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――翌日。
屋敷から次々と出てきた者たちが集まってきた。
その中には当然ながら小色や理九、そして時乃やそのボディーガードもいる。
(あのすずねって子は……いねえか)
恐らくは屋敷の中で状況を見守ることにしたのだろう。
日門は外壁の上から飛び降り、彼女たちの目前に立つ。
「――さて、答えを聞かせてもらおうか」
ハッキリ言って小色たちがどちらの選択をするか定かではなかった。ここが彼女たちが以前いたような劣悪な環境ならば簡単な選択だっただろうが、どうやらここは彼女たちにとっては優しい場所だったようだから。
もし危険度合いが低ければ、日門もまた選択肢など与えずに、顔を見るだけで無人島へと戻ったことだろう。
できるだけ人との繋がりを断った生活をしている日門よりも、こうして人と人が手を取り合い生活している場の方が、小色たちには合っていると思うから。
それに小色のことをちゃんと思いやってくれている友人もできたらしいので、小色が差し伸べた手を払うことだって十分に有り得た。
ただ、そうなるならそれでもいいと思う。たとえ危険でも、自ら選んだ道を日門は尊重する。その先で死んでしまっても、それもまたそいつ自身の人生だと。
悲しくても辛くても、心が痛くても、日門は誰かに無理を強いたりするのは好きではないのだ。
自由に生きる――それが日門の信念だから。
「わたしは……いいえ、わたしたちは――――あなたについていきます!」
小色が代表してそう答えた。その返答に対し、軽く目を見開いた日門。
「……理九もそれでいいのか?」
「もちろん。小色とともに生きるってのが兄である僕の答えなんでね」
というよりも、理九の本音は恐らく安堵していることだろう。彼の優先事項は小色の命だ。ならどちらを選ぶ方が彼にとって良いのかは明白。
しかし恐らく彼は、日門と同じように小色の選択に黙って従うつもりだったろう。たとえ危険が身近にあったとしても、妹の想いを無下にしたくないはずだから。
「……んで、小色。改めて聞くけどよ、マジで良いのか? もしかしたら二度とそいつらとは会えねえかもしんねえぞ?」
ここから離れてすぐに、時乃たちに災難がふりかかり絶滅する可能性だって無きにしも非ずだ。何せあの巨大ナメクジ襲来だって誰に予想できただろう。
つまりこの世界では、何が起こってもおかしくはない。明日にはまた大地震が起こるかもしれないし、突然隕石がここに直撃するかもしれない。
そうでなくても周りはゾンビの群れだ。壁を乗り越えて入ってくるなどといったことも考えられる。
「それは…………もしそうなったらとても悲しいですけど……それでもわたしは、あなたと一緒にいたいって思いました!」
「! ……何でそこまで?」
長生きするためだと言うなら理解できる。ここよりも確実に日門の傍の方が生存率が高いから。しかし彼女は一緒にいたいと言う。そこまで彼女の意志を強めた理由が不明だった。
「だって……ひか……あなたは一人だと思うから」
「それは……まあ、そうだな」
最近ハチミツを拾ったので厳密にいうと一人……いや、孤独ではないが。
「一人は寂しい……です。それに……わたしはあなたに命を救われました。それに二度も。だから、恩返しがしたいんです!」
「それは気にしなくてもいいって。俺が好きでやったことだしな」
「わたしがしたいんですっ!」
ついつい彼女の気迫に「お、おう」と気圧されてしまった。
「それに何より、わたしがあなたの傍にいたいんです! これからも……ずっと!」
「小色…………ふぅ。思った以上にお前は頑固だな」
「ふふ、そうなんです! 思った以上に頑固ですから!」
満面の笑みを見せる小色。そこには躊躇の気持ちなどまるで感じない。それは心の底から選んだ道を突き進むといった覚悟もまた感じられた。
「……わ―った。これ以上は何も言わねえよ。理九も、文句ねえか?」
「さっきも言ったけど反論はないよ」
「ん……。つーことで、コイツらもらってくぜ」
最後に時乃に言うと、彼女は目を閉じて黙していたが、ゆっくりと瞼を上げる。
「了解よ。ただし、一つだけ誓いなさい」
「あんだよ?」
「必ず、彼女たちを守り抜きなさい。もし死なせてしまったら、その時は……」
「ああ、その時はこの首でもやるよ」
「!? …………そう。それならいいわ」
それは日門の覚悟を示したつもりだった。それが真の言葉だと察したのか、時乃も納得したように首肯した。
「よし、じゃあ帰るからこっちに来い二人とも」
「ま、まさかまた抱えたまま飛ぶつもりか?」
「それ以外にどうしろってんだよ?」
理九はトラウマがあるようで、明らかに意気消沈している。
二人してこちらに来ると、最後に日門は時乃に伝えることがあったのを思い出す。
「ああ、それと小色たちが世話になったな。これはその礼ってことで――」
日門は《土の城壁》を使用し、屋敷を囲う外壁を、さらに新たに作った外壁で覆い尽くしていく。
それは先ほどよりも倍ほどに大きく、かつ先端は外側に向けてネズミ返しのようになっている。
「耐久性も以前のよりも強化しといたし、これならゾンビも登ってこれないだろ」
「っ…………本当にあなたは何者なの?」
「なぁに、ただの普通じゃない普通の人間だ」
そして小色たちを両脇に抱える。すると屋敷から声が響いてきた。それは小色の名を呼ぶすずねだった。
「すずねちゃん……っ、またねー! 絶対絶対、また会いにくるからーっ!」
「うんっ、待ってる! 待ってるからねっ、小色ちゃぁぁんっ!」
二人はそうして最後の挨拶を交わす。理九もまた世話になった者たちに、感謝の言葉を叫んでいる。
そのまま日門が浮き上がると、理九はすぐに青ざめて沈黙するが、小色は見えなくなるまでジッと屋敷を見つめている。その目尻から流れた雫に日門は気づいたが、何も言わずにそのまま移動を開始した。
屋敷から次々と出てきた者たちが集まってきた。
その中には当然ながら小色や理九、そして時乃やそのボディーガードもいる。
(あのすずねって子は……いねえか)
恐らくは屋敷の中で状況を見守ることにしたのだろう。
日門は外壁の上から飛び降り、彼女たちの目前に立つ。
「――さて、答えを聞かせてもらおうか」
ハッキリ言って小色たちがどちらの選択をするか定かではなかった。ここが彼女たちが以前いたような劣悪な環境ならば簡単な選択だっただろうが、どうやらここは彼女たちにとっては優しい場所だったようだから。
もし危険度合いが低ければ、日門もまた選択肢など与えずに、顔を見るだけで無人島へと戻ったことだろう。
できるだけ人との繋がりを断った生活をしている日門よりも、こうして人と人が手を取り合い生活している場の方が、小色たちには合っていると思うから。
それに小色のことをちゃんと思いやってくれている友人もできたらしいので、小色が差し伸べた手を払うことだって十分に有り得た。
ただ、そうなるならそれでもいいと思う。たとえ危険でも、自ら選んだ道を日門は尊重する。その先で死んでしまっても、それもまたそいつ自身の人生だと。
悲しくても辛くても、心が痛くても、日門は誰かに無理を強いたりするのは好きではないのだ。
自由に生きる――それが日門の信念だから。
「わたしは……いいえ、わたしたちは――――あなたについていきます!」
小色が代表してそう答えた。その返答に対し、軽く目を見開いた日門。
「……理九もそれでいいのか?」
「もちろん。小色とともに生きるってのが兄である僕の答えなんでね」
というよりも、理九の本音は恐らく安堵していることだろう。彼の優先事項は小色の命だ。ならどちらを選ぶ方が彼にとって良いのかは明白。
しかし恐らく彼は、日門と同じように小色の選択に黙って従うつもりだったろう。たとえ危険が身近にあったとしても、妹の想いを無下にしたくないはずだから。
「……んで、小色。改めて聞くけどよ、マジで良いのか? もしかしたら二度とそいつらとは会えねえかもしんねえぞ?」
ここから離れてすぐに、時乃たちに災難がふりかかり絶滅する可能性だって無きにしも非ずだ。何せあの巨大ナメクジ襲来だって誰に予想できただろう。
つまりこの世界では、何が起こってもおかしくはない。明日にはまた大地震が起こるかもしれないし、突然隕石がここに直撃するかもしれない。
そうでなくても周りはゾンビの群れだ。壁を乗り越えて入ってくるなどといったことも考えられる。
「それは…………もしそうなったらとても悲しいですけど……それでもわたしは、あなたと一緒にいたいって思いました!」
「! ……何でそこまで?」
長生きするためだと言うなら理解できる。ここよりも確実に日門の傍の方が生存率が高いから。しかし彼女は一緒にいたいと言う。そこまで彼女の意志を強めた理由が不明だった。
「だって……ひか……あなたは一人だと思うから」
「それは……まあ、そうだな」
最近ハチミツを拾ったので厳密にいうと一人……いや、孤独ではないが。
「一人は寂しい……です。それに……わたしはあなたに命を救われました。それに二度も。だから、恩返しがしたいんです!」
「それは気にしなくてもいいって。俺が好きでやったことだしな」
「わたしがしたいんですっ!」
ついつい彼女の気迫に「お、おう」と気圧されてしまった。
「それに何より、わたしがあなたの傍にいたいんです! これからも……ずっと!」
「小色…………ふぅ。思った以上にお前は頑固だな」
「ふふ、そうなんです! 思った以上に頑固ですから!」
満面の笑みを見せる小色。そこには躊躇の気持ちなどまるで感じない。それは心の底から選んだ道を突き進むといった覚悟もまた感じられた。
「……わ―った。これ以上は何も言わねえよ。理九も、文句ねえか?」
「さっきも言ったけど反論はないよ」
「ん……。つーことで、コイツらもらってくぜ」
最後に時乃に言うと、彼女は目を閉じて黙していたが、ゆっくりと瞼を上げる。
「了解よ。ただし、一つだけ誓いなさい」
「あんだよ?」
「必ず、彼女たちを守り抜きなさい。もし死なせてしまったら、その時は……」
「ああ、その時はこの首でもやるよ」
「!? …………そう。それならいいわ」
それは日門の覚悟を示したつもりだった。それが真の言葉だと察したのか、時乃も納得したように首肯した。
「よし、じゃあ帰るからこっちに来い二人とも」
「ま、まさかまた抱えたまま飛ぶつもりか?」
「それ以外にどうしろってんだよ?」
理九はトラウマがあるようで、明らかに意気消沈している。
二人してこちらに来ると、最後に日門は時乃に伝えることがあったのを思い出す。
「ああ、それと小色たちが世話になったな。これはその礼ってことで――」
日門は《土の城壁》を使用し、屋敷を囲う外壁を、さらに新たに作った外壁で覆い尽くしていく。
それは先ほどよりも倍ほどに大きく、かつ先端は外側に向けてネズミ返しのようになっている。
「耐久性も以前のよりも強化しといたし、これならゾンビも登ってこれないだろ」
「っ…………本当にあなたは何者なの?」
「なぁに、ただの普通じゃない普通の人間だ」
そして小色たちを両脇に抱える。すると屋敷から声が響いてきた。それは小色の名を呼ぶすずねだった。
「すずねちゃん……っ、またねー! 絶対絶対、また会いにくるからーっ!」
「うんっ、待ってる! 待ってるからねっ、小色ちゃぁぁんっ!」
二人はそうして最後の挨拶を交わす。理九もまた世話になった者たちに、感謝の言葉を叫んでいる。
そのまま日門が浮き上がると、理九はすぐに青ざめて沈黙するが、小色は見えなくなるまでジッと屋敷を見つめている。その目尻から流れた雫に日門は気づいたが、何も言わずにそのまま移動を開始した。
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