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第二章
勘を甘く見てはいけない
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「お婆ちゃん」
俺たちのどうしようもないじゃれあいに終止符を打ったのは、メイファお婆さんだった。
「ほらほら、レイト、カップを机に置いて」
「‥‥分かった」
「いい子だわ」
不承不承と言った感じでカップを机に置いたレイトにメイファお婆さんは優しく頭を撫でる。
なんか、ほっこりする。
「そうだ、お婆ちゃん、随分と遅かったみたいだけど、何かあったの?」
「それが、お茶菓子を出そうと思ったんだけど、見当たらなくてね。軽く作っていたら遅くなっちゃって。ごめんなさいね」
そう言って手に持っていた木の皿を机に置き、俺たちがその中を覗くとそこには美味しそうなクッキーが入っていた。
この世界には魔法が存在し、扱えない人でも、魔法が付与された魔法具が存在するため、地球と比べて、比較的短時間でクッキーなどのお菓子を作れたりする。
「わぁ~!」
「美味しそう~!」
「いい香りがします、ハルヤ様も」
「うん、いい匂い。あ、そうだナーマ」
思い思いにクッキーへの感想を言っていると、お土産を姉様に貰ったのに渡していないことに気がついた。
お土産であるスコーンを持っているナーマに視線で伝えると、ナーマも気がつき、苦笑いを浮かべた。
「メイファお婆さん、お土産です。最初に渡しておけばよかったですね」
「まぁ、シュクレのスコーンね。私、大好きなのよ」
ナーマから差し出されると、メイファお婆さんは顔を綻ばせ、嬉しそうに受け取ってくれた。
「ナーマからここのスコーンが好きだと伺ったので」
「そう、嬉しいわ。お皿に盛り付けてみんなでいただきましょうか。‥‥そうだわ。ハルヤくん、スコーン似合うお皿を一緒に選んでくれないかしら」
キッチンに行こうとしていたメイファお婆さんが足を止めて、思いついたように俺のことを呼んだ。
「‥‥?はい」
不思議に思いながらも俺はメイファお婆さんの役に立てるのであれば、とキッチンの方へメイファお婆さんと一緒に入った。
ナーマも一緒に行くと言っていたがどうに抑えて、待っていてもらうことに成功した。
「さて、何にしようかしらね」
キッチンに入るとメイファお婆さんが食器棚を眺めながら思案していた。
俺も眺めているとふと、一つの皿が目についた。
横には綺麗な意匠の皿が並んでいるが、そのなんの変哲のない皿が、ひどく既視感があって、懐かしかった。
「これは‥‥」
「あら‥‥‥それにしましょうか」
食器棚の中の一つの皿を指すと、メイファお婆さんが驚いたような、確信を持ったようなそんな顔をしていた。
「良いんですか?」
「えぇ、良いのよ。盛り付けましょう」
皿を取るとテーブルに置き、ナーマから手渡されたシュクレの紙袋の中から一つづつスコーンを取り出すと慣れた手つきで盛りつけ始めた。
「何か手伝うことはありますか?」
「そうね‥‥じゃあ、私の昔話に付き合って欲しいわ」
「昔話?分かりましたそのくらいなら」
メイファお婆さんがなにを思って、そう言うったらのかは分からないけど、何かお手伝いできることがあれば俺がしない手はない。
「昔、ここに一人の王子様が良く訪れていたわ。私のことを王都で聞いたみたいでね。あの時は驚いたわ」
「えっ‥‥」
話し始めたメイファお婆さんの言葉に、俺の中で動揺が生まれる。
だけど、口を挟むことはてぎず、ただ聞いておくしかなかった。
「王子様は聡明でいい子だったの。色んな人に好かれていてね。そんな子なのに、いいえ、そんな子だった子だったかしらね、神様は連れていってしまったわ」
メイファお婆さんは盛り付けていた箸をそっと置き、寂しそうな顔をして話す。
「あの子がいなくなったことで私たちは悲しんだわ。もちろん国も沈んでいたの。だから、‥‥ハルヤくんが戻ってきてくれて嬉しいわ。みんなには秘密にしているようだけれどね」
「なんで‥‥‥」
正体がバレてしまったことへの驚き、ここまで思っていてくれたことの嬉しさ、それらの感情が一気に胸に押し寄せてきた。
「なんで、分かったんですか?」
「そうねぇ、勘かしら」
「勘ですか‥‥」
俺の正体が分かった理由を尋ねると、思いもよらない解答が返ってきた。
いや、勘‥‥勘、えぇぇ。
レイトの勘が鋭いのはメイファお婆さん譲りなのかもしれない。
ただ俺の正体が最初にバレたのがこの人で良かったとは今、すごくそう思っている。
「もちろん全部が勘ではないの。最後の方は‥‥そうね、確信を持っていたわ」
「えっ?」
「このお皿、これはハルヤくんからもらったもの。なんの変哲もないお皿だけど私にとってはかけがえの無い宝物。適当に選ばせた時、もし、横に並んでいる綺麗な皿じゃなくてこれを選んだのならきっとハルヤ殿下なのだと思っていたわ」
綺麗に盛り付けたスコーンの乗った皿を優しく、愛おしく撫でる。
そうかこのお皿はメイファお婆さん誕生日にあげたものだ。
王子とは言え俺が使えたお小遣いは限られていたから、高価なものは買えなかったけど、でも、いつもお世話になっているメイファお婆さんのために一生懸命ナーマと街を歩き探したのは良い思い出だ。
「そうだったんですか‥‥‥。あの、俺の正体は」
「大丈夫よ、絶対に言わないわ。ハルヤくんが正体を明かしたいと願うその時まで。あ、その前に私が死んでしまったら墓まで持って行くとこになるわね」
「縁起でも無いこと言わないでくださいっ」
突然笑顔でそんなことで言われて、慌てて言う。
メイファお婆さんにはまだまだ長生きしてもらわないと困る。
「お婆ちゃーん、まだ?」
話に夢中になっているとヒマリの甘えた声がリビングのほうから聞こえてきた。
「ふふふ、さ、早く持っていきましょうか。ヒマリが待ちくたびれてるみたい。これ全部平らげてしまいそうだわ」
「そうみたいですね、あ、でもまた買ってきますよ」
「本当に?楽しみね」
二人でヒマリの爆食を想像して笑いながら、お皿をキッチンへ持って行った。
きっと‥‥また買ってこよう。
今度は自分の手で買ったものを‥‥、そして、一緒に食べたいな。
俺たちのどうしようもないじゃれあいに終止符を打ったのは、メイファお婆さんだった。
「ほらほら、レイト、カップを机に置いて」
「‥‥分かった」
「いい子だわ」
不承不承と言った感じでカップを机に置いたレイトにメイファお婆さんは優しく頭を撫でる。
なんか、ほっこりする。
「そうだ、お婆ちゃん、随分と遅かったみたいだけど、何かあったの?」
「それが、お茶菓子を出そうと思ったんだけど、見当たらなくてね。軽く作っていたら遅くなっちゃって。ごめんなさいね」
そう言って手に持っていた木の皿を机に置き、俺たちがその中を覗くとそこには美味しそうなクッキーが入っていた。
この世界には魔法が存在し、扱えない人でも、魔法が付与された魔法具が存在するため、地球と比べて、比較的短時間でクッキーなどのお菓子を作れたりする。
「わぁ~!」
「美味しそう~!」
「いい香りがします、ハルヤ様も」
「うん、いい匂い。あ、そうだナーマ」
思い思いにクッキーへの感想を言っていると、お土産を姉様に貰ったのに渡していないことに気がついた。
お土産であるスコーンを持っているナーマに視線で伝えると、ナーマも気がつき、苦笑いを浮かべた。
「メイファお婆さん、お土産です。最初に渡しておけばよかったですね」
「まぁ、シュクレのスコーンね。私、大好きなのよ」
ナーマから差し出されると、メイファお婆さんは顔を綻ばせ、嬉しそうに受け取ってくれた。
「ナーマからここのスコーンが好きだと伺ったので」
「そう、嬉しいわ。お皿に盛り付けてみんなでいただきましょうか。‥‥そうだわ。ハルヤくん、スコーン似合うお皿を一緒に選んでくれないかしら」
キッチンに行こうとしていたメイファお婆さんが足を止めて、思いついたように俺のことを呼んだ。
「‥‥?はい」
不思議に思いながらも俺はメイファお婆さんの役に立てるのであれば、とキッチンの方へメイファお婆さんと一緒に入った。
ナーマも一緒に行くと言っていたがどうに抑えて、待っていてもらうことに成功した。
「さて、何にしようかしらね」
キッチンに入るとメイファお婆さんが食器棚を眺めながら思案していた。
俺も眺めているとふと、一つの皿が目についた。
横には綺麗な意匠の皿が並んでいるが、そのなんの変哲のない皿が、ひどく既視感があって、懐かしかった。
「これは‥‥」
「あら‥‥‥それにしましょうか」
食器棚の中の一つの皿を指すと、メイファお婆さんが驚いたような、確信を持ったようなそんな顔をしていた。
「良いんですか?」
「えぇ、良いのよ。盛り付けましょう」
皿を取るとテーブルに置き、ナーマから手渡されたシュクレの紙袋の中から一つづつスコーンを取り出すと慣れた手つきで盛りつけ始めた。
「何か手伝うことはありますか?」
「そうね‥‥じゃあ、私の昔話に付き合って欲しいわ」
「昔話?分かりましたそのくらいなら」
メイファお婆さんがなにを思って、そう言うったらのかは分からないけど、何かお手伝いできることがあれば俺がしない手はない。
「昔、ここに一人の王子様が良く訪れていたわ。私のことを王都で聞いたみたいでね。あの時は驚いたわ」
「えっ‥‥」
話し始めたメイファお婆さんの言葉に、俺の中で動揺が生まれる。
だけど、口を挟むことはてぎず、ただ聞いておくしかなかった。
「王子様は聡明でいい子だったの。色んな人に好かれていてね。そんな子なのに、いいえ、そんな子だった子だったかしらね、神様は連れていってしまったわ」
メイファお婆さんは盛り付けていた箸をそっと置き、寂しそうな顔をして話す。
「あの子がいなくなったことで私たちは悲しんだわ。もちろん国も沈んでいたの。だから、‥‥ハルヤくんが戻ってきてくれて嬉しいわ。みんなには秘密にしているようだけれどね」
「なんで‥‥‥」
正体がバレてしまったことへの驚き、ここまで思っていてくれたことの嬉しさ、それらの感情が一気に胸に押し寄せてきた。
「なんで、分かったんですか?」
「そうねぇ、勘かしら」
「勘ですか‥‥」
俺の正体が分かった理由を尋ねると、思いもよらない解答が返ってきた。
いや、勘‥‥勘、えぇぇ。
レイトの勘が鋭いのはメイファお婆さん譲りなのかもしれない。
ただ俺の正体が最初にバレたのがこの人で良かったとは今、すごくそう思っている。
「もちろん全部が勘ではないの。最後の方は‥‥そうね、確信を持っていたわ」
「えっ?」
「このお皿、これはハルヤくんからもらったもの。なんの変哲もないお皿だけど私にとってはかけがえの無い宝物。適当に選ばせた時、もし、横に並んでいる綺麗な皿じゃなくてこれを選んだのならきっとハルヤ殿下なのだと思っていたわ」
綺麗に盛り付けたスコーンの乗った皿を優しく、愛おしく撫でる。
そうかこのお皿はメイファお婆さん誕生日にあげたものだ。
王子とは言え俺が使えたお小遣いは限られていたから、高価なものは買えなかったけど、でも、いつもお世話になっているメイファお婆さんのために一生懸命ナーマと街を歩き探したのは良い思い出だ。
「そうだったんですか‥‥‥。あの、俺の正体は」
「大丈夫よ、絶対に言わないわ。ハルヤくんが正体を明かしたいと願うその時まで。あ、その前に私が死んでしまったら墓まで持って行くとこになるわね」
「縁起でも無いこと言わないでくださいっ」
突然笑顔でそんなことで言われて、慌てて言う。
メイファお婆さんにはまだまだ長生きしてもらわないと困る。
「お婆ちゃーん、まだ?」
話に夢中になっているとヒマリの甘えた声がリビングのほうから聞こえてきた。
「ふふふ、さ、早く持っていきましょうか。ヒマリが待ちくたびれてるみたい。これ全部平らげてしまいそうだわ」
「そうみたいですね、あ、でもまた買ってきますよ」
「本当に?楽しみね」
二人でヒマリの爆食を想像して笑いながら、お皿をキッチンへ持って行った。
きっと‥‥また買ってこよう。
今度は自分の手で買ったものを‥‥、そして、一緒に食べたいな。
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