DEATHGAME~裏切りと信念の姫~

ひいらぎななみ

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二章

少女の名前

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「ねぇ」
 後ろから声をかけられ、ボクとスズエさんはビクッと震える。恐る恐る振り返ると、ケイさんが立っていた。
「遅かったから来たんだけど……お邪魔だったかなー?」
 からかうようなその言葉にスズエさんが「そんなわけないでしょう?」とため息をついた。
「ただ、ちょっと……ね」
 そして机の上のDVDをチラッと見る。それに気付いたケイさんに「それはー?」と聞かれ、ボクが事情を説明する。すると彼もそれを見始めた。
「……なるほどねー。本気で殺されるかもしれない、かー……」
 そう呟き、彼は考え込む。そして「とりあえず、合流しようかー」とケイさんは告げた。
 そのまま、みんなのところに行くとマミさんが「スズエ、少しいいか?」と声をかけた。
「はい、大丈夫ですよ」
「ありがとう」
 スズエさんが頷くと、マミさんは話し出す。
 どうやら紫色の髪の少女はキナちゃん、というらしい。どうやら目の前で姉が殺されたようで、自分も殺されるのではないかと恐怖でいっぱいだったらしい。
「そうですか……」
 それを聞いたスズエさんはキナちゃんの前に座って「大丈夫だよ、私が守ってあげるからね」と優しく告げた。キナちゃんはスズエさんの方を見て、少しだけ安心した表情を浮かべた。
「……ナナミお姉ちゃん……」
 きっと、お姉さんの名前だろう。少女が呟くとスズエさんが目を丸くした。
「え、ナナミって……もしかして佐藤 菜々美か?」
「は、はい……そうですけど……」
「そうか……君はナナミの妹さんだったんだな」
「あの、お姉ちゃんを知っているんですか?」
 確かに、口ぶりからして知り合いのようだけれど……。
「あぁ、中学の時の後輩なんだ。同じ剣道部で、慕ってくれていたんだ」
「そう、だったんだ……」
 まさかそんな関係性があったなんて思っていなかった。スズエさんは少し考え込み、キナちゃんの隣に座り直した。
「ナナミはいつも、妹の話をしていたんだ」
「え……?」
 急に話し出す彼女に、キナちゃんは目を丸くする。
「本当に妹のことが大好きでさ、剣道部に入ったのも妹を守るためだって話していた」
「……お姉ちゃんが……」
「……いい姉を持ったと思うよ、キナは。ほかの人が耐えられなかった私の課した練習にも必死についてきていたからね」
「どんな厳しい練習を課していたんですか……」
 スズエさんの話を聞いていたキナちゃんが初めて笑う。それを見て、スズエさんも優しく微笑んだ。
「ようやく笑ったね」
「え、あ……」
「そうやって笑っていた方が、ナナミもうれしいと思うよ」
 その言葉を聞いて、キナちゃんは小さく頷いた。
 

 少しして、二階に上がる階段があることに気付く。顔を見合わせ、「……行くしかない、ですか」とカナクニ先生が呟いた。
 階段を上がろうとすると、マミさんが「スズエ」と小さな声で呼んだ。
「その、ありがとう。キナを笑わせてくれて……あたしじゃ出来なかったから」
「いえ、たまたまお姉さんのことを知っていたからですよ」
 そんな会話が聞こえてくる。マミさんなりにキナちゃんを気遣っていたのだろう、それはスズエさんだって分かっている。
「早く行きましょうか」
「……あぁ」
 少女が告げると、マミさんも頷いて階段を上がった。
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