異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

文字の大きさ
14 / 69

13

 日門が自身の魔法について話したあとは、また目的地であるイケメンと美女好きの主がいる屋敷へと向かって歩き出した。その都度、ゾンビに遭遇する度に日門が軽く処理しながら。

「あ、そういやバイクは良かったのか、理九?」

 ふと理九が乗っていたバイクのことを思い出し尋ねてみたが、理九は軽く肩を竦めると「別にいいさ」と告げた。

 どうやら元々捨てられていたもので、たまたまキーとメットが傍に落ちていたから拝借したのだそうだ。
 普通なら窃盗に当たるが、こんな世の中だ。誰に咎められることもないだろう。持ち主だってゾンビになってしまった可能性の方が大きいし。

「けれど本当に魔法って凄いんですね。さっきからゾンビたちを一撃ですし」
「ん? おいおい、魔法なんて使ってねえぞ?」
「ふぇ? じゃ、じゃあさっきからどうやって倒してるんですか?」
「んなもんただ殴って蹴ったりしてるだけだぜ」
「そ、そうだったんですか!?」
「……魔法じゃなくてただの物理攻撃で、ゾンビを一撃で粉砕してるのかい? それはどういう原理なのさ?」

 理九も気になったようで質問をしてきた。

「向こうの世界はいわゆるRPGみたいにレベルってのがあってな。それを上げれば自ずと身体能力とかも上がる。そんで、俺もレベルを上げまくって強くなったわけ。こっちに帰ってくる時、俺を召喚した神が褒美として鍛えたレベルそのままに帰還させてくれたんだよ」
「か、神様!? ほ、本当にいるんですね……!?」
「し、信じられないけど……今までの話から事実なんだろうなぁ」

 小色は素直に驚き、理九はお腹がいっぱいとでも言いたいほどに遠い目をしている。

「まあ、あんだけ頑張ったんだし、これくらいの特典はなぁ。それにそのお蔭で、こうして身を守れるし。まあこんな世界になっちまってるなんて一ミリも思ってなかったけど」

 向こうの世界でも高位レベル者は、肉体的・精神的にも強化される。それこそ今の日門なら、地球の武道の達人でさえ片手で軽く圧倒することができるはずだ。

「それに俺は武器を扱うのは苦手でな。向こうでも徒手空拳で戦ってたし」
「なるほど。どこか武術っぽい動きだったけど、それも経験からだったんだね。昔から何か空手とか習ってたり?」
「身体を動かすのは好きだったけど、別に武道をやってたわけでもスポーツをやってたわけでもねえな。ただ、実家が田舎の山奥でな。ガキの頃から山を駆けずり回って遊んでた」

 その蔭もあってか、異世界でも身体の動かし方については褒められた。何でも基礎的な土台は形作られていたから、あとは戦闘用に動きを変えていくだけだったのだ。

「その、日門さんは勇者として召喚されたというわけではないんですよね?」
「おう、さっきも言ったな。勇者ってのは元々向こうにいたんだよ。俺はあくまでも勇者のサポート役として召喚されただけ」

 異世界において勇者と聖女は特別な存在だ。その時代にそれぞれ一人しか存在せず、その身には絶大な力を有しており、世界を救う使命を帯びて誕生するという。
 そして勇者が誕生したということは、それに対する悪災もまた生まれるということ。平和な時代に勇者や聖女は生まれないからだ。

 また歴代の勇者のパーティには、強力な力を有する仲間もいた。その仲間の一人は、決まって異世界人だったとのこと。異世界人は神の加護を持ち、特別な力を所持し、勇者を導く存在として語り継がれていた。
 故に神は日門を召喚し、勇者を導いてもらいたいと願ったのである。

「導くって、つまり何をするんだい?」
「勇者ってのは世界を脅かす害悪……悪災と表裏一体なんだ」
「は? それはどういうことさ?」
「勇者が光なら、悪災は闇。コインの裏と表だ。勇者がもし力に溺れ、その心を悪に傾けちまうと、そのまま悪災になっちまう」
「え……ちょっと待ってくれ。つまり何だ……悪災っていうのは……元々勇者だったのかい?」

 理九の言葉に対し、小色もギョッとした様子で日門を見つめてくる。

「……ああそうだ。古代の勇者だった……成れの果て。それが悪災の正体だった」

 正直それが分かったのは、勇者たちとともに異世界で過ごしてずいぶん経った後だった。
 世界の平和を望み、人々の希望の象徴。そんな存在が、いわゆるラスボスだったのである。当然その真実を知った時は驚いた。勇者も聖女も、他の仲間も絶句したものだ。

 その古代の勇者は、世界を脅かしていた存在を命からがら封印することができたらしい。これで平和をもたらせたと勇者は喜んだのも束の間、時の聖女だった者が何者かに暗殺された。
 時を同じくして、勇者もまた何者かに暗殺されかける。その正体を調べてみれば、勇者が信を置いていた国の王だったことが判明した。

「え、ど、どうして王様が勇者や聖女にそんな酷いことを……?」

 小色は分からないようだったが……。

「……! 平和な時代に、勇者と聖女が邪魔になったんじゃないかな?」
「お兄ちゃん? それ、どういうこと?」
「強過ぎる力は、また別の争いを生んでしまうってことさ」

 その言葉に、小色も思い至ったように目を見開く。
 そうだ。結構ありふれた話である。

 混沌の時代において、人類は救いを求める。自分たちでは解決できない問題が発生した時、その超常的な力を持つ存在に、味方として期待を託す。
 しかしいざ平和になった時、超人は普通の人類にとっては恐怖の対象でしかない。もしその存在が悪に傾けば? 欲に溺れれば? 敵に回ったら人類最後の日を迎えることになるかもしれない。

 そんな不安が彼らを凶行へと誘う。味方として油断している間に処理してしまおうと。
 そうすれば自分たちの求める平和な世界を脅かす存在は消える。真の安寧が手に入るのだと。

「でも……そんな酷いです。勇者や聖女たちは世界のために、みんなのために戦ったのに……」

 その通りだ。だからこそ勇者も許せなかった。いや、あるいは自分だけが裏切られただけなら、まだ耐えられたかもしれない。

「…………聖女は、勇者の恋人だった」


あなたにおすすめの小説

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。