異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

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 東京港から十数キロほど進んだ太平洋の上。
 そこにポツンと浮かぶ島が存在する。何でも祖父が四十代の頃に購入した島らしく、値段を聞いて絶句した記憶も懐かしい。

 島の周囲は岸壁に覆われ、上陸するには一つしかない小さな砂浜に船を寄せるしかないだろう。しかし日門は、ここへは手ぶらでやってきていた。無論船なども漕いできていない。 

 先に小色たちに見せた《風の飛翔》という呪文で、空を飛んできただけのことだ。本来ならここに車で数時間かかる道のりではあるが、祖父の家からここまでたった数分で辿り着いた。

「こういうところは魔法って便利だよなぁ」

 上空から島に上陸し、同時に懐かしさが込み上げてきた。
 島の中央には開けた場所があり、そこには祖父が立てたログハウスが存在感を示している。少し離れた場所には畑もあるが、手入れが行き届いていなかったせいで雑草が生い茂っていた。

 ただ大地震が起きた割には、ここはそう被害はないように思える。確かに地面に亀裂が入ったりしているが、ログハウスも倒壊していないし、無事聳え立っている木々や草花も多い。これは嬉しい誤算である。

 こうして数年ぶりに来てみて、祖父との楽しい思い出が次々と溢れてくる。
 本当に祖父といると退屈はしなかった。童心を忘れないような人だったためか、育ての親でもあったが、友人や兄のような立場でもあったと思う。

「と、その前にまずは墓参りだな」

 実は祖父の墓はこの島の中にある。とはいっても立派なものではなく、生前祖父が死んだらここに墓を建てて欲しいと言っていたので、簡易的ではあるが日門が拵えたものだ。 

 壊れてなければいいと思いつつ墓がある場所へ向かう。そこはこの島で最も高い山の頂上。そこなら祖父が好きだった広大な海をいつでも眺められるだろうと思った。

「……良かった。無事みてえだな」

 崖に近い場所に一本の大樹が生えていて、そこに添えるような感じで墓石が置かれている。

「じっちゃん、ただいま」

 墓石の前で屈み込み手を合わせる。

「話したいことが山ほどあるんだ。けど多分信じられねえぜ。だって、つい最近まで異世界にいたからな」

 当然返事などはないが、この時間が日門は穏やかで好きだった。

「おっとそうだ。お供え物を忘れてたわ。ちょっち待っててくれよ」

 日門はスッと立ち上がると、右手を軽く前に出し、

「――〝開け〟」

 そう短く答えると、右手の人差し指に嵌めている指輪が淡く輝き、その光が上へと伸びて広がり、一瞬にしてゲーム画面のような映像を映し出す。
 そこには《アイテムリスト》と刻まれ、様々なアイテム名が記載されている。

 日門は画面をスクロールしていき、お目当てのものを見つけると、その名前を指で軽く押す。すると何もなかった地面の上に、酒瓶や果物などが出現した。
 この指輪こそ、少し前に小色たちに説明していた《魔道具》の一つ。そしてこの世界に戻ってくる時に、一番欲したものでもあった。

 その理由は簡単だ。この指輪は《ボックスリング》といい、収納の魔法が込められていて、その容量までなら何でも収納することができる代物だ。
 またこれはレア中のレアで、異世界でもたった一つしか存在しない。何せ、神様直々に授かったものでもあるからだ。

 収納容量は無制限で、収納している間は時が停止しているので、食べ物も腐ったり、道具が劣化したりしない。そしていつでも取り出せる。

 《ボックスリング》自体は珍しくなく異世界にも存在したが、容量もせいぜいがキャリーバッグ三つほどであり、時間停止といったチートもないので、《魔道具》というよりは《神道具》とも呼べるだろう。

 ただし魔力を持つ者にしか使えないということもあり、収納の呪文が刻み込まれていることからも《魔道具》であることは間違いないのだ。
 日門は取り出した果物を墓石の前に置く。そして酒瓶を開けて、墓石に酒をかけていく。

「どうだ? 一応異世界の酒だぜ。のんべえのあんたなら喜んでくれんだろ?」

 機嫌が良い時は、今日は酒祭りだとはしゃいで、家中の酒を文字通り浴びるほどに飲んでいた。ビール、焼酎、日本酒、洋酒など、見ているだけでこっちが酔うほどに舞い上がっていたものだ。
 日門はかけていた酒を、自分の口元へ持って一口飲む。

「……っぷはぁ。はは、俺ももうすぐ二十歳だからよ。……じっちゃんと一緒に飲んでみたかったなぁ」

 できれば二人で居酒屋にでも行ってバカ騒ぎしてみたかった。そんな大人な遊びも楽しみたかったが、それが叶わないのが唯一の心残りかもしれない。

「けどこれからはまたこうして一緒だな」

 ここを拠点にすると決めた。もう異世界に行くこともないし、この無人島で悠々自適な暮らしを満喫しようと思っている。

「んじゃ、さっそく拠点の手入れでもしてくるわ」

 墓石に向かって軽く手を挙げてから踵を返す。
 ログハウスに戻ってくると、まず寝所にもなるログハウスの中をチェックする。大分揺れたせいか、棚が倒れたりして面倒なことになっているが、片づければまだまだ現役で使える。

「うし、とりあえずやりますか!」

 気合を入れると、掃除をし始めた。



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