12 / 69
11
「そんで、一カ月間の冬眠を経て、俺は晴れて魔法を扱える身体になったってわけだ」
「…………はぁ。よくもまあそこまでしようと思ったね。僕だったら怖くてできないや」
「わ、わたしも魔法には興味あるけど……やっぱりちょっと怖いです」
二人の反応は普通だろう。実際にこの話を聞いた時は日門だって躊躇はした。しかし神の望みを叶えると異世界に行くと言った手前、何もせずに異世界に骨を埋めることはできなかった。
一応約束した以上は、それを裏切ってしまうのは己の信念に反することだったからだ。だからどうしても魔法を扱うための手段を得る必要があったわけだ。
「ただそれでもまともに魔法は扱えなかったんだけどな」
「「……へ?」」
「ははは、いやぁ、俺ってば《魔核》から魔力を引き出す才能はあったみてえだけど、そのコントロールが下手でよぉ」
「ど、どういうことなんだ? コントロールが下手って、下手だとどうなるのさ?」
「簡単にいうとだ、魔法が発動しなかったり、暴走したり、つまり思った通りの魔法が扱えないってことだな」
魔力コントロールが苦手なタイプも異世界には普通に存在する。だから修練して鍛えるのが通例なのだが、どうも日門はその普通の修練でさえも困難だった。
「おいおい、じゃあどうやって魔法を身に着けたっていうのさ?」
「わ、わたしも気になります!」
日門は二人に見つめながら肩を竦めると、まずは魔法の発動について説明し始める。
「魔法を発動するには、幾つか流れが存在する。小色、分かるか?」
「え、わたしですか! えとえっと…………詠唱とか、ですか?」
「おお、さすがはオタク美少女、正解だ」
「びしょっ……えうぅ」
褒められて気恥ずかしそうにする。そんな彼女をよそに日門は続ける。
「小色の言ったように、基本は呪文などを詠唱して発動する。他は分かるか? 理九は?」
「む…………詠唱があるなら無詠唱もあるんじゃないかな?」
「そうだな、それもある……が、無詠唱は極めて珍しい手段で、できる奴はかなり限られるな」
魔法の達人にしか到達できない熟練者の証である。
他にないか尋ねると、理九は分からないようで首を左右に振っているが、小色は「はい!」と勢いよく手を挙げた。
「よし、じゃあ小色くん、どうぞ」
「はい! 多分ですけど、魔法具というか、魔法の力を宿したアイテムとかを使うのではないでしょうか!」
「大正解だ! そんな君にはこの異世界で拾ったクリスタルをやろう」
そう言ってポケットから取り出した薄紫色に彩られた小さな鉱石を渡した。
「い、異世界の!? ほ、本当にもらってもいいんですかぁ!?」
「はは、いいのいいの。他にもまだあるしな」
「はわわわわぁ……!?」
クリスタルを両手で大事そうに抱え、それを興奮した様子で見入っている小色。
「今、小色が言ったようにアイテム――《魔道具》を利用して魔法を発動することもできる。そんで、この《魔道具》の仕様こそが、俺が魔法を扱えている根幹になってんだよ」
「? じゃあ君は《魔道具》を使って魔法を発動させてるってわけかい?」
理九の問いに対し、日門は微笑しながら答える。
「そうとも言えるし、違うとも言えるな」
「また分かりにくいことを……どういうことなのさ?」
「俺は《魔道具》を利用しているって言えるが、そうじゃないとも言えるってこと」
「いや、それ全然分かりやすくなってないから」
自分ではヒントを与えたつもりだが、さすがにこれでは分からない様子。
「そうだなぁ、もっと詳しく説明するとだ、《魔道具》は何故魔法が発動できるか。それは《魔道具》には呪文が刻み込まれているからだな」
「呪文……? ゲームとかで言うファイアボールとか、テレポートとか、そういう魔法名のこと?」
「お、それくらいは知ってんだな」
「俺だって小色には及ばないけど、それなりにゲームや漫画は好きだしね」
見縊るな的な感じで口を尖らせる理九に、男ならそれもそうかと納得する。
「理九の言ったように、呪文は発動する魔法名だな。向こうでは文字には力が宿るとされていて、そこに魔力を付与してアイテムに刻み込む。そうすることで、刻まれた呪文を魔力を媒介にして発動することができるんだよ」
魔力を付与した文字のことを《魔文字》といい、《魔道具》を作る人物のことを『魔道具技師』といった。彼らの持つ技術は遥か昔から伝わってきた古の技術とされ、扱うことができる者も少ない。さらに優秀な《魔道具》を作るには、それこそ勇者や聖女のような優秀な血統が必要とされた。
「だから優秀な『魔道具技師』を有してる国は強いぜ。各国がその血を求めて戦を起こすほどにな」
それもそのはずだ。優秀な《魔道具》は大きな戦力にも繋がる。またそれらを他国へ多額で売りつけることもできる。だからこそ製作できる者を懐に入れれば、自ずと自国の利益になるというわけだ。
「だから俺も自分で魔法を発動できなくても、《魔道具》を使うことでまともに魔法を使うことが可能になるわけだ」
「……ちょっと待ってくれ。今の言い方だと、やはり君は《魔道具》を使って魔法を発動してるってことにならないかい? けど……違うん……だよね?」
「確かに分かりやすい杖とか本とか、そういった魔法使いにありがちな装備品を身に着けているようには見えないよな、俺ってば」
二人がコクンと頷く。だがそこへ目ざとく小色が声を上げる。
「あ、日門さんの右手の人差し指にハマってる指輪……もしかしてそれが?」
彼女の言う通り、間違いなく日門の指には指輪が装備されている。とはいっても、細いものではなく一センチメートルほどの幅があり、奇妙な幾何学文様が白で描かれている全体的に黒いリングだ。
「…………はぁ。よくもまあそこまでしようと思ったね。僕だったら怖くてできないや」
「わ、わたしも魔法には興味あるけど……やっぱりちょっと怖いです」
二人の反応は普通だろう。実際にこの話を聞いた時は日門だって躊躇はした。しかし神の望みを叶えると異世界に行くと言った手前、何もせずに異世界に骨を埋めることはできなかった。
一応約束した以上は、それを裏切ってしまうのは己の信念に反することだったからだ。だからどうしても魔法を扱うための手段を得る必要があったわけだ。
「ただそれでもまともに魔法は扱えなかったんだけどな」
「「……へ?」」
「ははは、いやぁ、俺ってば《魔核》から魔力を引き出す才能はあったみてえだけど、そのコントロールが下手でよぉ」
「ど、どういうことなんだ? コントロールが下手って、下手だとどうなるのさ?」
「簡単にいうとだ、魔法が発動しなかったり、暴走したり、つまり思った通りの魔法が扱えないってことだな」
魔力コントロールが苦手なタイプも異世界には普通に存在する。だから修練して鍛えるのが通例なのだが、どうも日門はその普通の修練でさえも困難だった。
「おいおい、じゃあどうやって魔法を身に着けたっていうのさ?」
「わ、わたしも気になります!」
日門は二人に見つめながら肩を竦めると、まずは魔法の発動について説明し始める。
「魔法を発動するには、幾つか流れが存在する。小色、分かるか?」
「え、わたしですか! えとえっと…………詠唱とか、ですか?」
「おお、さすがはオタク美少女、正解だ」
「びしょっ……えうぅ」
褒められて気恥ずかしそうにする。そんな彼女をよそに日門は続ける。
「小色の言ったように、基本は呪文などを詠唱して発動する。他は分かるか? 理九は?」
「む…………詠唱があるなら無詠唱もあるんじゃないかな?」
「そうだな、それもある……が、無詠唱は極めて珍しい手段で、できる奴はかなり限られるな」
魔法の達人にしか到達できない熟練者の証である。
他にないか尋ねると、理九は分からないようで首を左右に振っているが、小色は「はい!」と勢いよく手を挙げた。
「よし、じゃあ小色くん、どうぞ」
「はい! 多分ですけど、魔法具というか、魔法の力を宿したアイテムとかを使うのではないでしょうか!」
「大正解だ! そんな君にはこの異世界で拾ったクリスタルをやろう」
そう言ってポケットから取り出した薄紫色に彩られた小さな鉱石を渡した。
「い、異世界の!? ほ、本当にもらってもいいんですかぁ!?」
「はは、いいのいいの。他にもまだあるしな」
「はわわわわぁ……!?」
クリスタルを両手で大事そうに抱え、それを興奮した様子で見入っている小色。
「今、小色が言ったようにアイテム――《魔道具》を利用して魔法を発動することもできる。そんで、この《魔道具》の仕様こそが、俺が魔法を扱えている根幹になってんだよ」
「? じゃあ君は《魔道具》を使って魔法を発動させてるってわけかい?」
理九の問いに対し、日門は微笑しながら答える。
「そうとも言えるし、違うとも言えるな」
「また分かりにくいことを……どういうことなのさ?」
「俺は《魔道具》を利用しているって言えるが、そうじゃないとも言えるってこと」
「いや、それ全然分かりやすくなってないから」
自分ではヒントを与えたつもりだが、さすがにこれでは分からない様子。
「そうだなぁ、もっと詳しく説明するとだ、《魔道具》は何故魔法が発動できるか。それは《魔道具》には呪文が刻み込まれているからだな」
「呪文……? ゲームとかで言うファイアボールとか、テレポートとか、そういう魔法名のこと?」
「お、それくらいは知ってんだな」
「俺だって小色には及ばないけど、それなりにゲームや漫画は好きだしね」
見縊るな的な感じで口を尖らせる理九に、男ならそれもそうかと納得する。
「理九の言ったように、呪文は発動する魔法名だな。向こうでは文字には力が宿るとされていて、そこに魔力を付与してアイテムに刻み込む。そうすることで、刻まれた呪文を魔力を媒介にして発動することができるんだよ」
魔力を付与した文字のことを《魔文字》といい、《魔道具》を作る人物のことを『魔道具技師』といった。彼らの持つ技術は遥か昔から伝わってきた古の技術とされ、扱うことができる者も少ない。さらに優秀な《魔道具》を作るには、それこそ勇者や聖女のような優秀な血統が必要とされた。
「だから優秀な『魔道具技師』を有してる国は強いぜ。各国がその血を求めて戦を起こすほどにな」
それもそのはずだ。優秀な《魔道具》は大きな戦力にも繋がる。またそれらを他国へ多額で売りつけることもできる。だからこそ製作できる者を懐に入れれば、自ずと自国の利益になるというわけだ。
「だから俺も自分で魔法を発動できなくても、《魔道具》を使うことでまともに魔法を使うことが可能になるわけだ」
「……ちょっと待ってくれ。今の言い方だと、やはり君は《魔道具》を使って魔法を発動してるってことにならないかい? けど……違うん……だよね?」
「確かに分かりやすい杖とか本とか、そういった魔法使いにありがちな装備品を身に着けているようには見えないよな、俺ってば」
二人がコクンと頷く。だがそこへ目ざとく小色が声を上げる。
「あ、日門さんの右手の人差し指にハマってる指輪……もしかしてそれが?」
彼女の言う通り、間違いなく日門の指には指輪が装備されている。とはいっても、細いものではなく一センチメートルほどの幅があり、奇妙な幾何学文様が白で描かれている全体的に黒いリングだ。
あなたにおすすめの小説
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!
TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。
その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。
競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。
俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。
その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。
意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。
相変わらずの豪華客船の中だった。
しかし、そこは地球では無かった。
魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。
船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。
ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ……
果たして、地球と東の運命はどうなるの?
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。