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三章
鬼ごっこ
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「本当はペアでやってもらうつもりだったが、特別ルールだ。全員でチップを集めてもらうぞー」
相変わらずニコニコしながらナシカミが言う。……かなり広いけど、一体何をさせようと言うのだろうか?
「まずは鬼ごっこだ。簡単だろ?」
しかし身構えていたのが馬鹿らしくなるほど、よく知っている遊びを言われ脱力してしまう。
「捕まったら死ぬからなー」
でも続いた言葉に、ボク達はまた動きを止めた。
ナシカミが指を鳴らすと、鬼が出てきた。――それは明らかに、人間とも知っている動物とも言えなかった。
「……キメラ、ですかね」
スズエさんが呟く。なるほど、確かに人間とほかの生き物の混同種と言われた方が納得できる。
「参加者は二人だ。どうする?」
そう聞かれ、ボク達は顔を見合わせる。……死ぬかもしれない、となると子供であるフウ君と女性陣は難しい。シルヤ君も、少し厳しいところがあるだろう。カナクニ先生も、申し訳ないけれど体力があるとは思えない。
そうなると、残るのはボクとエレンさん、ケイさん、ミヒロさん、ゴウさんだ。
「……ワシが行くぜよ」
ゴウさんが手をあげる。確かに、野球選手なら体力勝負も出来るだろう。
「俺も行けるよー」
ケイさんもいつもの軽い口調で告げる、……でも、彼ならきっとやってくれるだろう。
「……それなら、お願いします」
スズエさんもそう思ったのか、頭を下げて頼み込んだ。
二人が場内に入ると、「決まったな」とナシカミがニヤリと笑う。
「それじゃあ、始めるぞ!制限時間は十五分だ」
その言葉とともに、タイマーが響き渡る。すると怪物が動き出した。
怪物は意外と素早く、気を抜けばすぐに捕まってしまいそうだ。
「おっと、危ないねー」
ケイさんは軽々と怪物の手から逃れている。ゴウさんも、距離を取りながら体力を出来る限り消耗しないように動いているのが分かる。
――これなら、簡単に行けるかもしれない。
残り時間が一分を切り、そう思っていると突然ケイさんがふらついた。
「おっと――」
少し高いところにいたからか、彼はそのまま滑り落ちてしまう。落下した衝撃で動けずにいると、怪物が彼を捕まえようと腕を伸ばす。
「やばっ」
ケイさんが珍しく、顔を青くした。もう少しで怪物がタッチしようというところで、突然はじかれたように怪物の腕が跳ねた。
「……え?」
何が起こったのか分からず、呆然としている間にタイマーが止まる。
「チッ、成功か……まぁいい。ここで死なれても困るからな」
ナシカミが舌打ちをする。……二人が無事であることは本当によかったのだけど。
(スズエさん……今、何かした?)
そう、ケイさんが落ちた時……スズエさんの口が少しだけ動いた気がした。
「大丈夫ですか?」
エレンさんがケイさんに近付く。彼は相変わらず「大丈夫だよー」と軽く言い切るが、わずかにその腕が震えていた。
「それじゃあ、次は明日だ。それまでゆっくりしてろよー」
ナシカミがそう言って、どこかに行ってしまった。
夜、ソファに座っているとスズエさんが「あ、まだ起きていたんですね」と声をかけてきた。
「うん。眠れなくてね……」
「アハハ……私もそんな感じです」
隣に座る彼女を見ていると、やはりどこかおかしいことはない。
「……ねぇ、スズエさん」
それでも、聞きたくなった。
「なんですか?」
「さっきのあのミニゲームの時……何か、したの?」
その質問に、スズエさんは目を丸くする。そして、
「まさか、何もするわけないじゃないですか」
そう、答えた。
――でも、どこか違和感を覚えてしまう。一体、なんなのだろうか?
相変わらずニコニコしながらナシカミが言う。……かなり広いけど、一体何をさせようと言うのだろうか?
「まずは鬼ごっこだ。簡単だろ?」
しかし身構えていたのが馬鹿らしくなるほど、よく知っている遊びを言われ脱力してしまう。
「捕まったら死ぬからなー」
でも続いた言葉に、ボク達はまた動きを止めた。
ナシカミが指を鳴らすと、鬼が出てきた。――それは明らかに、人間とも知っている動物とも言えなかった。
「……キメラ、ですかね」
スズエさんが呟く。なるほど、確かに人間とほかの生き物の混同種と言われた方が納得できる。
「参加者は二人だ。どうする?」
そう聞かれ、ボク達は顔を見合わせる。……死ぬかもしれない、となると子供であるフウ君と女性陣は難しい。シルヤ君も、少し厳しいところがあるだろう。カナクニ先生も、申し訳ないけれど体力があるとは思えない。
そうなると、残るのはボクとエレンさん、ケイさん、ミヒロさん、ゴウさんだ。
「……ワシが行くぜよ」
ゴウさんが手をあげる。確かに、野球選手なら体力勝負も出来るだろう。
「俺も行けるよー」
ケイさんもいつもの軽い口調で告げる、……でも、彼ならきっとやってくれるだろう。
「……それなら、お願いします」
スズエさんもそう思ったのか、頭を下げて頼み込んだ。
二人が場内に入ると、「決まったな」とナシカミがニヤリと笑う。
「それじゃあ、始めるぞ!制限時間は十五分だ」
その言葉とともに、タイマーが響き渡る。すると怪物が動き出した。
怪物は意外と素早く、気を抜けばすぐに捕まってしまいそうだ。
「おっと、危ないねー」
ケイさんは軽々と怪物の手から逃れている。ゴウさんも、距離を取りながら体力を出来る限り消耗しないように動いているのが分かる。
――これなら、簡単に行けるかもしれない。
残り時間が一分を切り、そう思っていると突然ケイさんがふらついた。
「おっと――」
少し高いところにいたからか、彼はそのまま滑り落ちてしまう。落下した衝撃で動けずにいると、怪物が彼を捕まえようと腕を伸ばす。
「やばっ」
ケイさんが珍しく、顔を青くした。もう少しで怪物がタッチしようというところで、突然はじかれたように怪物の腕が跳ねた。
「……え?」
何が起こったのか分からず、呆然としている間にタイマーが止まる。
「チッ、成功か……まぁいい。ここで死なれても困るからな」
ナシカミが舌打ちをする。……二人が無事であることは本当によかったのだけど。
(スズエさん……今、何かした?)
そう、ケイさんが落ちた時……スズエさんの口が少しだけ動いた気がした。
「大丈夫ですか?」
エレンさんがケイさんに近付く。彼は相変わらず「大丈夫だよー」と軽く言い切るが、わずかにその腕が震えていた。
「それじゃあ、次は明日だ。それまでゆっくりしてろよー」
ナシカミがそう言って、どこかに行ってしまった。
夜、ソファに座っているとスズエさんが「あ、まだ起きていたんですね」と声をかけてきた。
「うん。眠れなくてね……」
「アハハ……私もそんな感じです」
隣に座る彼女を見ていると、やはりどこかおかしいことはない。
「……ねぇ、スズエさん」
それでも、聞きたくなった。
「なんですか?」
「さっきのあのミニゲームの時……何か、したの?」
その質問に、スズエさんは目を丸くする。そして、
「まさか、何もするわけないじゃないですか」
そう、答えた。
――でも、どこか違和感を覚えてしまう。一体、なんなのだろうか?
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