能天気男子の受難

いとみ

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前世の記憶

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前世の自分は、普通のどこにでもいるバイト青年だった。

だが女運がない!
二股され、貢がされ、あわや結婚詐欺に騙される所だった……
思い出して落ち込む。ダメすぎる前世の自分。


だからなのか分からないが、二次元にのめり込んだ。
主に恋愛ゲームが大好きだった。男性恋愛ゲーム、乙女恋愛ゲーム、ハーレムものや、逆ハーレム、ジャンル問わず色々やった。

自分に都合の良い物語はそれなりに楽しかった…が現実世界の自分には空しさだけが残っていた。



◆◆◆



ある日、朝起きたら胸がざわざわするような、ドキドキするような…。
何か落ち着かない…。でも気のせいだと思い込む。
外は快晴。部屋の掃除でもしようと考える。

だいぶ片付き、本棚の整理をしようと手をかけた。

その時、前に買ったゲームデスクが出てきた。
乙女ゲーム『魔法学園ラビリンス~あなたと共に~』は甘々でベタな王道乙女ゲーム。キャラ達のビジュアル画像が美しく、絵だけに一目惚れし即購入。

その内容は…酷かった。
主人公のヒロインは、なよなよして、ぶりっ子登場!
現実世界でそんな女の子いないよ!俺がどれだけそのぶりっ子に騙されてきたことか。(可愛いから許してしまうんだが…。)
攻略対象者の青年達のセリフも甘ーい!角砂糖を食べてるような甘さだ。イケメンだから許される言動だが、俺のようなモブは痛い野郎に見えるだろう。
甘すぎて吐きそうになるのをこらえ、何とか一人は攻略したものの、それ以上やる気が失せ棚にしまったまま埃が被っていた。

何故かそのゲームを手にとり、まじまじとキャラ達を眺める。改めて見てもビジュアルは良い。主人公は可愛いし、攻略対象者達はカッコいい。

熱心に見ていてバイトに行く時間ギリギリだと気付かなかった。

よし、部屋は綺麗になった。
眺めていたゲームを何故かバッグにしまい、そのまま持って家を出る。


これから起きる前触れかのように……。


胸がモヤモヤする。自転車をこぎ早く早くと気持ちが急かす。
それなのに、いつもは通らない道を通ってみたくなり交差点を曲がる。
急いでいた為、猛スピードで駆け抜けていく。


停車していた車の下から猫が飛び出してきて…避けた。
そして…電柱に身体を強く叩きつけて意識を無くした。


まさか…そのまま死んでしまうなんて…。



今、思えばあの時の胸騒ぎは……………予兆だったのかも。今さら遅いが。
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