能天気男子の受難

プロローグ

カキーンッ！
剣と剣が激しくぶつかり甲高い金属音が鳴り響く。

「くっ！うわあぁぁぁ！」

青年は内側から禍々しく黒い煙のような霧のようなモノに覆われ化け物に変化していく。


(誰、か……めて……く…れ………。)




◆◆◆



(はっ！！)
目を開けてはぁはぁと、荒い息を吐き出す。

何か…変な夢を見ていたような…。
ゲームしていて寝落ちしたらしい……ゲーム？
何か忘れているような気がして、胸がモヤモヤする。


「ん？あれ…？」
起き上がり辺りを見渡せばーーー

広い部屋。西洋風の建物のこの部屋には、豪華な革張りのソファや大きなテーブルがあり、まるで中世ヨーロッパを思わせる。窓からは夕暮れ時の赤みがかかった太陽が部屋を照らす。
ここは自分の部屋だと認識できる。知っている。
だが、見慣れているはずなのに、初めて見るような不思議な感じがする。


混乱する頭を抱えていると、コンコンとノックの音がして部屋のドアが開く

「起きましたか？…どこか痛いとこでも？」
と心配そうな顔で近づいてくる…赤い目の青年。

物凄く整った顔立ちの青年に圧倒されながらも、この状況を思い出す。

………紺色の髪に、赤い瞳。彼の名はフェルド。今は執事見習いらしい。
いつも俺の事を気づかってくれて頼りになる兄的存在。

頭の中に情報が断片的に、流れるように入ってくる。


フェルドの、その赤い瞳が綺麗だなとぼーっと見つめていた。
すると、近づいてきたフェルドの手が俺のおでこに触り

「熱はないようですね。」
と優しく微笑まれる。

今のこの状況が解らない…。とフェルドを見上げれば、
庭を散歩中に転んで頭をぶつけた。意識がなく気絶したようなので、部屋に運んだ。
と言うことらしい。

前世の記憶が膨大に頭の中に入ってくるのと現在の情報が入り乱れて混乱中の為、あやふやな返事だけする。

一人になりたいと言うと、フェルドは心配な顔をしたが、部屋を出ていってくれた。

頭の中がパニック寸前だ。何故、何が、どうして、と答えがない問題に思考は放棄した。

そして、ふと気づく。

この身体…。俺は２３歳の中肉中背のどこにでもいる普通の男だったはず…。
手のひらを見ても、まだ子供だと思えるほどの大きさだ。

とりあえず現状を把握しなくては。
確認の為、部屋にある全身が写る鏡の前に行き全身を見てみる。

まだあどけない少年の顔。ややつり目だが整った顔。肌の色は白く、ツルツル。髪は金色に近い茶色。瞳の色は紫。
体型は細いものの、骨格は男のもので。

どこかで見た事あるような…

自分なのに自分じゃないような不思議な感覚。鏡の前で後ろ姿や横からの姿と眺めながら、頬を引っ張ったりして確かめる。


部屋の造りや調度品、自分の着ている服から現代ニホンではない事が解る。

俺は、あの時死んでしまったのか…。
この世界は………。

どうなってるんだぁぁぁぁぁ。