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第十五話
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――【トイスの村】。
のどかな村で、農耕を中心に作物を育てている小さな村である。
しかし宿屋もあるようなので、まずはそこに向かうことにした。何でもコニムたちが宿代を払ってくれるというので、遠慮なく世話になることにしたのだ。
部屋はベッドだけが陳列されてある簡素なものだったが、野宿と比べると全然良い。
「それよりもアンタたちは良かったのか、オレと同じ部屋で」
「良くはない。今にもコニムに襲い掛かりそうな貴様と同じ部屋なのは、正直不安だ」
「だから襲うかよ」
「しかし! 旅をしていると、雑魚寝や、他の者と同じ室内で仮眠を取るなどということも珍しくはない」
確かに宿屋があったとはいえ、部屋は三つほどしかなく、残り二つは使用済みだということ。そういう場合、一つの部屋で妥協することもままあることなのかもしれない。
「まあ、もしコニムに手を出したらその時は……分かっているだろうな?」
物凄い殺気を迸らせてくる。
「……いや、コニムよりも普通は自分の方を心配しないか?」
「……は? 何故だ?」
「いや、だって……普通はコニムより、アンタの方に男の目はいくだろ?」
「……?」
明らかに理解できていないようで頭の上に大量のハテナマークが見える。するとコニムが近づいてきて耳打ちをしてきた。
「あ、あの、お姉ちゃんって自分のことは美人さんじゃないと思ってるみたいなんです」
「そうなのか?」
「はい。過去にもその、恋文を貰ったことがあったんですけど、果たし状と勘違いして……」
「それは……その男に同情するな」
自覚のない美女というのも考えものである。
「それよりお前はいいのか? オレが一緒で?」
「あ、はい。その……別に大丈夫です、はい」
少し緊張した面持ちでそう答えるコニム。
「こら! 二人して内緒話はズルいぞ! お姉ちゃんを放置するな!」
まあ、たとえ外見でモテても、性格がこれだからついていく男は少ないのかもしれない。
コニムが彼女を宥めていると、
「それにしてもシャラクよ、貴様、なかなかできるではないか」
「できる? 何が?」
「惚けるでない。女と男でできるといったら、コレしかなかろう」
そう言いながら長槍をクイッと持ち上げて見せつけてくる。
「……もしかして戦いっていうことか?」
「それしかなかろう?」
いや、普通はその言い方だとそれ以外のことを想像するのだが……。どうやらノージュは完全なる脳筋のようだ。
「もしかして貴様は、冒険者でもしておるのか?」
「まあな。手っ取り早く稼ぐには、クエスト報酬を得るのが一番だって聞いたし」
「ふむ。確かに危険を天秤にかけてしまうが、実入りは多かろう」
「アンタもそうなのか?」
「いや、我らは冒険者ではない」
「えと、わたしたちは、ある人を探して旅をしているんです」
「ある人?」
「はい。わたしたちと同じ黄色い髪をした魔人です。見たことありませんか?」
「いや、オレはこの世界に来て、まだ一カ月も経ってないからな。行動範囲もそれほど広くないし」
「そう、ですか……」
「なぁに、気にするなコニム! 必ず見つかるさ!」
「……そうですね、お姉ちゃん」
どうやら少し深刻そうな問題が絡んでいるようだ。他人の写楽が簡単に関わっていい問題ではないような気がした。
「……アンタたちはこれからどうするんだ?」
「む? 無論我々は探し人を追うだけだ。貴様はどうするのだ?」
「オレは……そうだな。しばらく旅をするのもいいかも、な」
「あ、あの……もしほんとにシャラクさんが異世界からやってきたというのであれば、元の世界に戻りたいとは思わないんですか?」
写楽が明らかに寂しげに表情を曇らせたことに気づいたのだろう、コニムは慌てて、
「あ、ごめんなしゃい! もしかして聞いてはいけなかったこと、ですか?」
「…………また噛んだな」
「え……あぅぅ」
「噛むコニムも可愛いであろう! ベスト・オブ・カミカミだな!」
何だそれは、と思わずツッコみたいところだが、
「……別に聞いてもどうってことはないぞ。ただその質問に答えると、もう戻れないっていうのが正しいな」
「も、戻れないんですか? 召喚ができるってことは送還もできるのでは?」
「確かにそういう魔術やスキルも存在するのかもしれない。けどオレは絶対に戻れないだろう」
「……理由をお聞きしてもいいですか?」
「…………オレが異世界人だってこと以上に信じられないかもしれないぞ?」
「フン! もとより貴様の言など話半分で聞いておるわ!」
「アンタには聞いてない」
「何だとぉ!」
「もう、お姉ちゃんは黙っててください!」
「コ、コニムゥ~」
しょんぼりしたノージュは放置して、コニムが真面目な顔を写楽に向けてくる。
「良かったら教えてください」
「……オレは元の世界じゃ――死んだ人間だからな」
「え……えっと……はい?」
「ま、当然そんな反応になるだろうな。けどオレを召喚した国の王も言っていた。オレが召喚されたのは、元の世界で死んだからだとな。それにオレも心当たりがある。確かにあの時オレは……死んだんだろうなぁ」
今となってはもう懐かしい記憶だ。
「……ほれ見ろ、コニム。こやつは我らに真実を話すつもりなど到底ないということだ。元の世界? 死んだ? 異世界人? どれも信憑性はない! 故に貴様を嘘つきに認定してやる!」
「別に信じようが信じまいが好きにしてくれって言ったぞ。第一、嘘でも現実でも、アンタたちには迷惑は掛からないだろ」
そう、そういう考えがあるから素直に言ったのだ。到底信じることができる内容ではないことも気づいていた。言ったところで実害もないので、聞いてきたから教えただけだ。
「…………わたしは、信じます」
「そうだろうそうだろう。やはり信じることなど……って、え? コニム?」
「わたしは信じますよ、シャラクさん」
写楽も彼女の言葉に衝撃を受けて瞬きを失っていた。しかし冗談や酔狂でそんなことを言っているのではないことは、彼女の真剣な表情を見て伝わって来ている。
「……まさかコニム、お前……使ったのか?」
「はい」
使った? 何を使ったというのだろうか。するとコニムが頭を下げてきた。
「ごめんなさい、シャラクさん。わたし、力を使わせてもらいました」
のどかな村で、農耕を中心に作物を育てている小さな村である。
しかし宿屋もあるようなので、まずはそこに向かうことにした。何でもコニムたちが宿代を払ってくれるというので、遠慮なく世話になることにしたのだ。
部屋はベッドだけが陳列されてある簡素なものだったが、野宿と比べると全然良い。
「それよりもアンタたちは良かったのか、オレと同じ部屋で」
「良くはない。今にもコニムに襲い掛かりそうな貴様と同じ部屋なのは、正直不安だ」
「だから襲うかよ」
「しかし! 旅をしていると、雑魚寝や、他の者と同じ室内で仮眠を取るなどということも珍しくはない」
確かに宿屋があったとはいえ、部屋は三つほどしかなく、残り二つは使用済みだということ。そういう場合、一つの部屋で妥協することもままあることなのかもしれない。
「まあ、もしコニムに手を出したらその時は……分かっているだろうな?」
物凄い殺気を迸らせてくる。
「……いや、コニムよりも普通は自分の方を心配しないか?」
「……は? 何故だ?」
「いや、だって……普通はコニムより、アンタの方に男の目はいくだろ?」
「……?」
明らかに理解できていないようで頭の上に大量のハテナマークが見える。するとコニムが近づいてきて耳打ちをしてきた。
「あ、あの、お姉ちゃんって自分のことは美人さんじゃないと思ってるみたいなんです」
「そうなのか?」
「はい。過去にもその、恋文を貰ったことがあったんですけど、果たし状と勘違いして……」
「それは……その男に同情するな」
自覚のない美女というのも考えものである。
「それよりお前はいいのか? オレが一緒で?」
「あ、はい。その……別に大丈夫です、はい」
少し緊張した面持ちでそう答えるコニム。
「こら! 二人して内緒話はズルいぞ! お姉ちゃんを放置するな!」
まあ、たとえ外見でモテても、性格がこれだからついていく男は少ないのかもしれない。
コニムが彼女を宥めていると、
「それにしてもシャラクよ、貴様、なかなかできるではないか」
「できる? 何が?」
「惚けるでない。女と男でできるといったら、コレしかなかろう」
そう言いながら長槍をクイッと持ち上げて見せつけてくる。
「……もしかして戦いっていうことか?」
「それしかなかろう?」
いや、普通はその言い方だとそれ以外のことを想像するのだが……。どうやらノージュは完全なる脳筋のようだ。
「もしかして貴様は、冒険者でもしておるのか?」
「まあな。手っ取り早く稼ぐには、クエスト報酬を得るのが一番だって聞いたし」
「ふむ。確かに危険を天秤にかけてしまうが、実入りは多かろう」
「アンタもそうなのか?」
「いや、我らは冒険者ではない」
「えと、わたしたちは、ある人を探して旅をしているんです」
「ある人?」
「はい。わたしたちと同じ黄色い髪をした魔人です。見たことありませんか?」
「いや、オレはこの世界に来て、まだ一カ月も経ってないからな。行動範囲もそれほど広くないし」
「そう、ですか……」
「なぁに、気にするなコニム! 必ず見つかるさ!」
「……そうですね、お姉ちゃん」
どうやら少し深刻そうな問題が絡んでいるようだ。他人の写楽が簡単に関わっていい問題ではないような気がした。
「……アンタたちはこれからどうするんだ?」
「む? 無論我々は探し人を追うだけだ。貴様はどうするのだ?」
「オレは……そうだな。しばらく旅をするのもいいかも、な」
「あ、あの……もしほんとにシャラクさんが異世界からやってきたというのであれば、元の世界に戻りたいとは思わないんですか?」
写楽が明らかに寂しげに表情を曇らせたことに気づいたのだろう、コニムは慌てて、
「あ、ごめんなしゃい! もしかして聞いてはいけなかったこと、ですか?」
「…………また噛んだな」
「え……あぅぅ」
「噛むコニムも可愛いであろう! ベスト・オブ・カミカミだな!」
何だそれは、と思わずツッコみたいところだが、
「……別に聞いてもどうってことはないぞ。ただその質問に答えると、もう戻れないっていうのが正しいな」
「も、戻れないんですか? 召喚ができるってことは送還もできるのでは?」
「確かにそういう魔術やスキルも存在するのかもしれない。けどオレは絶対に戻れないだろう」
「……理由をお聞きしてもいいですか?」
「…………オレが異世界人だってこと以上に信じられないかもしれないぞ?」
「フン! もとより貴様の言など話半分で聞いておるわ!」
「アンタには聞いてない」
「何だとぉ!」
「もう、お姉ちゃんは黙っててください!」
「コ、コニムゥ~」
しょんぼりしたノージュは放置して、コニムが真面目な顔を写楽に向けてくる。
「良かったら教えてください」
「……オレは元の世界じゃ――死んだ人間だからな」
「え……えっと……はい?」
「ま、当然そんな反応になるだろうな。けどオレを召喚した国の王も言っていた。オレが召喚されたのは、元の世界で死んだからだとな。それにオレも心当たりがある。確かにあの時オレは……死んだんだろうなぁ」
今となってはもう懐かしい記憶だ。
「……ほれ見ろ、コニム。こやつは我らに真実を話すつもりなど到底ないということだ。元の世界? 死んだ? 異世界人? どれも信憑性はない! 故に貴様を嘘つきに認定してやる!」
「別に信じようが信じまいが好きにしてくれって言ったぞ。第一、嘘でも現実でも、アンタたちには迷惑は掛からないだろ」
そう、そういう考えがあるから素直に言ったのだ。到底信じることができる内容ではないことも気づいていた。言ったところで実害もないので、聞いてきたから教えただけだ。
「…………わたしは、信じます」
「そうだろうそうだろう。やはり信じることなど……って、え? コニム?」
「わたしは信じますよ、シャラクさん」
写楽も彼女の言葉に衝撃を受けて瞬きを失っていた。しかし冗談や酔狂でそんなことを言っているのではないことは、彼女の真剣な表情を見て伝わって来ている。
「……まさかコニム、お前……使ったのか?」
「はい」
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「ごめんなさい、シャラクさん。わたし、力を使わせてもらいました」
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