セブンス・ワールド ~神に誘われてゲーム世界へ~

十本スイ

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 初めての戦から数日が経った頃、ようやく拷問ともいうべきクーアイのしごきにも大分慣れてきた。
 オレは一人  城の展望台に上って、見事な景色に意識を溶けさせていた。その時、キィィィィィィンと耳鳴りが下と思ったら、すぐに頭の中に声が響いてきた。

――――――――やあ、ずいぶん元気そうで何よりだよ!

「んあ!? そ、その声は!?」

 思わず声を荒げてしまった。

 ――――――――あはは、いきなりですんまそ~ん!

「おい、この駄目神! 言いたいことはいろいろあるけど、何であれから通信してこなかったんだ?」

 ――――――――え? ボクの声をずっと聞きたかったの? なにそれ怖いんだけど?

「オレがさもお前のストーカー的な扱い止めてくれないっ!」

 ――――――――あはは~! 冗談だよ! ボクだってヒマじゃないんだよ? やることがいろいろあって忙しい身なんだ。こう見えてもね。
「こう見えてもって、お前の姿なんか今まで見たことねえんだけど?」

 ――――――――だよね~。あ、でもそのうち会うことができるかもしれないよ。

「ホントかそれ?」

 ――――――――さあ?

「さあって!」

 ――――――――だってさ、ボクに会うってことは、君が“七色の魔本”を揃えるってことだもん。

「おいおい、マジで全部集めねえと会えねえってのか?」

 ――――――――当然だよ! だって神様だよボク! そ~んな簡単に会えちゃありがたくないでしょ?

「いや、もうオレの頭の中に話しかけてきている言葉遣いで、オレの中の神像がすっげえ底辺レベルなんだけど」

 ――――――――何でっ!? ボクの話し方のどこがいけないってのさ!

「だってお前、絶対ガキじゃん。しかも幼女っぽいし。オレロリコンちゃうし」

 ――――――――何で最後関西弁なのさ。うう~でも幼女はヒドイなぁ。立派な女性に言うべき言葉じゃないよそれ!

「だったらお前、ナイスバディな妖艶美女なの?」

 ――――――――………………………………。

「いやいや、何か喋れよ! そこは嘘でもYESって答えてオレが突っ込むべきとこじゃねえの! つうかその沈黙は何か悲しさを覚えるから止めてっ!」

 ――――――――だってさ、ボクも頑張ってるんだよ。牛乳だっていっぱい飲んでるし、運動だってそこそこやってるつもりだよ? それなのに何でボクの身長と胸は絶望化してるの?

「怖えからっ! 声に闇が乗ってるからっ!」

 ――――――――いいもんっ! 胸のアレなんてただの脂肪だし! むしろ死亡しろって感じだし! 何か何をするにも邪魔くさそうだし! 重そうだし! 体重も増えるし、良いことなんてないよ!

「…………言ってて虚しくならねえか?」

 ――――――――…………………………うん。

 すっげえ落ち込み様! やっぱりめっちゃ気にしてるぅぅぅぅぅっ!

「あ、あのよ! 胸って確かにあった方が良いって人もいるだろうけど、無い需要っての間違いなくあるんだぜ!」

 ――――――――ちなみに君は?

「断然巨乳派です」 

 ――――――――うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!

「し、しまった!? つい本音が口から!?」

 ――――――――いいんだいいんだ……ボクなんてあれさ貧乳神さ……ううん、チョビッとしかないからチョビ乳かな……はは。

 マズイ! これは完全にネガティブモードに突入している!? このままだとコイツの鬱さがオレにまで乗り移る可能性が高え!

「そ、それよりも今日はどういった用事で話しかけてきたんだよ!」

 ――――――――あ、そうだった!

 ふぅ~、話を変えられたようで良かったぜ~。

 ――――――――まあ、これといって重要ってわけじゃないんだけど……。

「あ? そうなの?」

 ――――――――うん。実はさ、この世界の恐怖の一端に触れた君に最後のチャンスを上げようと思ってね。

「はあ? 最後のチャンス?」

 ――――――――そう。どう、元の世界に帰りたくないかい?

「……え?」

 ――――――――ボクは君が気に入ったし、できるだけの補助はしてあげたいと思ってる。けどそれでも死ぬ可能性は、元の世界と比べても遥かに高い。つい最近もそれを感じ取ったはずだよね?

 確かに彼女の言う通り、オレはこの世界に来て何度も死にかけた。日本にいた時とは考えられないほどの確率だ。

 ――――――――お気に入りの君が死んだり、壊れていくのは見るのは忍びない。だからここで最後のチャンス。もし君が帰りたいって言うなら、帰してあげるよ。

「……帰れる?」

 このまま無傷で……? 

 ――――――――だけどその時は、ここでの記憶も消させてもらうよ。もちろんボクとの会話も何もかもね。無かったことになる。

 このまま元の世界に帰れば、平和が待っている。変わり映えのしない日常が広がっていて、刺激は物足りないが、確かな安全が約束されている。少なくともこの世界よりは……。
 だがそうなればここでのことが全て無かったことになる。
 あの戦で失った兵たちの命も、クーアイとあの夜語った時間も、何もかもが失われる。本当にそれでいいのかだろうか……?

 死にたくないのであればここで帰るべきだ。変な奴にも目をつけられたし、これからも死線という戦場を駆け抜けて行かなければならないかもしれない。

 故に命が惜しいのなら逃げ帰るのが正解だ。しかし……。

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