちに大人気の場所なのだ。
その日は夏休みだったが、ちょうど登校日であり、学校の日程が終わった後に展望台へとやってきていた。そしてたい焼きを買ってのんびりしていると、突然時間が止まったように、周りにいた人たちが停止し、自分だけが動いているという不可思議な体験をした。
そこへ神と名乗る存在が現れて、異世界へ行ってほしいと頼まれたのだ。正直アニメのような展開にワクワクもしたし、異世界ファンタジーに憧れていたこともあって、神の望みを叶えた後は、必ず地球に戻って来られることを確約させて異世界へ飛んだ。
そして、こうして普段と変わりない展望台へ戻って来られたかと思ったのだが、あまりも変わり果てた周囲の状況に困惑中というわけである。
「学校……そうだ、学校はどうなってんだ?」
ふと我に返るように思い出し、すぐ近くにある学校へと向かおうとしたその時だ。
不意に背後から近づいてくる何者かの気配に気づいて振り向いてギョッとする。
そこにいたのは、まるで大事故にでも遭ったかのようなボロボロの身形をした人間。いや、人間と言っていいのか。
右腕が肘から先が千切れていて、そこから得体の知れない黒々とした液体が流れており、顔も手も足も、全身が腐ったように腐食している。それでも日門に向かって少しずつ歩を進めてくる。
その風貌に動き。それはまさに――。
「え…………ゾ、ゾンビ……?」
アニメや漫画も好きだが、日門はゾンビものの海外ドラマや映画も好んで視聴していた。その中で出てくるゾンビに似通った存在が、今まさに目の前にいるのだ。
「さ、撮影……じゃねえよな?」
ここにカメラマンや照明などのスタッフがいればいいが、そんなものはいないし。先ほど見ていた街並から推察するに、この街がゾンビ映画のような終末世界になっているのはすぐに理解できた。
「ァ……ァァアア……」
呻き声のような不愉快な音を口から発しながらゾンビが確実に近づいてくる。しかも一体だけでなく、奥の方からゾロゾロと現れる。
「おいおい、マジかよ……」
しかし慌てふためいたり腰を抜かすようなことはしない。
幸か不幸か、日門にとって驚きはあるものの恐怖を呼び起こすような相手ではない。
何せ今までコイツらよりも恐ろしい連中が闊歩する世界にいたのだから。
向こうでもアンデッド系のモンスターはいたし、気持ち悪くはあるが怖いとはもう思わない。
それにドラゴン系や悪魔系などと比べると、ただのゾンビなんて実に可愛いものだった。
「けどまあ……学校に行くにはコイツらを何とかしないとな」
日門は大口を開けて飛びついてきた一体のゾンビの攻撃を回避すると同時に腹部に蹴りを放つ。
するとゾンビの身体が真っ二つに砕けてしまう。
「ありゃりゃ、威力があり過ぎたか?」
これでも全力とは程遠い威力で蹴ったにもかかわらずこの結果。それを見て、この世界のゾンビが向こうのアンデッドと比べても遥かに劣ることを察した。
この世界に戻ってくる際に、神からは鍛え上げた身体能力を維持したまま帰還することを褒美の一つとして授与された。それもあるからゾンビ程度に恐怖は覚えなかったのだ。
(これだと警戒する必要ねえかもな)
もう少し厄介な身体能力や特殊能力を持っているかもしれないと考えたがそれもなさそうだ。実際に砕けたゾンビはまだ動いてはいるものの脅威を感じない。
向こうでは毒を放ったり再生したりと面倒な能力持ちが多かったため拍子抜けした。
「なら、これでも十分だよな」
足元に落ちている石を拾い集め、右手に複数個持って同時にゾンビに向かって投擲した。
それらはものの見事にゾンビの頭や身体に命中すると、その部分を弾けさける。
(やっぱ脆いな。まあこっちとしてはその方が助かるけど)
そうして麓に降りる階段まで石を投げながら近づいていくと……。
「うへぇ、ここにも滅茶苦茶いるなぁ」
階段にも多種多様なゾンビの群れ。観光スポットだっただけにゾンビ化した人が多かったのだろう。
さすがに降りながら全員を討伐するのは面倒だと思い、日門はその場で若干屈むと一気に跳躍した。その距離は凡そ人間が跳べるものとは違い、そのまま放物線を描きながら、麓まで一気に跳び下りることができたのである。
だがさらにテンションが下がる光景を目にしてしまう。
そこから伸びている道路上には、当然とばかりにゾンビがウヨウヨいるし、無傷の建物は見当たらないし、車なども廃車のようになっているものばかり。
(マジで終末だなこりゃ……。てかちょっと待てよ。俺が異世界に行ってたのは三年だぞ。たった三年でここまで酷くなるか?)
仮に三年前にゾンビが出現したとて、街全体が見るも無残にぶっ壊れるだろうか。戦争でも起きたなら別かもしれないが。
(今戦って分かったけど、ゾンビ自体にそんな破壊力はないだろうしな)
地面や建物を崩壊させるなんて尋常ではない力が必要だ。それこそ天災クラスの。
ゾンビの力でそれを成せたとは思えない。もちろんゾンビに意思があり、連携したり道具を相応の道具を使う知恵があるなら話は別だが、どうもゾンビは単独で動いているみたいだし、そんな大それたことができそうもない。
「それにスカイツリーが真っ二つって……あんなことミサイルでもぶっ放さねえと無理だろうしよ」
伊達に東京のシンボルではないのだ。災害が起こっても耐えられる強度で造られているはずだ。生半可なことではビクともしないだろう。
(となるとやっぱり戦争か何かが起こったってか?)
考えられるのは、どこかの国がウィルス兵器を開発して、この東京にばら撒いた。それと同時に戦争で都市を完全に崩壊させた。恐ろしい考えだが、それだと一応納得はできる。
しかしこの三年間で、こうも変わり果てるとはまだ信じられない。
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