異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

文字の大きさ
49 / 69

48

「…………それが《子供化》なのか」

 ひとしきり説明が終わった後、喉から絞り出すように理九が口にした。

「いや、そんなことより改めて聞いても、壮絶だな君の過去は……」

 どうやら《子供化》自体に愕然としているわけではなく、日門が受けた改造に対しての反応だったようだ。

 ――ギュ。

 不意に腕に温もりを感じた。見ると小色が顔を埋めるようにして力強く抱き着いていた。

「ど、どうした小色?」

 若干戸惑いながらも日門が声をかけると、小色は黙ったまま……いや、静かに観察すれば彼女が嗚咽していることに気づく。
 思わず理九を見ると、彼もまた小色を見つめながら僅かに困ったように眉を歪ませていた。

「……小色?」
「ひっぐ……ぐすっ……ごめん……なさぃ…………ちょっと……だけでいいですから……」

 そう言われてしまえば、無理に引き剥がすなんて野暮なことはできない。しばらく小色が泣き止むまで待つことになった。
 そしてようやく落ち着いた小色は、少し顔を洗ってくると言って洗面所へと向かう。

「ったく、よくもまあ他人のことで、あんなに自分のことみてえに泣けるよなぁ」
「……まあ、小色は感受性が豊かだしな」
「という理九も目が潤んでたり?」
「し、してない! 事実を曲解するな!」
「みたいな感じで顔を赤らめながら言う理九であった」
「うぐっ…………君、あった時からさらに性格が悪くなったんじゃないかい?」

 恥ずかし気に歯を食いしばっている理九をからかって楽しんでいると、若干まだ目を赤くさせた小色が戻ってきた。

「そ、その……お見苦しいところを……」
「ウハハ、気にすんなって……鼻水くれえ」
「ひぇぅ!? わ、忘れてくださいぃぃぃ~!」

 泣き過ぎて腕に小色の鼻水が少しついただけだし、こちらとしては気にしていない。そもそも泣かせるような話をしたのは日門なのだから。

「ほれほれ、話の続きをしようぜ。それとももう聞きたいことはねえのか?」

 そう尋ねると、兄妹ともに気恥ずかしさで真っ赤になりつつも席に着く。そして理九が咳払いをしてから質問を投げかけてきた。

「その《子供化》っていうのは、君の肉体的には問題はないのかい?」
「まあ問題にならないように起こる省エネモードだしな。たださっきも言ったけど、小さくなっちまうと戦闘力が著しく落ちるのが問題っていえば問題だな」

 こんな世界だ。戦闘力=生存力であり、子供の状態では満足に戦うことはできないのは確かだ。

「けど無理をすりゃ魔法だって使えるしな」
「ダ、ダメですよ! そんなことをしたら死んでしまうかもしれないんですよね!」

 ここは黙っていられないといった感じで小色が入ってくる。

「安心しろって。そんなのは最悪の中の最悪が起きた時だけだから。それに他に手が無いわけでもねえしな」
「他に手? 小さくなっても戦う手段があるっていうことかい?」
「まあな。ほれ、多分コレについても聞きたかったんじゃねえか?」

 日門は《ボックスリング》から小さな石を取り出して二人の前に置いた。すると二人がほぼ同時にハッとして、小色は自身の胸元に触れて「あ……」と声を漏らす。
 それは小色が日門から授かった石とまったく同じものだった。それも当然の話。何故ならこれは……。

「コイツは小色に返しておくぜ」
「え? じゃ、じゃあコレってわたしがあの時に落とした?」
「おう、あの巨大ナメクジの巣に落ちてたから拾っといたんだよ、ほれ」

 小色は受け取ると、大事そうに両手で包み込む。

「……日門、あの時……小色が持っていたこの石から凄まじい放電現象が起きた。アレは一体……」

 理九から、この石が発動した時のことを詳しく聞き、問題なく効果を発揮してくれたことを確認することができた。

「まずその石だけどな、そいつは《魔石》って言って、簡単に言や……魔力が込められた石だな」
「そのままだね……えっと、魔力が込められてるってことは《魔道具》に似たものってことかい?」
「いんや、《魔道具》はあくまでも人工物。んで、対して《魔石》は自然物だ」
「つまり自然に生まれるものってことか。けど魔法みたいな力が発動したけど? 魔力=魔法じゃないよね?」
「理九のその見解で合ってるぜ。そもそも魔法ってのは、魔力を媒介にして想像力を具象化するもんなんだよ」
「また難しいことを。想像力を具象化……じゃあ魔法って千差万別ってことかい?」
「そーいうこと。おんなじ魔法でも、ソイツの想像次第では威力も形も違ったりする。例えば火を放つ魔法があるとして、ある奴にとっちゃ大きくて球体状の火球を放つものかもしれねえし、火炎放射みたいな想像をする奴だって中に入る。そんな感じで、魔法ってのは幅が広くて自由なんだ。それこそ人の想像の数だけ存在する」

 ただ、想像したとしてもその通りに具象化するには、細部に至るまで明確なイメージが必要となるし、それと同時に魔力のコントロールも要求される。
 故にほとんどの者は、先人が生み出した魔法を基盤として、それを基礎魔法という形で学ぶのだ。その方がイメージしやすいし習得が楽だからだ。

 まあ、こういうところが退屈だと言って、日門の師であるマクスは世俗から離れる決意をしたのだが。

「話を《魔石》に戻すけど、この《魔石》ってのは自然に漂う魔力が集まって構成されてる。んで、その中で稀に属性を宿す《魔石》が生まれることがあんだよ」
「属性……ということは、コレは雷の属性が宿っているんですか?」
「おお、さすが異世界好き! 小色、正解!」

 そう言ってやると、嬉しそうに「やった」と小さくガッツポーズする。何と愛らしい姿か。

「火の魔力を宿した《魔石》を《火魔石》、風の魔力を宿した《魔石》を《風魔石》ってな感じでな。んで、お察しの通り、そいつは《雷魔石》。雷属性の魔力を発現させることができるんだよ」

 とはいっても、頭の良い理九はともかく、まだ完全に小色は理解できていない様子。

「ま、百聞は一見に如かずって言うしな。ちょいと試してみっか」

 そうして日門は、二人を連れて外へと出た。




あなたにおすすめの小説

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。