16 / 61
二章
白い部屋で起こったことは何?
しおりを挟む
階段の先にも扉が二つあった。片方に入ると、そこは温泉らしく謎の生物のぬいぐるみ?が置かれていた。
スズエさんがそれに近付くと、なんの抵抗もなく握った。
「…………」
何か言った気がするけど、聞こえてくることはなかった。
温泉をどんなに調べても何も見つからず、もう一つの部屋に入ってみることにした。
もう一つの部屋は真っ白で、何もなかった。……そのハズ、なのにどこか不気味な部屋だ。横を見ると、スズエさんが顔を青くしていた。
「……どうしたの?」
スズエさんに尋ねると、「あぁ、いえ……」と何かを考え込んだ後、
「……なんか、血のにおい?がするんですよね……ここで誰か殺されたような……」
そう言われ、あぁ、なるほどとボクも納得した。
一瞬、部屋に血が飛び散っているところが見えた気がした。
「…………ねぇ、ユウヤさん」
スズエさんがボクの腕を掴んで部屋の外に出る。どうしたのだろうと思うと、階段の下まで来てボクの方に振り返った。
「……気付きました?」
「え、何が?」
突然話を振られ、首を傾げてしまう。そんなボクに彼女はわずかに震えながら答えた。
「……あの、男子高校生が映っていた部屋ですよ」
「え……?」
「あそこで誰かが死んだのは確実でしょうね」
壁にもたれながら、スズエさんは呟く。ボクもその隣に立ち、聞いてみることにした。
「なんで気付いたの?」
その質問にスズエさんは寂しげにしながら、
「……嫌でも分かっちゃうんですよ、私の瞳は、ね……」
それだけ、答えた。
――祈療姫。
かつて存在したという、ボクが住んでいた村に伝わる巫女の話。そんな巫女の血を、スズエさんは引いている。
「……ねぇ、スズエさん。君の瞳には、何が映っているの?」
気付けば、ボクはそう聞いていた。
「……そうですね。絶望と、黒い闇、ですかね」
そう告げる彼女の瞳の奥には、黒いものが渦巻いていた。
少しして、放送が流れる。
『参加者の皆さんは三階に上がってください』
「……調べ残しがなければ行きましょうか」
それを聞いてスズエさんが姿勢を正す。そして歩きだそうとする彼女の後ろ姿を見てボクは思わずその腕を掴んでしまった。
「どうしました?」
スズエさんが驚いたように目を見開き、ボクの方を見ていた。
「……スズエさん」
「なんですか?」
「無茶だけは、しないでね」
思ったより弱弱しい声が出て自分でも驚いた。彼女は少し考え込み、
「……えぇ、ありがとうございます」
ただ、お礼を言ってくれるだけだった。
スズエさんがそれに近付くと、なんの抵抗もなく握った。
「…………」
何か言った気がするけど、聞こえてくることはなかった。
温泉をどんなに調べても何も見つからず、もう一つの部屋に入ってみることにした。
もう一つの部屋は真っ白で、何もなかった。……そのハズ、なのにどこか不気味な部屋だ。横を見ると、スズエさんが顔を青くしていた。
「……どうしたの?」
スズエさんに尋ねると、「あぁ、いえ……」と何かを考え込んだ後、
「……なんか、血のにおい?がするんですよね……ここで誰か殺されたような……」
そう言われ、あぁ、なるほどとボクも納得した。
一瞬、部屋に血が飛び散っているところが見えた気がした。
「…………ねぇ、ユウヤさん」
スズエさんがボクの腕を掴んで部屋の外に出る。どうしたのだろうと思うと、階段の下まで来てボクの方に振り返った。
「……気付きました?」
「え、何が?」
突然話を振られ、首を傾げてしまう。そんなボクに彼女はわずかに震えながら答えた。
「……あの、男子高校生が映っていた部屋ですよ」
「え……?」
「あそこで誰かが死んだのは確実でしょうね」
壁にもたれながら、スズエさんは呟く。ボクもその隣に立ち、聞いてみることにした。
「なんで気付いたの?」
その質問にスズエさんは寂しげにしながら、
「……嫌でも分かっちゃうんですよ、私の瞳は、ね……」
それだけ、答えた。
――祈療姫。
かつて存在したという、ボクが住んでいた村に伝わる巫女の話。そんな巫女の血を、スズエさんは引いている。
「……ねぇ、スズエさん。君の瞳には、何が映っているの?」
気付けば、ボクはそう聞いていた。
「……そうですね。絶望と、黒い闇、ですかね」
そう告げる彼女の瞳の奥には、黒いものが渦巻いていた。
少しして、放送が流れる。
『参加者の皆さんは三階に上がってください』
「……調べ残しがなければ行きましょうか」
それを聞いてスズエさんが姿勢を正す。そして歩きだそうとする彼女の後ろ姿を見てボクは思わずその腕を掴んでしまった。
「どうしました?」
スズエさんが驚いたように目を見開き、ボクの方を見ていた。
「……スズエさん」
「なんですか?」
「無茶だけは、しないでね」
思ったより弱弱しい声が出て自分でも驚いた。彼女は少し考え込み、
「……えぇ、ありがとうございます」
ただ、お礼を言ってくれるだけだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/15:『ちいさなむし』の章を追加。2025/12/22の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる