異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

文字の大きさ
46 / 69

45

 ――そこは世界の果てと呼ばれ、凶悪で凶暴なモンスターが生息し、かつ目まぐるしく変化する厳しい環境のせいで常識ある者たちは一歩も足を踏み入れない大地。

 その名を――【非命《ひめい》の大地】。

 そこに侵入した多くの者たちのほとんどが命を散らしたことからその名がつけられた。
 そんな誰もが怖れ慄く地の北端に位置する丘の上に、ひっそりと佇む巨大な立方体が存在する。

 全体が黒々とした色彩で染められており、装飾など一切見当たらない無骨さ。一見するだけでは建物なのか、遺跡なのか、何を目的としているのかまったく判断がつかない。
 しかし自然溢れるその中で、そこにある明らかな人工物はただただ異質だった。

 そんな異質な物体の正体。それは――とある研究施設だ。
 そこに住まう人間はたった一人。
 世間ではその存在をこう評価している。

『狂人』『異端者』『似非賢者』『孤高の変質者』『マッドサイエンティスト』『天災』『災害の権化』『究極の探求者』

 これらはそれまで彼につけられた肩書である。彼を理解できる者は存在せず、彼の行為を許容できる者もまた存在しなかった。
 だがそれでも彼が人並外れた才能と技術を持ち合わせていることは確かで、その手から生み出されるものは、正しく理解できる者が使用すれば莫大な利益を生む。

 ただし利だけを求める連中は、その人物にとって煩わしいだけだった。また利すら許容できない者たちによる排除な非難もまた鬱陶しいものであり、故に彼は誰にも邪魔されないこの大地に移り住むことを決めたのである。

 そうして彼は、最果ての地にて思うがまま寝る間すら惜しみ日々研究に没頭していた。そんなある日のこと、突然訪ねてきた人物がいたのである。

 それが――四河日門。異世界から召喚された、いずれ英雄と呼ばれし少年だった。

 しかしその頃の日門は、まだ何も持たない弱者。異世界人のために魔法を扱えず、身体能力だって人並程度。たとえ目一杯鍛えたとしても、勇者や聖女の隣に立つほどの存在にはなり得ない。
 そこであらゆる伝手を頼りに、魔法を扱える術を得る方法を探した結果、辿り着いたのがこの場所だった。

 ここに住まう人物ならば、日門に新たなる光を与えてくれるはずだと。それがたとえ非人道的な手法だとしても、だ。
 日門には神から与えられたミッションをこなし、すぐにでも元の世界に戻りたいという欲求があった。だからどんな苦行でも乗り越える覚悟があったのである。 

 周りの皆が否定する中、それでも最果てに住まう人物に師事することを選択したのだ。
 すべてはできるだけ早く力を手に入れて、元の世界に戻るために。

 そうして訪ねてきたわけだが、この『非命の大地』はそれまで持っていた日門の常識は一切通じなかった。
 まるで地球でいう古代――恐竜が生息している時代に乗り込んだかのような場所であり、自然は都会と比べて段違いに豊かではあるが、それ以上にあらゆる生物が巨大であり凶悪。

 植物すら縄張りに入ってきた人間を食う始末。そんな中で生き残るためには、常に気を張り続ける必要がある。全身の感覚を研ぎ澄ませて、何らかの気配がしたらすぐに身を隠す。そして少しずつ前へと進む。

 さらにここの環境はもっと非常識であり、先ほどまで晴れていたと思ったら、数分後には大豪雨となり雷も同時にあちらこちらに振ってくる。それなのにまた一時間も経たずに、今度は氷点下まで気温が下がって豪雪地帯が出来上がり、次の瞬間にはそこら中でトルネードが発生し、その後には砂漠のような強烈な日照りが続く。

 まさに息もつかせぬ環境の変化で、日門の体力と精神力を容赦なく奪っていく。ここに来る前にいろいろ準備をしてきたアイテムなどを使って何とか切り抜けつつも、今度はモンスターに襲われたり、大地震に見舞われたりと、何度死にかけたか分からない。
 それでも長い時間をかけてようやく目的地に辿り着いた。

 そして日門は出会うことになる。
 後に師匠とも呼ぶ人物――――マクス・オルム・ウェルロイドに。

 彼は一言で言うなら〝変態〟。これに尽きるだろう。
 何せ初対面の時の彼の姿は、全裸に白衣といった頭がおかしいとしか思えない恰好をしていたのだから。

 それならいっそのこと白衣を脱いだらいいのではと言ったが、研究者として白衣は欠かせないだろと真顔で言われたことは懐かしい。
 さすがにいちいち彼の一物が目に入るのは鬱陶しいので、自分がいる間はパンツを履いてもらうようにした。

 そして日門は自分が異世界からやってきた存在で、魔法を扱う方法を学ぶために来たことを伝えた。
 こんなところに住んでいる理由は、人嫌いだという話も聞いていたので断られるかとも思ったが、マクスは「いいよー」と呆気なく了承したのである。

 身構えてただけに拍子抜けだった。しかしこちらにとっては都合が良い展開であり、さっそくその方法について問い質した。
 ただ、その方法を聞く前に彼は一つだけ条件を提示したのである。
 やはりそう上手く事は運ばないことを知り、覚悟をしながら条件を聞いた。

『君が僕の弟子になることー』

 それが彼の提示した条件。もっとえげつない条件を突き付けてくると思っていた日門からしたら、これまた肩透かしでもくらったかのようだった。
 当然そんなことで強くなれるならと受け入れた…………のが失敗だったかもしれない。 

 そこからは彼の研究を手伝いながら、魔法を学ぶレクチャーを受けた。
 その中で、日門は何度自分の身体をいじられたら分からない。夜寝て朝起きたら、いつのまにか研究台に縛り付けられていたことなど数え切れないし、何の物体か分からないものを食べさせられたり飲ませられたり、あるいは直接身体に注入されたりと、まるで改造人間の手術でも受けている気分だった。

 掃除、洗濯、料理などの身の回りの世話も当然させられ、文句を吐きながらもここが最後の望みだからと自分に言い聞かせて頑張ったつもりだ。
 そしてそんなある日、いよいよマクスから聞かされることになった魔法を扱う方法。

 日門の身体に《魔核》を埋め込むという異端技術。それを駆使することによって、日門は今の身体から脱却する術を得ることができる。
 ここまで来て尻ごみなどはしていられない。たとえ異端でも。力を得るためにその技術を受け入れた。

 だが優れた技術を持つマクスをもってしても、その成功率は凡そ〝1パーセント〟程度。

 100人いれば99人は確実に死んでしまう改造だと彼は言った。
 それを聞かされても日門は躊躇することなく受けたのである。



あなたにおすすめの小説

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。