ＤＥＡＴＨＧＡＭＥ～裏切りと信念の姫～

三章

死のミニゲームの始まり

　三階に上がると、ホテルのロビーのような空間が広がった。
「こ、ここは……？」
　キナちゃんがスズエさんの腕をギュッと握りながら呟く。彼女は安心させるようにキナちゃんの手に自分の手を重ねながら、周囲を見た。
「……ここ自体に違和感は無いけど……」
「おーおー、生きててよかったぜ」
　少年のような声が聞こえ、そちらを見るとオレンジ髪の、統一感のない服装をしている少年と水色の髪の女性が立っていた。
「今からお前らにはミニゲームをしてもらうぞー」
　少年の言葉に顔を見合わせる。何をするというのだろうか……？
「あ、オレはナシカミ、こっちはシナムキだ」
　少年が名乗ると、隣にいた女性は小さく頭を下げる。立場としては少年の方が上なのかもしれない。
「そ、その……もう一人、フロアマスターがおりまして……も、モリナ、と言うのですが……」
　シナムキの出した名前にエレンさんが一瞬、顔をしかめる。
「明日から、チップを集めてもらうぞー。だから今日は自分の部屋に戻れー」
　ナシカミのその言葉に従うしかなく、ボク達は自分の名前が書かれている部屋に入った。

　……眠れない。
　ベッドで横になっていても、ボクは寝ることが出来ず起き上がる。不安な心を紛らわせようと部屋から出ると、スズエさんがソファーで本を読んでいるのが見えた。
「スズエさん」
「あ、ユウヤさん」
　声をかけると、スズエさんは顔をあげてボクの方を見た。
「何を読んでるの？」
　彼女が読んでいる本を覗き込むと、かなり難しい研究書だった。
「これですか？脳関係の研究書ですね。特に記憶関係が書かれていますよ」
「そうなんだ……理解出来るの？」
「えぇ、ある程度なら分かりますよ」
　そう言いながらスズエさんもボクがよく見えるようにその本を見せた。
「……こんな難しいの、よく分かるね」
「もともと研究者の娘ですから」
　そう言えばそうだった。目の前の彼女は有名な研究者だった「森岡　謙治郎」と「森岡　香江子」の孫娘でもある。これぐらいなら分かるのかもしれない。
「……記憶関係と感情関係、ねぇ……確かに祖父母が研究していたものだけど」
　考え込むように固い顔をする彼女を見て何かあっただろうか、とボクも首を傾げてしまった。それに気付いたのか、「あぁ、何でもないですよ」と安心させるように微笑んでくれた。あまり触れられてほしくないのだろう、それ以上は何も聞けなかった。

　次の日、再びロビーに集められたボク達はナシカミにミニゲームについて説明された。
「お前らには今日からミニゲームをしてもらうぞー。あ、身構えなくてもお前らがよく知っているゲームだ」
　そんなことを言われても、こちらとしては信用出来ない。その空気を感じ取ったのか、ナシカミはケラケラと笑いだした。
「子供でも分かるやつだぞー？そんな調子で出来んのか？」
　馬鹿にするようなその言葉に少しいら立ちを覚えるけど、逆らってもいいことはない。ボク達はナシカミとシナムキに連れられ、ゲーム場に向かった。