異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ

文字の大きさ
66 / 69

65

 くりなたちは、見張りに気づかれないように十分注意を払いながら少しずつ近づいていく。

 ただ倉庫があるのは敷地内の角であり、目の前は広いグラウンドが広がっている。見晴らしが良いので、何かが近づけばすぐにでも目にすることができるのだ。
 故に真正面から近づくにも限度があり、先手を取るのは不可能に近い。ならばどうするか。危険ではあるが壁の外側から接近して、裏側から隙を突くしかない。

 しかしそのためには一度外壁を越えて外へと出る必要がある。当然それも容易なことではない。何故なら他の場所にも巡回している連中はいるし、外に出たとしてもゾンビたちに気づかれれば即時戦闘し、その騒ぎで見張りたちに気づかれる可能性が高い。 

 外に出て近づくのはさすがにリスクが高過ぎる。そこで目を付けたのは、壁沿いに走っている用水路である。
 この大学は農業科もあり、農作物を育てるための水路として作られた。幅は狭いものの深さはそれなりにあり、身を屈めば隠れながら進むことだって可能だ。

 それに世界大震災の影響か、今は水が通っておらず進みやすくなっているので強い味方になってくれるはず。
 そう考え、くりなたちは用水路に素早く侵入すると、腰を低くしながら静かに倉庫へと近づいていく。

 ただ懸念もあった。こちらにとっては有利な隠れ蓑であるこの水路を、あの狡猾な葛杉が都合よく見落としているだろうかという疑問もある。
 それは作戦開始前に、海彦たち反乱側の幹部たちも口にしていたが、これくらいしか最善の道は見つからなかった。故に覚悟を決めて用水路を利用することを決めたのだ。

 それでもやはり罠が張られている可能性も考慮して、慎重に周囲を警戒しながら進むことにした。何か罠が設置されていても、いつでも対応できるように神経を皆が尖らせ続ける。

 そうして時間はかかったものの、罠に引っ掛かることなく倉庫の裏側へと辿り着くことができた。 
 音を出さずに用水路から上がり、全員が武器を構えて戦闘の態勢へと移行する。
 ここまで近づけば、あとは見張りを素早く制圧して人質を解放するだけ。

(順調だけど……順調過ぎる気がするんだよね)

 くりなは、ここまで無傷で来られたことに素直に喜んではいなかった。あまりにも呆気なく目的地に到着できた。それが物凄く違和感があり、逆に不安を煽る。
 しかし周囲を見回しても、敵らしき存在は五人だけ。こちらの方が人数は多いし、隙を突けば制圧できる自信もある。

 これもすべては海彦たちが、宣戦布告で敵の注意を引いてくれているからだ。だから敵の拠点に戦力が集中しており、ここには最低限しかいない。
 これはチャンスだと皆が思っていることだろう。しかしくりなは嫌な予感が止まらない。それどころか益々膨れ上がっていく。

(やっぱり一旦様子を見た方が……)

 そう思い皆に制止の声を掛けようとした直後、皆が意気込んで突入したのである。
 そのせいで出遅れてしまったくりなは、慌てて彼らのあとを追いかけた。

「な、何だお前ら! どこから! ぐわぁっ!?」

 見張りが虚を突かれて叩き伏せられていく。何度もシミュレーションを行っていたお蔭もあり、それぞれが素早く敵を打ち倒すことに成功した。

「おい! 早く人質たちを!」

 そうして倒した見張りの身体をまさぐり、鍵を入手した仲間の一人が扉にかかったロックを解除し、さらに閂も取り外す。
 すぐさま扉を開き、中にいる人質たちに仲間たちが声をかける。

「おい、もう大丈夫だぞ!」

 キョロキョロと人質の安否を確認するために視線を動かす……が、倉庫に入った者たちは思わず呆気に取られてしまう。

「な、何で……誰もいないんだ?」

 そう、決して広くはない倉庫の中は、ものの見事に空っぽだったのである。少なくとも彼らにはそう見えた。 

 すると突然頭上から何かが落ちてきて、そのまま仲間の一人が倒れてしまう。いや、一人だけではない。次々と頭上から降ってきた何かに攻撃されて沈んでいく。
一体何が起こったのかと、その光景を外から目にしたくりなは絶句した。

 何故ならそこにいたのは、武器を所持した数人の敵だったのだから。その瞬間、くりなは嫌な予感が当たっていたことを知る。

(まさか敵が天井で待ち構えていたの!?)

 ここに人質がいるという情報は得ていた。しかしこの状況、知られていることを前提に葛杉が手を打っていたのだ。
 いや、もしかしたらその情報すらわざと彼が流したものなのかもしれない。他ならぬ自分たちを罠に嵌めるために。

(私たちは、敵が潜んでる場所にまんまと誘き出されたってこと……!?)

 あの倉庫内からの叫びも、わざとこちらに聞こえるように潜んでいる敵が演技をしていたのだろう。わざわざ子供の話題を出しこちらの士気を煽ったのである。

 するといつの間にか外にも敵が取り囲んでいた。
 一体どこから現れたかと思っていると、彼らもまた少し離れた用水路から出てきていた。どうやらこちらが用水路を使うことまで想定していたのだ。
 何もかも考えが甘かった。完全に葛杉の手の上で踊らされてしまっていたのである。

 倉庫内に入った仲間たちが次々と倒され、外に待機していたくりなと二人の仲間は、十人以上の敵に囲まれてしまっていた。逃げ場など皆無だ。当然強行突破などできようはずがない。

 残った仲間の二人も自分たちの敗北を察し恐怖で身体を震わせている。それでも何とか立って武器を構えているのは、なけなしの意地がそうさせているのかもしれない。

 そして反撃しようと突っ込むが、それも虚しくあっさりと倒されてしまう。もう一人の仲間も、怯えて固まっているところを背後から不意打ちを受けて地面に伏した。
 これで残ったのは、くりなだけとなってしまったのである。


あなたにおすすめの小説

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

WIN5で六億円馬券当てちゃった俺がいろいろ巻き込まれた結果現代社会で無双する!

TB
ファンタジー
小栗東〈おぐりあずま〉 二十九歳 趣味競馬 派遣社員。 その日、負け組な感じの人生を歩んできた俺に神が舞い降りた。 競馬のWIN5を的中させその配当は的中者一名だけの六億円だったのだ。 俺は仕事を辞め、豪華客船での世界一周旅行に旅立った。 その航海中に太平洋上で嵐に巻き込まれ豪華客船は沈没してしまう。 意識を失った俺がつぎに気付いたのは穏やかな海上。 相変わらずの豪華客船の中だった。 しかし、そこは地球では無かった。 魔法の存在する世界、そしてギャンブルが支配をする世界だった。 船の乗客二千名、クルー二百名とともにこの異世界の大陸国家カージノで様々な出来事はあったが、無事に地球に戻る事が出来た。 ただし……人口一億人を超えるカージノ大陸と地球には生存しない魔獣たちも一緒に太平洋のど真ん中へ…… 果たして、地球と東の運命はどうなるの?

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

クラスまるごと異世界転移

八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。 ソレは突然訪れた。 『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』 そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。 …そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。 どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。 …大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても… そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。