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決闘から数日後。
テオルドへの、取り巻き達からの嫌がらせは無くなった。そもそもが、間違いだったのだから。
リビアン関係が絡んでこないと、日常は平和だった。
嫌がらせは無くなったが、陰口はいつもの事なので気にしていない。
だが、あれからグレース王子はリビアンと一緒にいる事は無くなり、反対に俺にべったりになった。
隣のクラスなので、あまり接点もなかったのだが、朝の朝食から、昼休憩、寮での夕飯の時まで何故かグレース王子は隣にいる。
王族は寮に個室を与えられてはいるのだが、公務や警備上の関係で、王城に帰る事が多い。その為、寮で朝食や夕食を取る事は凄く珍しい事なのだ。
それなのに、ここ数日、俺に合わせて寮生活をしている。
「グレース王子、最近は王城へは帰らないんですか?」
俺は、ずっと気になっていた事を聞いてみる。だが、口数が少ないグレース王子は「うむ、帰らない。」と答えるだけ。
この日はヒューリも一緒に、夕食を食べていた。
俺はヒューリと顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
「グレース王子、寮の夕食はいかがですか?創作料理などもあって楽しめると思いますよ。」
さすがヒューリ。話題を振るのが上手だ。俺は基本、のほほんと生活しているから、対話術が出来ないんだよな。
「ああ、色々な味が楽しめて良い。飽きがこないな。」
グレース王子の言葉に王城での暮らしに興味が出る。
「城での夕食って、どんなのが出るんですか?毎日フルコース?」
「そうだな…。味は美味しいが、いつも静かだから、夕食が楽しいとは思った事がないな。」
その言葉に、俺はグレース王子を見つめる。
「そんな顔をするな。お前が居るから、今は楽しいのだから。」
そうだな、俺が可哀想だと思うのは間違っている。ん?俺が居ると楽しい、って………友達って事かな。
グレース王子は、俺を見てにこやかに笑う。俺もつられて笑い返した。何だか調子が狂う。
「そう言えば、グレース王子、被害はありませんか?」
「被害って、どうしたんだ?」
何も知らない俺は、情報通のヒューリに聞く。
「まだ詳しくは解らないんだが……ここ数日男子寮で、眠りにつく時に黒い人影が現れる、という出来事があるらしい。」
「危害はないのか?」
「今のところは。」
「そっか…。グレース王子は大丈夫なんですか?」
「ああ、俺は見て無いな。」
何とも不可思議な出来事だ。魔法で姿を消したり、変化や変身したりは出来るが、それは高度な技術者や熟練の魔術師じゃない限り無理だろう。まだ学生の俺達には、そんな事は出来ない。
しかも危害を加える訳でもなく、人影が現れて消えるだけ…。
うーん。何か喉の奥に引っ掛かって、もやもやする。大事な何かを、忘れているようなもどかしさを覚えた。
「じゃあ、グレース王子お休みなさい。」
夕食が終わり、俺はグレース王子を送るために、部屋の前まで来ていた。
「ルシオン、抱き締めても良い…か?」
グレース王子は俺をじっと見つめてくる。
「え…いや、その…えーと…。」
俺が、なんて言って断ろうかと考えていると、グレース王子は見るからにしょんぼりしてしまった。
ん?この前から、気になっていたんだけど………グレース王子って、大型の犬っぽい?
あれ?まさかのグレース王子が、ワンコ系!?
あまりにも、悲しそうな顔の目グレース王子を目の前にして、可哀想になってくる。
「少しだけなら、良いですよ。」
そのとたん、グレース王子は無表情だが嬉しそうに、俺を抱き締めてきた。
俺よりも背が高いのに、そんなグレース王子が可愛く思えて、背中をトントンと子供をあやすように叩く。
王族として生まれて、威厳を保つため何かと厳しく教育され、もしかしたら寂しかったのかもしれない。そう思うと、廊下だから恥ずかしいとか、誰かに見られたら…と気にしていた事も忘れ、これからは優しくしようと改めて思った。
そしてグレース王子は気がすんだのか、抱き締めていた腕を離し「お休み」とおでこにキスをして、部屋に入っていった。
なにこれ。恥ずかしい。
その後、とうとう黒い人影の被害者が出てしまった。
その被害者はマクビルだった。
生徒会や風紀委員に先に報告が上がった為、俺の元へその情報が来たのは2日後だった。
テオルドの話によると、マクビルは眠りにつくため部屋の明かりを消して、すぐに黒い人影は現れたらしい。
月明かりに照らされたその人影は、マクビルへ手を伸ばし近づいて来て『どうして…』と囁いた。
それだけならまだ良かった。黒い人影はマクビルの腕を掴んで来たのだ。
人影が物体を触れる事に驚いた。
マクビルは捕まれた時に、パチッと静電気のようなひりつく感触があったとか。
危険を察知し、ベッド脇にあった剣で黒い人影を切ると、真っ二つになり霧のように消えたと言う。
部屋の明かりをつけ、捕まれた腕を見てみると、赤黒くアザが残っていたそうだ。
「その後、マクビルは大丈夫なのか?」
その事件からマクビルとは会っていない。
「うーん。体は大丈夫なんだけど…。何て言ったら良いのかな。…ぼーっとしてる事が多くなったと言うか…。」
テオルドは要領を得ない感じで、言い淀んだ。
どうしたんだろうか…。
テオルドへの、取り巻き達からの嫌がらせは無くなった。そもそもが、間違いだったのだから。
リビアン関係が絡んでこないと、日常は平和だった。
嫌がらせは無くなったが、陰口はいつもの事なので気にしていない。
だが、あれからグレース王子はリビアンと一緒にいる事は無くなり、反対に俺にべったりになった。
隣のクラスなので、あまり接点もなかったのだが、朝の朝食から、昼休憩、寮での夕飯の時まで何故かグレース王子は隣にいる。
王族は寮に個室を与えられてはいるのだが、公務や警備上の関係で、王城に帰る事が多い。その為、寮で朝食や夕食を取る事は凄く珍しい事なのだ。
それなのに、ここ数日、俺に合わせて寮生活をしている。
「グレース王子、最近は王城へは帰らないんですか?」
俺は、ずっと気になっていた事を聞いてみる。だが、口数が少ないグレース王子は「うむ、帰らない。」と答えるだけ。
この日はヒューリも一緒に、夕食を食べていた。
俺はヒューリと顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。
「グレース王子、寮の夕食はいかがですか?創作料理などもあって楽しめると思いますよ。」
さすがヒューリ。話題を振るのが上手だ。俺は基本、のほほんと生活しているから、対話術が出来ないんだよな。
「ああ、色々な味が楽しめて良い。飽きがこないな。」
グレース王子の言葉に王城での暮らしに興味が出る。
「城での夕食って、どんなのが出るんですか?毎日フルコース?」
「そうだな…。味は美味しいが、いつも静かだから、夕食が楽しいとは思った事がないな。」
その言葉に、俺はグレース王子を見つめる。
「そんな顔をするな。お前が居るから、今は楽しいのだから。」
そうだな、俺が可哀想だと思うのは間違っている。ん?俺が居ると楽しい、って………友達って事かな。
グレース王子は、俺を見てにこやかに笑う。俺もつられて笑い返した。何だか調子が狂う。
「そう言えば、グレース王子、被害はありませんか?」
「被害って、どうしたんだ?」
何も知らない俺は、情報通のヒューリに聞く。
「まだ詳しくは解らないんだが……ここ数日男子寮で、眠りにつく時に黒い人影が現れる、という出来事があるらしい。」
「危害はないのか?」
「今のところは。」
「そっか…。グレース王子は大丈夫なんですか?」
「ああ、俺は見て無いな。」
何とも不可思議な出来事だ。魔法で姿を消したり、変化や変身したりは出来るが、それは高度な技術者や熟練の魔術師じゃない限り無理だろう。まだ学生の俺達には、そんな事は出来ない。
しかも危害を加える訳でもなく、人影が現れて消えるだけ…。
うーん。何か喉の奥に引っ掛かって、もやもやする。大事な何かを、忘れているようなもどかしさを覚えた。
「じゃあ、グレース王子お休みなさい。」
夕食が終わり、俺はグレース王子を送るために、部屋の前まで来ていた。
「ルシオン、抱き締めても良い…か?」
グレース王子は俺をじっと見つめてくる。
「え…いや、その…えーと…。」
俺が、なんて言って断ろうかと考えていると、グレース王子は見るからにしょんぼりしてしまった。
ん?この前から、気になっていたんだけど………グレース王子って、大型の犬っぽい?
あれ?まさかのグレース王子が、ワンコ系!?
あまりにも、悲しそうな顔の目グレース王子を目の前にして、可哀想になってくる。
「少しだけなら、良いですよ。」
そのとたん、グレース王子は無表情だが嬉しそうに、俺を抱き締めてきた。
俺よりも背が高いのに、そんなグレース王子が可愛く思えて、背中をトントンと子供をあやすように叩く。
王族として生まれて、威厳を保つため何かと厳しく教育され、もしかしたら寂しかったのかもしれない。そう思うと、廊下だから恥ずかしいとか、誰かに見られたら…と気にしていた事も忘れ、これからは優しくしようと改めて思った。
そしてグレース王子は気がすんだのか、抱き締めていた腕を離し「お休み」とおでこにキスをして、部屋に入っていった。
なにこれ。恥ずかしい。
その後、とうとう黒い人影の被害者が出てしまった。
その被害者はマクビルだった。
生徒会や風紀委員に先に報告が上がった為、俺の元へその情報が来たのは2日後だった。
テオルドの話によると、マクビルは眠りにつくため部屋の明かりを消して、すぐに黒い人影は現れたらしい。
月明かりに照らされたその人影は、マクビルへ手を伸ばし近づいて来て『どうして…』と囁いた。
それだけならまだ良かった。黒い人影はマクビルの腕を掴んで来たのだ。
人影が物体を触れる事に驚いた。
マクビルは捕まれた時に、パチッと静電気のようなひりつく感触があったとか。
危険を察知し、ベッド脇にあった剣で黒い人影を切ると、真っ二つになり霧のように消えたと言う。
部屋の明かりをつけ、捕まれた腕を見てみると、赤黒くアザが残っていたそうだ。
「その後、マクビルは大丈夫なのか?」
その事件からマクビルとは会っていない。
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