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「おい、お前だろ?」
「えぇーと…、人違いじゃないですかね…。」
とっさに誤魔化してしまった。
こうなったら、最後まで人違いで突き通そう。
グレース王子は訝しんで、俺の顔を覗きこんでくる。
昨日はボタンに気をとられ、顔なんて見られていないと思う。俺だと解るはずがない。
「あのー、別人だと思いますよ?」
早く腕をほどいてほしい。
どうしたのか、そこまでこだわる理由が解らない。俺は命が惜しいんです。前世でもまだ二十代だったし、今生でもまだ15歳でまだ死にたくない。
怖くて、情けない顔になってる自覚はある。
なのに、更に腕を引っ張られ距離が縮む。
あろう事か、グレース王子は俺の鎖骨辺りに顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
まるで、昨日と似たようなシチュエーションになっている。
何をしてるんだ!この王子!
「この香り、やっぱり昨日の奴だ。」
は?匂いで人の違いとか解るもんなのか?
「人違いです。」
グレース王子から距離を取るようにしながら、違うと訴えてみる。
「いや、お前だ。…………………………
この爽やかで甘い香り、そなたは華のようだ。蝶の私は美しい華に、捕らわれる。そなたの瞳に私だけを映して欲しい。」
後半のセリフは何だか自分に酔っているような気がするけど………ゲームでヒロインに言っていたものだ。吐き気がするほど甘く、顔が近い。
てか俺はヒロインじゃないし、引く。
実際、俺は口を大きく開けて呆れていた。
「皆、そういう甘い言葉をかけられるとうっとりするものだろう?」
やっと、顔を離してくれたグレース王子は少しムッと、したように言い放つ。
「それは女性限定です。」
思わず突っ込みをいれてしまった。
グレース王子は、それを嫌がるそぶりも、怒るそぶりもなく妙に納得しているようだった。
「お前は…色々な表情をするな。」
ニヤリと笑われた。
こっちが本性かもしれない。
「あのー、そろそろ腕を、離してもらえないでしょうか?」
「だめだ。お前を気に入ったのは本当だからな。」
「はい?」
「つり目でキツそうな印象を受けるのに、泣きそうになった顔は、嗜虐心をそそられる。」
腕は離されたが、壁に追い詰められグレース王子の腕の中に閉じ込められる。
女子なら黄色い声を出して喜びそうなシチュエーションだが、残念な事に平凡な俺は楽しくない。
「いや、そういうのは遠慮します。」
顔を反らしてお断りする。だがグレース王子は、また顔を近づけて匂いを嗅ぎに来る。
「昨日も思ったが、やっぱり良い香りだ。俺は諦めが悪いんだ。」
ひえぇぇぇ。どうしてこうなった………。
もう断罪された方が楽だったかもしれない。
俺は固まって、半分魂が抜けていた。
と、そんな俺達に声をかけてくる猛者がいた。
「ねぇ、遅刻しちゃうよ。」
ヒューリが声をかけてきた。
あれ?俺より先に出たはずなのに何でいるんだ?
「グレース様も、続きは学園に行ってからにしてみてはいかがですか?遅刻しますよ。」
「あ、あぁ、そう…そう、だな。」
グレース王子は、急に話を振られて戸惑っていた。
もしかして……………助けてくれた?
この流れを無駄にしないためにも、グレース王子の腕の中から抜け出し、ヒューリの方に走っていく。
助かったと、ほっとして少し泣きそうだ。
「ヒューリ、ありがとう。」
「確かに嗜虐心をそそられるな。」
ヒューリはボソボソっと喋ったので聞き取れなかった。
「え?何?」
それさえもシカトされて俺を置いて行ってしまう。
俺、本当に泣きそうなんだけど。
「えぇーと…、人違いじゃないですかね…。」
とっさに誤魔化してしまった。
こうなったら、最後まで人違いで突き通そう。
グレース王子は訝しんで、俺の顔を覗きこんでくる。
昨日はボタンに気をとられ、顔なんて見られていないと思う。俺だと解るはずがない。
「あのー、別人だと思いますよ?」
早く腕をほどいてほしい。
どうしたのか、そこまでこだわる理由が解らない。俺は命が惜しいんです。前世でもまだ二十代だったし、今生でもまだ15歳でまだ死にたくない。
怖くて、情けない顔になってる自覚はある。
なのに、更に腕を引っ張られ距離が縮む。
あろう事か、グレース王子は俺の鎖骨辺りに顔を近づけて匂いを嗅いでいる。
まるで、昨日と似たようなシチュエーションになっている。
何をしてるんだ!この王子!
「この香り、やっぱり昨日の奴だ。」
は?匂いで人の違いとか解るもんなのか?
「人違いです。」
グレース王子から距離を取るようにしながら、違うと訴えてみる。
「いや、お前だ。…………………………
この爽やかで甘い香り、そなたは華のようだ。蝶の私は美しい華に、捕らわれる。そなたの瞳に私だけを映して欲しい。」
後半のセリフは何だか自分に酔っているような気がするけど………ゲームでヒロインに言っていたものだ。吐き気がするほど甘く、顔が近い。
てか俺はヒロインじゃないし、引く。
実際、俺は口を大きく開けて呆れていた。
「皆、そういう甘い言葉をかけられるとうっとりするものだろう?」
やっと、顔を離してくれたグレース王子は少しムッと、したように言い放つ。
「それは女性限定です。」
思わず突っ込みをいれてしまった。
グレース王子は、それを嫌がるそぶりも、怒るそぶりもなく妙に納得しているようだった。
「お前は…色々な表情をするな。」
ニヤリと笑われた。
こっちが本性かもしれない。
「あのー、そろそろ腕を、離してもらえないでしょうか?」
「だめだ。お前を気に入ったのは本当だからな。」
「はい?」
「つり目でキツそうな印象を受けるのに、泣きそうになった顔は、嗜虐心をそそられる。」
腕は離されたが、壁に追い詰められグレース王子の腕の中に閉じ込められる。
女子なら黄色い声を出して喜びそうなシチュエーションだが、残念な事に平凡な俺は楽しくない。
「いや、そういうのは遠慮します。」
顔を反らしてお断りする。だがグレース王子は、また顔を近づけて匂いを嗅ぎに来る。
「昨日も思ったが、やっぱり良い香りだ。俺は諦めが悪いんだ。」
ひえぇぇぇ。どうしてこうなった………。
もう断罪された方が楽だったかもしれない。
俺は固まって、半分魂が抜けていた。
と、そんな俺達に声をかけてくる猛者がいた。
「ねぇ、遅刻しちゃうよ。」
ヒューリが声をかけてきた。
あれ?俺より先に出たはずなのに何でいるんだ?
「グレース様も、続きは学園に行ってからにしてみてはいかがですか?遅刻しますよ。」
「あ、あぁ、そう…そう、だな。」
グレース王子は、急に話を振られて戸惑っていた。
もしかして……………助けてくれた?
この流れを無駄にしないためにも、グレース王子の腕の中から抜け出し、ヒューリの方に走っていく。
助かったと、ほっとして少し泣きそうだ。
「ヒューリ、ありがとう。」
「確かに嗜虐心をそそられるな。」
ヒューリはボソボソっと喋ったので聞き取れなかった。
「え?何?」
それさえもシカトされて俺を置いて行ってしまう。
俺、本当に泣きそうなんだけど。
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