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四章
怪物との戦闘
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アイトの背中を見送った後、スズエさんが「……とりあえず、話し合いをしますか」と頭を掻いた。
「そうだねー。まずは知っている情報を出し合おうかー」
ケイさんの言葉にタカシさんが「あー、なんか怪物?が襲ってくるってよ」と答えた。
「な、謎を解きながら怪物と戦わないといけない、って聞いたけど……」
「それに、ちょっとしたゲームもするって!」
続けてレントさんとマイカさんが話をした。怪物って……多分二階で出てきたあのキメラだろう。
「そっちは?何か知っていることがあるんじゃないの?」
レイさんがジロッとこちらを見る。何か見透かされているようで、緊張してしまう。
「……例えば?」
そんな中、スズエさんも彼の瞳をジッと見て尋ねた。よく堂々と出来るな……なんて思ってしまう。
「何でもいいよ。見つけたものでも、気になるものでも」
「そうですか……では、そこの壁を蹴ってみてください」
レイさんの言葉にスズエさんはそんなことを言い出す。首を傾げながら、彼が言われた通り壁を強く蹴った。
――そこから出てきたのは、拳銃だった。
「……え?」
さすがのレイさんも、目を丸くしていた。なんで拳銃があるなんて分かっていたのだろう?
「護身用にちょうどいいでしょう?」
「……使えるの?」
ニヤリと笑うスズエさんを疑うようにレイさんは見ていた。それなら貸して、と彼から拳銃を受け取り、目の前でメンテナンスし始めた。そして、
「ちゃんと使えますよ。どうぞ」
そのまま拳銃を返した。
「……俺が言うことじゃないと思うけど、よく武器になるものを渡せるね?何を企んでるの?」
そんな彼女を訝しげに見ている彼は困惑しているようだ。
確かに、拳銃を渡されたのだから自分で持つか、信用出来る人に渡すものだろう。
「……別に。さっきも言ったように護身用に使えばいいんじゃないですか?」
……スズエさんって、こんなに冷たかった?
ふと、そう思った。スズエさんはもう少し優しくて、温かい人だった気がするのに……。
「スズちゃん、なんかツンツンしてるー?」
ケイさんも思ったらしく、彼女に尋ねるけど「そんなことないと思いますが」と言われるだけだった。その様子をエレンさんとシルヤ君が不安げに見ている。
「そう?なんかあったら言っていいんだよー?」
ケイさんの言葉にも「何もないですって」とため息をつくだけ。どうしたのだろう……?
その時だった、足音が聞こえてきたのは。振り返ると、怪物が大きな斧を持って襲い掛かってこようとしていた。それを確認したと同時にスズエさんはキナちゃんとフウ君、ナコちゃんを後ろに隠す。
「す、スズエさん……」
「大丈夫、絶対守ってみせるから」
キナちゃんが涙を浮かべながら震えていると、その頭を撫でて怪物の方を向いた。
「……弱点が隠れてる……ちょっと面倒だな……」
スズエさんが分析しているうちにボクも周囲を確認する。
あるのは松明ぐらいだ。使えるかもしれないけど、それなら狐火を使う方が楽だ。
次に怪物の方を見る。……全身に包帯が巻かれていて恐らく音とにおいでこちらを認識していると思われる。
「嗅覚か聴覚をつぶしたいところですけど……」
スズエさんも同じことを思ったようで、呟く声が聞こえた。
「身動きできなくしたらいいんじゃないかな?」
レイさんが言うと、「どうやってですか?」と彼女は尋ねる。
「転ばせることは……難しいか」
「転ばせる……いいかもしれないですね。でもどちらにしろ弱点を見つけないことには……」
そこまで言って、「いや、そうか」と何か納得したような声を出した。そして、
「少し離れててください」
そう言って、スズエさんは怪物に向かって走り出す。「スズ!?」とシルヤ君が止める前にスライディングして、自身の足を怪物に引っ掛けた。
ドシンッと怪物が転ぶ。少し包帯がほどけたようで中が見えていた。
「やっぱり……頭が弱点です!」
それを見て、スズエさんはボク達に叫ぶ。なるほど、だから包帯で隠されていたのか。
それなら、ボクの出番だ。ボクが手をかざし、狐火を出す。
「燃やし尽くせ」
そのまま、頭に向かって放つと包帯が燃えた。見えた頭部から赤い光が漏れ出ている。
「あれが弱点みたいだな」
タカシさんが言うと同時に、怪物が起き上がる。
奴はユミさんの方を見ていた。嫌な予感がする……。
そういう嫌な予感ほどよくあたってしまうものだ。怪物はユミさんに襲いかかった。
「ちょ、待って……!」
ユミさんは必死に抵抗していたけど、女性の力では限界がある。アイトが入っていた棺まで押されて、入りそうになった時、
「危ない!」
スズエさんがユミさんの腕を掴み、ドンッとボク達の方に突きとばした。その衝撃でスズエさんがバランスを崩し、棺に入ってしまう。
「……え……?」
怪物がそのまま、棺を閉めてしまった。その途端、スズエさんがパニックになる。
「い、いや!出して!暗いの嫌なのっ!」
ドンドンと必死に叩いているのが分かる。そんなことはお構いなしに、怪物は斧を振り上げた。
「誰か……助けて……おにい、ちゃん……」
「……っ」
その小さな懇願の声に、真っ先に動いたのはエレンさんだった。斧を振り落とされる直前、
「スズエをこれ以上……傷つけないでくださいっ!」
彼は持っていたフライパンで、怪物の頭を殴った。その強い衝撃で怪物は倒れる。
エレンさんが棺を開けると、涙を浮かべているスズエさんが目を丸くしていた。
「大丈夫ですか?」
「えれ、さん……なんで……?」
起き上がらせようと手を差し出す彼に涙を拭いながら彼女は尋ねた。強く叩きすぎたのか、スズエさんの手からは血が出ていた。
なんで、と聞かれた本人は小さく微笑みながら少女の涙を拭う。
「当然でしょう。私はあなたの「兄」なんですから」
「そうだねー。まずは知っている情報を出し合おうかー」
ケイさんの言葉にタカシさんが「あー、なんか怪物?が襲ってくるってよ」と答えた。
「な、謎を解きながら怪物と戦わないといけない、って聞いたけど……」
「それに、ちょっとしたゲームもするって!」
続けてレントさんとマイカさんが話をした。怪物って……多分二階で出てきたあのキメラだろう。
「そっちは?何か知っていることがあるんじゃないの?」
レイさんがジロッとこちらを見る。何か見透かされているようで、緊張してしまう。
「……例えば?」
そんな中、スズエさんも彼の瞳をジッと見て尋ねた。よく堂々と出来るな……なんて思ってしまう。
「何でもいいよ。見つけたものでも、気になるものでも」
「そうですか……では、そこの壁を蹴ってみてください」
レイさんの言葉にスズエさんはそんなことを言い出す。首を傾げながら、彼が言われた通り壁を強く蹴った。
――そこから出てきたのは、拳銃だった。
「……え?」
さすがのレイさんも、目を丸くしていた。なんで拳銃があるなんて分かっていたのだろう?
「護身用にちょうどいいでしょう?」
「……使えるの?」
ニヤリと笑うスズエさんを疑うようにレイさんは見ていた。それなら貸して、と彼から拳銃を受け取り、目の前でメンテナンスし始めた。そして、
「ちゃんと使えますよ。どうぞ」
そのまま拳銃を返した。
「……俺が言うことじゃないと思うけど、よく武器になるものを渡せるね?何を企んでるの?」
そんな彼女を訝しげに見ている彼は困惑しているようだ。
確かに、拳銃を渡されたのだから自分で持つか、信用出来る人に渡すものだろう。
「……別に。さっきも言ったように護身用に使えばいいんじゃないですか?」
……スズエさんって、こんなに冷たかった?
ふと、そう思った。スズエさんはもう少し優しくて、温かい人だった気がするのに……。
「スズちゃん、なんかツンツンしてるー?」
ケイさんも思ったらしく、彼女に尋ねるけど「そんなことないと思いますが」と言われるだけだった。その様子をエレンさんとシルヤ君が不安げに見ている。
「そう?なんかあったら言っていいんだよー?」
ケイさんの言葉にも「何もないですって」とため息をつくだけ。どうしたのだろう……?
その時だった、足音が聞こえてきたのは。振り返ると、怪物が大きな斧を持って襲い掛かってこようとしていた。それを確認したと同時にスズエさんはキナちゃんとフウ君、ナコちゃんを後ろに隠す。
「す、スズエさん……」
「大丈夫、絶対守ってみせるから」
キナちゃんが涙を浮かべながら震えていると、その頭を撫でて怪物の方を向いた。
「……弱点が隠れてる……ちょっと面倒だな……」
スズエさんが分析しているうちにボクも周囲を確認する。
あるのは松明ぐらいだ。使えるかもしれないけど、それなら狐火を使う方が楽だ。
次に怪物の方を見る。……全身に包帯が巻かれていて恐らく音とにおいでこちらを認識していると思われる。
「嗅覚か聴覚をつぶしたいところですけど……」
スズエさんも同じことを思ったようで、呟く声が聞こえた。
「身動きできなくしたらいいんじゃないかな?」
レイさんが言うと、「どうやってですか?」と彼女は尋ねる。
「転ばせることは……難しいか」
「転ばせる……いいかもしれないですね。でもどちらにしろ弱点を見つけないことには……」
そこまで言って、「いや、そうか」と何か納得したような声を出した。そして、
「少し離れててください」
そう言って、スズエさんは怪物に向かって走り出す。「スズ!?」とシルヤ君が止める前にスライディングして、自身の足を怪物に引っ掛けた。
ドシンッと怪物が転ぶ。少し包帯がほどけたようで中が見えていた。
「やっぱり……頭が弱点です!」
それを見て、スズエさんはボク達に叫ぶ。なるほど、だから包帯で隠されていたのか。
それなら、ボクの出番だ。ボクが手をかざし、狐火を出す。
「燃やし尽くせ」
そのまま、頭に向かって放つと包帯が燃えた。見えた頭部から赤い光が漏れ出ている。
「あれが弱点みたいだな」
タカシさんが言うと同時に、怪物が起き上がる。
奴はユミさんの方を見ていた。嫌な予感がする……。
そういう嫌な予感ほどよくあたってしまうものだ。怪物はユミさんに襲いかかった。
「ちょ、待って……!」
ユミさんは必死に抵抗していたけど、女性の力では限界がある。アイトが入っていた棺まで押されて、入りそうになった時、
「危ない!」
スズエさんがユミさんの腕を掴み、ドンッとボク達の方に突きとばした。その衝撃でスズエさんがバランスを崩し、棺に入ってしまう。
「……え……?」
怪物がそのまま、棺を閉めてしまった。その途端、スズエさんがパニックになる。
「い、いや!出して!暗いの嫌なのっ!」
ドンドンと必死に叩いているのが分かる。そんなことはお構いなしに、怪物は斧を振り上げた。
「誰か……助けて……おにい、ちゃん……」
「……っ」
その小さな懇願の声に、真っ先に動いたのはエレンさんだった。斧を振り落とされる直前、
「スズエをこれ以上……傷つけないでくださいっ!」
彼は持っていたフライパンで、怪物の頭を殴った。その強い衝撃で怪物は倒れる。
エレンさんが棺を開けると、涙を浮かべているスズエさんが目を丸くしていた。
「大丈夫ですか?」
「えれ、さん……なんで……?」
起き上がらせようと手を差し出す彼に涙を拭いながら彼女は尋ねた。強く叩きすぎたのか、スズエさんの手からは血が出ていた。
なんで、と聞かれた本人は小さく微笑みながら少女の涙を拭う。
「当然でしょう。私はあなたの「兄」なんですから」
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