セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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「えっ!?」

 見れば下方にいる少年が弓を引いていた。少年の照準がオレに移る。ゾクッと死の気配が匂う。

「くっ!」

 反射的に少年に向けて引き金を引いていた。しかし少年は素早い動きで岩壁を登ってくる。ほとんど断崖絶壁に近いこの壁を悠々と登ってくる少年に驚愕する。
 そのままオレの近くまでやって来ると、兵たちがその少年に向かって突っ込んでいく。だが少年は憮然とした態度のまま腰に携帯している剣を抜くといとも簡単に向かってくる兵を斬り伏せていく。

「な、何だコイツっ!?」

 全身が粟立つような殺気が少年から感じる。一連の動きだけで只者じゃないことは理解できている。しかしあまりにも強過ぎる。後ろに目でもあるのかと思うような動きも難なく行い、弓を、剣を回避してはカウンターで相手を殺していく。一撃で。

 ただの賊にこんな信じられないくらい強い奴がいるなんて反則だ。RPGでいうと、初期の段階で、魔王か、もしくは魔王の幹部あたりが出てきているのと同じだ。
 明らかにレベルが違う。
 兵たちも少年の強さを感じ取り、下手に近づかない。すると少年はギロリとオレを見る。

「……お前は何者だ?」

 それはオレが聞きたい。これほどの強さがあれば、どこぞの軍にも手厚く歓迎されるであろう彼が、何故賊に身を落としているのか理由が判明しない。

「聞こえてるのか?」
「え……あ……オレ?」
「そうだ。その奇妙な武器を持つ、お前のことだ。お前は何者だ?」

 その時、兵の一人が自慢するように叫ぶ。

「こ、この方は“神の御使い”様だっ! お前ら賊どもを討伐するためにこの世界に降り立ちなされたんだ!」

 いや、ここでそんなことは言っちゃダメだ! 明らかに敵意が膨らんでるからっ! 

「“神の御使い”……だと? あの神託は眉唾ものではなかったというのか? いや、しかし黒い武器……魔本……」

 何やら少年は顎に手をやりブツブツと呟いている。い、今のうちに仕留められないかな……?

 そう思ったのはオレだけじゃなかったようで、背後にいた兵が静かに忍び寄るが、少年は背後に向かって剣を横薙ぎに一閃する。そこから生み出された風圧で兵たちは吹き飛んでしまう。

 やはりそう甘くはいかないみたいだ。……どうしよう?

「……試してみるか」

 何をぉぉぉっ!? と叫びたいが、明らかに意識がオレに向いていることから、間違いなくオレと戦うつもりのようだ。あんな化け物クラスと戦いたくねえ! 今戦っても勝ち目なんてねえぞ!

 だがそこへ兵たちがオレを庇うように前方へ立つ。

「え……お、お前ら?」
「御使い様は逃げて下さい!」
「え?」
「ここは俺たちが食い止めます!」
「で、でもアイツはとんでもなく強えぞ!」
「それは分かってます! だけど、ここであなたに死なれたら、クーアイ様とモルニエ様に会わせる顔がありませんっ!」
「……!」
「あなたのお蔭で、今回の奇襲はほぼ成功です。少なくても、下にいる賊どもはそのうち殲滅できるでしょう」

 そう、この青髪の少年だけがイレギュラーだった。

「何とか逃げて、クーアイ様と合流して下さい。団長なら、この少年を倒してくれるはずです!」
「ほう、舐められたものだな。たかが国の団長クラスが、オレに勝てるというのか?」

 凄まじい殺気が少年から溢れ出す。どんな修羅場を潜ってきたらあれほどの威圧感が出せるのか甚だ疑問だ。

「我々の団長は強い方だ! 貴様などに破れはせんっ!」
「フン、一度はオレの策に大敗を喫しておいてか?」

 どうやらあの策はこの少年が考えたものらしい。

「それでも最後に勝つのは、我々クーアイ騎士団だっ!」
「…………面白い。なら団長ならば、こんな不意打ちでもかわせるのだなっ!」

 いきなり少年が地面に落ちている兵士たちが持っていた剣を取ると、下で戦っているクーアイ目掛けてその剣を槍投げのように投擲した。

「あっ、団長っ!?」

 兵たちが叫ぶが、クーアイは魔本を展開して賊どもを殲滅中で気づいていない。いや、月明かりが刀身に反射したお蔭で、クーアイも剣の存在に気づいたが、すでに回避は難しい領域に足を踏み入れていた。
 あとコンマ数秒で刀身は彼女の胸を貫くだろう。

「……チェックメイトだ」

 少年が呟く。誰もが絶望の表情をした瞬間、少年によって放たれた剣が、黒い塊に呑み込まれて消失した。クーアイと少年だけでなく、その様子を見ていた者たちが原因に顔を向ける。
 そう、やったのはオレだ。

「あ、あのなぁっ! いきなり女の子に向かって剣なんて投げんなっ!」
「……オレの投げた剣を……消した?」
「おいテメエ聞いてんのか!? いいか! 美少女は国の、いいや、世界の宝なんだぞ! それをテメエ! オレの目の前で殺そうとするとはいい度胸してんじゃねえかっ!」

 もう許さねえ! 仲間の兵たちも殺しやがって! そもそもコイツがあんな策を実行しなきゃ、仲間が死ぬこともなかったんだ!

「殺すのが怖えとかもうそんなことどうでもいいっ! テメエがクーアイを殺そうとすんなら、逆にオレがぶち殺してやらぁっ!」

 キィィィィィンッと銃口に魔力を集めていく。

「お前らは下がって、下を援護してろ!」
「は、はい!」

 オレの剣幕に呆気に取られていた兵たちも、言うことに従って離れていく。



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