異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

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 青年の姿へと戻った日門は、再び仮面で顔を隠したあと、小色たちと一緒に穴から地上へと戻った。

「――――小色ちゃん!」

 小色へと勢いよく駆け寄ったのは、小色のことを教えてくれた折川すずねだった。小色も涙目ですずねを抱きしめ互いの無事を喜んでいる様子。

 そして理九も、何故か屈強な男たちに絡まれている。こちらも理九の無事を喜んでいるところを見るに、ここでも問題なく過ごせていたことが理解できた。
 そんな中、やはりというか注目を浴びているのは日門だ。同時に警戒もされている。

 しかしそこへ屋敷の主である国滝時乃が静かに日門の目前に立つと、ざわついていた周りが水を打ったかのように静まり返った。

「あ、あの、時乃さん! 日か……その人はその……怪しい人じゃなくてですね! それどころか助けて頂いた人なんです! だから――」

 仮面をかぶっている日門が、その怪しさから咎められるのではと思ったのか、小色がフォローするように間に入るが、時乃はクスッと笑みを浮かべて「ええ、分かっているわよ」と言い、スッと丁寧に頭を下げた。

「まずは感謝を。私の頼みを聞き入れてくれて本当にありがとう」

 自分たちの主の行為を見て、周りの者も慌てたように同じ仕草を行う。ただし警戒している男たちは別だ。何かあってもすぐに対応できるように身構えたまま。

「できれば話を聞きたいのだけれど、いいかしら?」
「んー……それは悪ぃけど勘弁してもらいてえな」

 あっさりと断ると、男たちの怒気が膨らみ武器を持つ手に力を込め始めた。しかし時乃がサッと手を挙げて、男たちへ手を出すなという所作をすると……。

「どうしてか聞いてもいいかしら?」

 と、当然の質問を投げかけてきた。

「いやまあ、この仮面で分かるように、あんまり素顔を晒したくねえし、何よりも……もうここにいる理由はねえしな」

 その言葉に、一番ショックを受けたのは小色だったようで、「そんな……」と意気消沈して顔を俯かせている。そんな妹の姿を見た理九は、黙っていられずに噛みついてきた。

「おいっ! そんな言い方ないだろう! それにあとでちゃんと僕たちに説明するって言ったのは君じゃないか!」

 確かにそのようなことを言った。そして日門も覚えているし、破るつもりもない。

「おう、言ったぜ」
「だったら用がないとか、すぐにここから出て行くようなことを……」
「いや、ここに用はないのは事実だろ? 俺はあくまでお前たちに会いにきたんだしな」
「え?」
「お前らがここで平和に過ごしているかどうか確かめに来たんだよ。だからまあ、こんな状況に陥っていたなんて正直肝が冷えたわ」

 もう少し遅かったらと考えるとゾッとする。我ながらギリギリのタイミングだったが、良い仕事ができたと自負している。

「それは……でもすぐに立ち去るなら話なんてできないじゃないか」
「はあ? 何言ってんだよ。お前らも俺と一緒に来るんだぜ」
「「…………え?」」

 俯いていた小色も、バッと顔を上げて理九とハモった。

「どういうことかしら? 彼女たちがあなたと一緒に行くなんて、ここから出て行くかのような言い方なのだけれど」

 真っ先に疑問をぶつけてきたのは、黙していた時乃だった。その語気にはどこか冷たいものを感じる。

「その通りだぜ。これ以上、小色たちをここに置いておくのは心配だからな」
「!? それは……」
「アンタがここにいる連中に慕われてるのは分かってる。今まで、平和的に過ごせていたのもな。きっと上に立つ者としちゃ、アンタはなかなかの人格者なんだろう」

 いろいろ不安になるような話は理九から聞いたが、実際に会って話してみて悪い人物ではないことくらいは理解できた。

「けどな、もう少しで小色たちは死んでた」
「っ…………」
「アンタなら救えたか?」

 その質問に悔し気に目を伏せ「……いいえ」と誤魔化すことなく答えた。ここでしっかりと認めることができるというのも評価できるところだ。
 悪徳領主だったら、保身のために言い訳をするか、誰かに責任転嫁するか、とにかく主として不適格な発言をしていただろう。

「別に救えなかったこと自体悪いなんて言わねえよ。あんなバケモノ相手に戦える戦力がこんなとこにあるわけがねえだろうし、アンタも少数よりも多数を優先する必要もあったろうしな」

 小色たちが攫われた後、救助のために人員を割くことは可能ではあったろう。しかしそんなことをすれば、ここに残っている者たちの生存率が著しく低下する。
 まだ生き残っているのかも分からない。救助隊すら殺される危険性も高い。だから彼女は救助よりも防護に力を入れた。それは下の者を守る存在としては見事な選択だと思う。

 一般人がやれることには限界がある。いくら手を伸ばしたところで、助けられる数は決まっているのだ。あんなファンタジーな存在相手なら猶更だ。
 それこそ勇者や聖女などといった超常的な力を持っているなら話は別だが。

 しかし彼女が悔しくも、小色たちを見捨てるしかなかったのもまた事実。たまたま超常的な力を持った日門がいたから救助を願っただけ。

「なら、あなたがここに住むというのはどうかしら? その力で私たちを――」
「お断りだね」
「なっ!? ……それは何故かしら?」

 そこで初めて敵意のようなものを時乃から感じる。

「俺は、勇者でも聖女でもない。ただ、普通じゃない力を持った普通の人間だ」

 日門の言っている言葉の意味が分からないのか、眉間にしわを寄せてジッとこちらを見つめてくる目が多い。

「俺にとって大事なのは身内だけ。それ以外は割とどうでもいい」
「っ……それだけの力を有していて、困っている者を救わないと?」
「ウハハ、言うねぇ。アンタだって、見た目で救う者を判断してるって聞いたぜ?」
「!? …………」

 日門と時乃の睨み合いに、周りにいる者たちは、その気迫に飲まれているのか身動きすらせずにジッと立ち尽くしたままだ。
 すると沈黙を破るように口火を切ったのは――理九だった。


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