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四章
ロビーに飾られているのは
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それにしても、とロビー内を見る。壁にはいろいろな絵画が飾られている。
「どうしたっすか?」
シルヤ君に声をかけられ、ボクは「あぁ、ちょっと見ていただけだよ」と彼を見る。
……本当に、悪趣味な絵画だ。人形達が死んだ時のものが飾られている。その中に、茶髪の幼い男女が緑髪の少年と黒髪の少年の後ろを追いかけている絵画があった。
(多分、スズエさんとシルヤ君と……エレンさんとアイトだ……)
四人はとても仲がよかったと聞いている。それこそ、本当のきょうだいのように……。
「…………」
そこまで考えて、むなしくなる。だって、ボクは彼らの秘密を知っているから。
チラッとスズエさんを見ると、彼女はある一か所を見ていた。つられるように見ると、火事で燃えている家の絵と、足しか見えない首吊りのような絵、車の前で飛び込む男性の絵があった。
「スズエ、見なくていいですよ」
エレンさんがスズエさんに声をかける。それだけで、その絵が何なのか分かった。
――彼女の祖父母とおじが亡くなった時の絵なのだろう。
「……えぇ、そうですね……」
兄だと分かったからか、スズエさんは目を伏せる。エレンさんはスズエさんの目を隠すように手で覆い、その絵を見ていた。
「エレン、その絵は何なの?」
レイさんに聞かれ、エレンさんは「ユウヤ、少しスズエを見ててください」と言ってきた。断る理由もないからスズエさんの傍に来ると、少し離れたところで二人は話し出す。
「……あれは、祖父母とおじが亡くなった時の……」
小さくだけど、そんな会話が聞こえてくる。レイさんも「なるほど……それならあまり話をしないようにするよ」と言っていた。
ボクがスズエさんの隣に座っていると、「おう、銀髪」とタカシさんに呼ばれる。
「なんですか?」
「こんなの見つけたんだけどよ。俺じゃ分かんねーからお前に預けとくわ」
そう言って渡してきたのはCD数枚。どこから見つけてきたのだろう?とは思うけどタカシさんが持っていると確かに壊しそうだ。それはありがたく受け取っておく。
そのままタカシさんはスズエさんの後ろに立った。
「……なぁ、大丈夫か?」
彼は本当に心配しているようだ。見た目によらず優しい人だ……。
「……えぇ、大丈夫ですよ」
「スズエ、そろそろ行きませんか?」
レイさんと話し終わったのか、エレンさんが声をかけに来る。スズエさんは「は、はい」と立ち上がった。
「ユウヤとタカシさんも行きましょう」
「そうですね」
ボク達が歩き出したエレンさんについていこうとすると、スズエさんが「あ、兄さん……」とエレンさんの服の袖を掴んだ。
「どうしました?スズエ」
彼が振り返ると、スズエさんは「その……」と何か言おうとしていた。でも、
「……すみません、何でも……ないです……」
手を放し、彼女は謝る。何か相談したいけど出来ないというような、そんな感じだった。
「そうですか?何かあったら言ってくださいね」
「……はい」
「それから、そんなにおどおどしなくていいですよ。兄さんはどんな時でも、スズエの味方ですから」
その言葉に、スズエさんは小さく頷いた。
「どうしたっすか?」
シルヤ君に声をかけられ、ボクは「あぁ、ちょっと見ていただけだよ」と彼を見る。
……本当に、悪趣味な絵画だ。人形達が死んだ時のものが飾られている。その中に、茶髪の幼い男女が緑髪の少年と黒髪の少年の後ろを追いかけている絵画があった。
(多分、スズエさんとシルヤ君と……エレンさんとアイトだ……)
四人はとても仲がよかったと聞いている。それこそ、本当のきょうだいのように……。
「…………」
そこまで考えて、むなしくなる。だって、ボクは彼らの秘密を知っているから。
チラッとスズエさんを見ると、彼女はある一か所を見ていた。つられるように見ると、火事で燃えている家の絵と、足しか見えない首吊りのような絵、車の前で飛び込む男性の絵があった。
「スズエ、見なくていいですよ」
エレンさんがスズエさんに声をかける。それだけで、その絵が何なのか分かった。
――彼女の祖父母とおじが亡くなった時の絵なのだろう。
「……えぇ、そうですね……」
兄だと分かったからか、スズエさんは目を伏せる。エレンさんはスズエさんの目を隠すように手で覆い、その絵を見ていた。
「エレン、その絵は何なの?」
レイさんに聞かれ、エレンさんは「ユウヤ、少しスズエを見ててください」と言ってきた。断る理由もないからスズエさんの傍に来ると、少し離れたところで二人は話し出す。
「……あれは、祖父母とおじが亡くなった時の……」
小さくだけど、そんな会話が聞こえてくる。レイさんも「なるほど……それならあまり話をしないようにするよ」と言っていた。
ボクがスズエさんの隣に座っていると、「おう、銀髪」とタカシさんに呼ばれる。
「なんですか?」
「こんなの見つけたんだけどよ。俺じゃ分かんねーからお前に預けとくわ」
そう言って渡してきたのはCD数枚。どこから見つけてきたのだろう?とは思うけどタカシさんが持っていると確かに壊しそうだ。それはありがたく受け取っておく。
そのままタカシさんはスズエさんの後ろに立った。
「……なぁ、大丈夫か?」
彼は本当に心配しているようだ。見た目によらず優しい人だ……。
「……えぇ、大丈夫ですよ」
「スズエ、そろそろ行きませんか?」
レイさんと話し終わったのか、エレンさんが声をかけに来る。スズエさんは「は、はい」と立ち上がった。
「ユウヤとタカシさんも行きましょう」
「そうですね」
ボク達が歩き出したエレンさんについていこうとすると、スズエさんが「あ、兄さん……」とエレンさんの服の袖を掴んだ。
「どうしました?スズエ」
彼が振り返ると、スズエさんは「その……」と何か言おうとしていた。でも、
「……すみません、何でも……ないです……」
手を放し、彼女は謝る。何か相談したいけど出来ないというような、そんな感じだった。
「そうですか?何かあったら言ってくださいね」
「……はい」
「それから、そんなにおどおどしなくていいですよ。兄さんはどんな時でも、スズエの味方ですから」
その言葉に、スズエさんは小さく頷いた。
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