52 / 73
49
しおりを挟む
学園中がザワザワしていた。
リビアンが階段から突き落とされて意識がないという情報が、瞬く間に広まっていた。
どうやらリビアンの取り巻きの中の、男子生徒が広めているようだった。
怪我が酷いだとか、光属性で国の保護対象者だから大事だとか、突き落とした犯人を見たとか…。
それを聞いた俺は、心臓が跳ねた。
階段を突き落とされたのなら、酷い怪我なんだと思う。光属性は自分で治せない。なら同じ属性を持っている俺だったら、治せるかもしれない。
そう思い、俺は走り出した。リビアンが運ばれたと思われる救護室へ。
コンコン「先生。」
俺は急いでドアを開けて中に入った。
…のだが、何故だかソフィー先生が、困っているように見えるのは気のせい?
俺に付いてきていたマクビルも、不思議そうな顔をしている。
説明を求めたソフィー先生からは、口元に人差し指を当て廊下に出るように指示された。
廊下に出てやっとソフィー先生は口を開いた。
「あの子の事が心配で来たの?」
「怪我をしているなら、俺でも役に立つかと…。」
はぁ。と、ソフィー先生は深いため息をこぼす。
「長年、救護担当してるから解るんだけど…あの子が階段から突き落とされたと言うのは嘘ね。どこにも怪我が無いのよね。もし、落ちたとしたら不思議な事だらけだわ。」
「え?」
俺は一瞬、思考が固まったと同時に、大怪我が無くてほっとする。
ちょっとまてよ。階段から突き落とされたって…どこかで聞いたような……そうだ。
ゲームでは、入学式の日に起こる出来事じゃなかったか?
テオルドの嫉妬から、リビアンを階段から突き落とし、セレスが助ける…というものだった。
ん?でもソフィー先生は、階段から突き落とされたのは嘘だと………。
リビアンの自作自演?…あり得るかもしれない。
言いふらしていた男子生徒は、犯人を見たと言っていた。その男子生徒もリビアンの仲間?
そして、その犯人は………俺がやった事にされるのか!?
もともと、リビアンはおれの事を良く思っていない。いや、むしろ嫌われているはずなので、俺がやったと言われかねない。
ああぁ、どうしたら良いんだ!
「えーと…ルシオン…何を想像してるのか解らないけど、まず落ち着いてね。」
ん?俺は1人で頭を抱えて、唸っていたらしい。恥ずかしい。
「彼女は元気いっぱいよ。顔色も良いし、下僕を怒鳴っていたしね。今のところ、この事は秘密よ。彼女を泳がせるつもりだから。エルーシ殿下や理事長にも言ってあるわ。」
「…解りました。」
俺達は、真剣な顔で頷く。
リビアンが、これからどう動くのか、ゲームを知っている俺でさえ予想が付かない。
何か、腑に落ちないまま、俺達は教室に戻る事にした。
教室に入ると、人だかりが出来て揉めているようだった。マクビルと顔を見合せ、どうしたのかと近くにいた男子に聞く。
「リビアン嬢を階段から突き落としたのが、テオルド様らしい。近くにいた男子生徒が、現場を目撃したらしいけど。」
と言うことは、あの人だかりの中心にはテオルドがいるのか?
俺は急いで、人混みをかき分け、皆に囲まれキツく言い寄られているテオルドの手を掴み、教室を出た。
しばらく歩いて人気が無くなった頃…
「ルシオン…痛い。」
「あ、うわっ、ごめん。」
俺は、無意識のままテオルドの手を強く掴んでいたようだ。
「……お前は悪くないのに………ああ、ムカつく。」
今まで、テオルドに何かと褒め称えていたり、ちやほやしていた奴らの態度の変わりようにイラついていた。
その俺のイラつきと反対に、テオルドは笑っていた。
「ふふふっ、疑わないのか?」
「俺とルシオンは、アイツらのからくりを知ってる。」
後ろから、のんびり歩いて来ていたマクビルがバラす。
「なーんだ。そっか。」
「はぁ、テオルドがやる訳無いのにさ。」
「俺とルシオンは、事実を知っていてもいなくても、お前を疑わない。」
マクビルは当たり前だと、何でもない事のように言った。
「解ってるよ。」
テオルドも笑顔でさらっと言う。
この2人の絆の深さを見せられて、羨ましくなる。
『美少年と騎士』のツーショットを久々に目の当たりにして、格好いいと見とれていた。
「どうした、ルシオン。」
「何ニヤついてんの?」
マクビルとテオルドは、同時に振り向き俺に話しかける。
そういう所も、息ピッタリで面白い。
「思ったよりテオルドが、元気そうで良かった。」
また同時に、マクビルとテオルドは顔を見合せ、笑い会う。
「ぷっ、ルシオンは可愛いな。」
「お前は、そのままでいてくれ。」
テオルドの心配して、周りのいい加減な奴にイラついていたのが、どうやら杞憂だったらしい。
俺、バカみたいだ。でも安心していた。
またこうやって、テオルドとマクビルと笑い会えるなんて、嬉しい。
リビアンが、これからどうするのか…。
俺が攻撃されるなら平気だが、友人を落とし入れるなら許さない。俺は、そう思った。
リビアンが階段から突き落とされて意識がないという情報が、瞬く間に広まっていた。
どうやらリビアンの取り巻きの中の、男子生徒が広めているようだった。
怪我が酷いだとか、光属性で国の保護対象者だから大事だとか、突き落とした犯人を見たとか…。
それを聞いた俺は、心臓が跳ねた。
階段を突き落とされたのなら、酷い怪我なんだと思う。光属性は自分で治せない。なら同じ属性を持っている俺だったら、治せるかもしれない。
そう思い、俺は走り出した。リビアンが運ばれたと思われる救護室へ。
コンコン「先生。」
俺は急いでドアを開けて中に入った。
…のだが、何故だかソフィー先生が、困っているように見えるのは気のせい?
俺に付いてきていたマクビルも、不思議そうな顔をしている。
説明を求めたソフィー先生からは、口元に人差し指を当て廊下に出るように指示された。
廊下に出てやっとソフィー先生は口を開いた。
「あの子の事が心配で来たの?」
「怪我をしているなら、俺でも役に立つかと…。」
はぁ。と、ソフィー先生は深いため息をこぼす。
「長年、救護担当してるから解るんだけど…あの子が階段から突き落とされたと言うのは嘘ね。どこにも怪我が無いのよね。もし、落ちたとしたら不思議な事だらけだわ。」
「え?」
俺は一瞬、思考が固まったと同時に、大怪我が無くてほっとする。
ちょっとまてよ。階段から突き落とされたって…どこかで聞いたような……そうだ。
ゲームでは、入学式の日に起こる出来事じゃなかったか?
テオルドの嫉妬から、リビアンを階段から突き落とし、セレスが助ける…というものだった。
ん?でもソフィー先生は、階段から突き落とされたのは嘘だと………。
リビアンの自作自演?…あり得るかもしれない。
言いふらしていた男子生徒は、犯人を見たと言っていた。その男子生徒もリビアンの仲間?
そして、その犯人は………俺がやった事にされるのか!?
もともと、リビアンはおれの事を良く思っていない。いや、むしろ嫌われているはずなので、俺がやったと言われかねない。
ああぁ、どうしたら良いんだ!
「えーと…ルシオン…何を想像してるのか解らないけど、まず落ち着いてね。」
ん?俺は1人で頭を抱えて、唸っていたらしい。恥ずかしい。
「彼女は元気いっぱいよ。顔色も良いし、下僕を怒鳴っていたしね。今のところ、この事は秘密よ。彼女を泳がせるつもりだから。エルーシ殿下や理事長にも言ってあるわ。」
「…解りました。」
俺達は、真剣な顔で頷く。
リビアンが、これからどう動くのか、ゲームを知っている俺でさえ予想が付かない。
何か、腑に落ちないまま、俺達は教室に戻る事にした。
教室に入ると、人だかりが出来て揉めているようだった。マクビルと顔を見合せ、どうしたのかと近くにいた男子に聞く。
「リビアン嬢を階段から突き落としたのが、テオルド様らしい。近くにいた男子生徒が、現場を目撃したらしいけど。」
と言うことは、あの人だかりの中心にはテオルドがいるのか?
俺は急いで、人混みをかき分け、皆に囲まれキツく言い寄られているテオルドの手を掴み、教室を出た。
しばらく歩いて人気が無くなった頃…
「ルシオン…痛い。」
「あ、うわっ、ごめん。」
俺は、無意識のままテオルドの手を強く掴んでいたようだ。
「……お前は悪くないのに………ああ、ムカつく。」
今まで、テオルドに何かと褒め称えていたり、ちやほやしていた奴らの態度の変わりようにイラついていた。
その俺のイラつきと反対に、テオルドは笑っていた。
「ふふふっ、疑わないのか?」
「俺とルシオンは、アイツらのからくりを知ってる。」
後ろから、のんびり歩いて来ていたマクビルがバラす。
「なーんだ。そっか。」
「はぁ、テオルドがやる訳無いのにさ。」
「俺とルシオンは、事実を知っていてもいなくても、お前を疑わない。」
マクビルは当たり前だと、何でもない事のように言った。
「解ってるよ。」
テオルドも笑顔でさらっと言う。
この2人の絆の深さを見せられて、羨ましくなる。
『美少年と騎士』のツーショットを久々に目の当たりにして、格好いいと見とれていた。
「どうした、ルシオン。」
「何ニヤついてんの?」
マクビルとテオルドは、同時に振り向き俺に話しかける。
そういう所も、息ピッタリで面白い。
「思ったよりテオルドが、元気そうで良かった。」
また同時に、マクビルとテオルドは顔を見合せ、笑い会う。
「ぷっ、ルシオンは可愛いな。」
「お前は、そのままでいてくれ。」
テオルドの心配して、周りのいい加減な奴にイラついていたのが、どうやら杞憂だったらしい。
俺、バカみたいだ。でも安心していた。
またこうやって、テオルドとマクビルと笑い会えるなんて、嬉しい。
リビアンが、これからどうするのか…。
俺が攻撃されるなら平気だが、友人を落とし入れるなら許さない。俺は、そう思った。
12
あなたにおすすめの小説
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる