紫陽花旅館の殺人

二章

ぶつかり

「とにかく、毒ということは間違いないと思っていますので、警察が来るまでは俺が荒太さんの事件を捜査します。」

宣言した瞬間、今までずっと黙っていた崎原さんが立ち上がって声を上げた。

「はぁ！？あんたみたいなただの探偵が捜査！？勘弁してくださいよ。あんたみたいな人のお遊びに僕のようなエリートの時間を奪わないでいただきたいですね」

すごい馬鹿にされたな。ていうかお遊びって、至って真面目なんだが…というかただの探偵ではないし、警察と協力したこともあるし。
と俺は少しムッとしていた。すると

「勝手なこと言わないでください。この人は殺人事件を解決したことのある実績のある人です。何も知らない人が偉そうに言わないでください。」

滝村さんが、立ち上がってその綺麗な顔を少し歪めて言った。だが、

「はっ、有名なミステリ作家の滝村さん。貴方はミステリ作家だから、この事件が気になるだけだろう？
所詮は素人だ。あんな嫌な事件警察に任せておけばいいんだ。そんな探偵に頼む必要なんてないんだ」

あの自己紹介の時の優しそうな崎原さんはどこに行ったのだろうか、あれは幻覚か？なんて呑気なことを考えていると

「本当に、崎原さんの言う通りだ。そんな探偵風情に頼む必要などない。後、滝村…だっけ？君もただの小説作家だろう？変な事に首を突っ込むんじゃない。美人が台無しだぞ？はっはっは」

便乗して、神山さんが笑いながらすごく偉そうに言った。なんだか禍々しい雰囲気を感じたから滝村さんの方をそっと見てみると、

「…」

般若のような顔をしながら静かに怒っている滝村さんがいた。ちょっと喉がヒュッて言った。怖い。
あの3人の間に電気が走ってる気がする。
女将さん達オロオロしてるし、なんかすみません…