ＤＥＡＴＨＧＡＭＥ～裏切りと信念の姫～

一章

疑心暗鬼

　一度話し合いをしようとカナクニ先生達を呼びに行く。どうやら酒場を探索していたらしい。
「おや？どうしたのですか？」
　ボク達に気付いたカナクニ先生は声をかけてきた。
「一度集まって話し合いをしませんか？」
　スズエさんが言うと、「分かりました」とほかの人にも声をかけた。
　ロビーに集まり、話し合いをする。
「何か分かったことがあるー？」
　ケイさんの質問に答えたのはスズエさんだった。
「私達はめぼしいものを見つけられませんでしたね」
「私の方も見つけられませんでした」
　カナクニ先生も、首を横に振った。
　何も手掛かりがないとなると、どうしようもない。全員で考え込むと、
「もう一度、モニター室を確認しますか？もしかしたら何か分かるかも」
「そうだねー……スズちゃんが言うなら、それでもいいかもねー」
「でも、一度は見たんでしょう？」
　ハナさんがそう言うけど、「確かに見ましたけど、もしかしたらまだ何か見つかるかもしれませんから」とスズエさんは答えた。
「……スズ、大丈夫なのか？」
　シルヤ君がスズエさんに尋ねる。その瞳は不安げで、心配しているのが見て分かった。
「大丈夫、危ないことはないよ」
　スズエさんは小さく微笑む。無表情ながらも彼を気遣っているのが分かった。それだけ、二人が信頼しあっているということでもある。
「それじゃあ、俺とスズちゃんでモニター室に行こうかー」
「あ、すみません。ユウヤさんも一緒にどうですか？」
　突然話を振られ、ボクは目を丸くする。
「え、ボク？」
「さっき、一緒に探索しましたから。もしかしたらわずかな違いも見つけられると思って」
「そう言うことなら、ユウヤも一緒に行こうかー」
　ケイさんにも言われてボクは考え込む。
　――スズエさんは何かを隠してる……？
　普段の彼女は知らない。それでも……どこか、おかしい気がする。
「……そう、だね。ボクも行こうかな？」
　ボクが頷くと、「それじゃ、行こうかー」と歩き出そうとする。
　その時だった、足音が聞こえてきたのは。
「あらあらー、頑張っていますねぇ」
　女性の声だ。バッと振り返るとそこにはニコニコを笑っている女性がいた。……笑顔を浮かべているというのに、どこか感情がなくて不気味に見える。
「きさん、何もんじゃ？」
　ゴウさんが尋ねると、目の前の女性は「フフフ」と笑いながら答えた。
「アタシはルイスマ。この階のフロアマスターです」
「ふろあ、ますたー？」
　これまた謎の人物のご登場だ。一体何をさせようと言うのか。
　目の前の女性はクスクスをあざ笑うかのようだ。
「さぁ、始めましょう。本当の「デスゲーム」を」
　その宣言に、ボク達は顔を見合わせる。デスゲームなんて、するわけがない。
「この中に裏切り者がいます！その裏切り者を探してください！
　その裏切り者を見つけない限り、あなた達はここから出られません」
　しかしその言葉に、空気が一気に凍り付いた。
　裏切り、者？敵側がこの中にいると言うのか？
　さすがのスズエさんやケイさんも黙り込んでしまっていた。紫色の髪の少女に至っては怯え切ってしまっていた。それを見て満足したのか、ルイスマは「では、頑張ってくださいねー！」と去って行ってしまった。
　空間に漂うのは不安と本当に相手が信頼できるのかという疑心。静かな空気だけが場を包み込んだ。
「ニャ……姉ちゃん……」
　そんな中、フウ君がスズエさんの裾を握った。
「フウ……」
「怖い、ニャ……」
　涙を浮かべている彼に、スズエさんはしゃがみ込んで頭を撫でた。
「大丈夫だよ、フウ。守ってあげるから」
　優しく笑うスズエさんにシルヤ君も「そうだぜ、フウ」と微笑んだ。
　しかしその瞳に寂しさが宿っている気がした。