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五章
少女達の秘密
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スズエさんが立ち上がり、「さて……そうは言ったもののアイトを見つけるのは面倒なんだよなぁ……」と呟いた。
「そうだな……あいつ、こういう遊び結構得意だもんなぁ……」
シルヤ君も同意する。しかしこのままでは何も始まらないと、動き始めた。
「スズエさん、本当に大丈夫ですか?」
少し歩いて、ハナさんがスズエさんに聞いた。確かに、少し手が震えている。それに気付いたのかスズエさんは困ったように笑う。
「……えぇ、大丈夫ですよ。本当に、怖いとかそう言う感情が「分からない」ので」
「え、どういう……」
「気にしなくていいですよ」
詳しく聞こうとすると、あまり問い詰められたくなかったのかそのまま進んでしまった。
「スズ……」
シルヤ君が慌てて彼女の隣に立つ。ボク達も慌てて二人に駆け寄った。
スズエさんの様子をジッと見ていたケイさんが不意にスズエさんの肩を叩いた。
「……っ!?何しているんですか!?」
彼女が驚いてケイさんを見る。赤いランプが彼に移っていた。
「スズちゃんはまだ必要だと思うからねー。……俺は大人だから大丈夫だよー」
そう言われてはスズエさんも何も言えないのだろう。「……ありがとう、ございます」とお礼を言った。
さて、ではどうしようかという話になるけど。
「ね、ねぇ、上の階に行こうよ。図書館、あったよね?」
ユミさんの提案に「そ、そうだね……もしかしたら、何かあるかも……」とレントさんが頷いた。それなら上の階に行こうということになった。
「……ねぇ、ユウヤ」
少人数ずつでエレベーターに乗ろうということになり、少し離れたところで待っているとレイさんが声をかけてくる。
「どうしました?」
「その……俺が言うのもなんだけどさ……スズエって何考えてるか分からなくてちょっと怖いんだ……」
そう言う彼の顔は本当に怯えているものだった。
「分からない?」
「さっきも、感情が分からないって言っていたでしょ?実際、本当に感情が読めないんだ。……ユウヤなら、スズエが何考えてるのか分かるかなって思って」
そう言われ、ボクは考え込んでしまう。
……確かに、ある程度ならボクもスズエさんが何を考えているのか分かるつもりだ。でも……ボクだって、全部が分かるわけじゃない。
(でも……)
「……どこか、悲しそうな表情をしますね」
それだけは、気付いていた。レイさんも「そっか……」と呟くだけだった。
エレベーターで上の階に行くと、地図を見ながら「図書館はこっちみたいです」とスズエさんが案内してくれた。
「気を付けてくださいね。罠があるかもしれませんから……」
図書館に着くと、スズエさんにそう言われる。まぁ、確かにね……。
罠に気をつけながら探索していると、「ねぇ、これ」とマイカさんがノートを見つけてきた。ケイさんがそれを受け取り、内容を確認する。
「……ねぇ、エレンー」
「なんですか?」
「これ、心当たりあるかなー?」
やがて、ケイさんがエレンさんに質問する。どんな内容だったのだろうと覗き込むと、狂研究者の日記のような内容だった。
不思議な力を持つ子供が生まれた。もしかしたらこの力を使って世界を壊せるかもしれない。
妻に聞いたところによると、「血療」というのはすごいもので死者蘇生までさせてしまうものらしい。特に女の子ならその力は強力なものになるそうだ。
女の子が生まれた!これで計画が遂行できる!妻も大喜びで抱き合ってくれた!
「……これ、は……」
「エレン、君がスズちゃんのお兄さんってことは……同じ力が使えるってことだよねー?」
ケイさんに聞かれ、エレンさんは黙り込んでしまう。……そして、ギュッと手を握って、
「……えぇ、使えますよ。スズエよりは弱いでしょうけど」
そう、正直に話した。
彼らの母方の血筋である咲祈家は、「祈療姫」と呼ばれる巫女の血を引いている。彼女は異世界で生まれたといわれていて不思議な力を使えるのだ。
「そうなんだねー」
ケイさんがもう少し聞こうと口を開くと、アラームが鳴り響いた。
「え、な、何っ!?」
同時に本の化け物が飛び始めた。原因が何か考えようとするけど、混乱してまとまらない。
その間、スズエさんがどこかイライラしながら隙間を調べ始める。
「な、なんか、怒ってる?」
「うるさくて考えがまとまらないんですよ。イライラする……」
「……鬼神……」
「聞こえてますよ、レイさん」
……かなりキレているらしい。
そのまま、スズエさんはアラームが鳴っているスマホや目覚まし時計を投げた。
「それ壊してください」
「あ、あぁ」
怒りを表に出さないように冷静に指示を出す彼女におどおどしながら、ラン君とシルヤ君がそれを壊しだす。最後の一つを見つけ出し、スズエさんがそれを強く投げつける。
ふと怪物の様子を見ると、動きが鈍くなっている。
「みんな、静かに……」
ボクの言葉に全員が呼吸もひそめた。怪物が戻っていっていると、
「ニャッ!?」
何かを踏んでしまったのか、フウ君が悲鳴をあげてしまった。同時に怪物が彼に襲いかかった。
ボクがフウ君に駆け寄る前に、スズエさんがフウ君を抱きしめて右腕を伸ばした。
「……っ!」
怪物がスズエさんの腕にかみつく。血が飛び散るが、彼女は声を出すことはしなかった。
「ね、ねえちゃ」
「しっ、静かに」
そのまま、静かにしていると怪物が腕から離れて戻っていった。
最後の本が戻っていったことを確認して、「よかった……」とフウ君から離れた。
「大丈夫?どこも怪我してない?」
「う、うん、大丈夫ニャ……」
フウ君が頷くと安心したように笑った。
「そうだな……あいつ、こういう遊び結構得意だもんなぁ……」
シルヤ君も同意する。しかしこのままでは何も始まらないと、動き始めた。
「スズエさん、本当に大丈夫ですか?」
少し歩いて、ハナさんがスズエさんに聞いた。確かに、少し手が震えている。それに気付いたのかスズエさんは困ったように笑う。
「……えぇ、大丈夫ですよ。本当に、怖いとかそう言う感情が「分からない」ので」
「え、どういう……」
「気にしなくていいですよ」
詳しく聞こうとすると、あまり問い詰められたくなかったのかそのまま進んでしまった。
「スズ……」
シルヤ君が慌てて彼女の隣に立つ。ボク達も慌てて二人に駆け寄った。
スズエさんの様子をジッと見ていたケイさんが不意にスズエさんの肩を叩いた。
「……っ!?何しているんですか!?」
彼女が驚いてケイさんを見る。赤いランプが彼に移っていた。
「スズちゃんはまだ必要だと思うからねー。……俺は大人だから大丈夫だよー」
そう言われてはスズエさんも何も言えないのだろう。「……ありがとう、ございます」とお礼を言った。
さて、ではどうしようかという話になるけど。
「ね、ねぇ、上の階に行こうよ。図書館、あったよね?」
ユミさんの提案に「そ、そうだね……もしかしたら、何かあるかも……」とレントさんが頷いた。それなら上の階に行こうということになった。
「……ねぇ、ユウヤ」
少人数ずつでエレベーターに乗ろうということになり、少し離れたところで待っているとレイさんが声をかけてくる。
「どうしました?」
「その……俺が言うのもなんだけどさ……スズエって何考えてるか分からなくてちょっと怖いんだ……」
そう言う彼の顔は本当に怯えているものだった。
「分からない?」
「さっきも、感情が分からないって言っていたでしょ?実際、本当に感情が読めないんだ。……ユウヤなら、スズエが何考えてるのか分かるかなって思って」
そう言われ、ボクは考え込んでしまう。
……確かに、ある程度ならボクもスズエさんが何を考えているのか分かるつもりだ。でも……ボクだって、全部が分かるわけじゃない。
(でも……)
「……どこか、悲しそうな表情をしますね」
それだけは、気付いていた。レイさんも「そっか……」と呟くだけだった。
エレベーターで上の階に行くと、地図を見ながら「図書館はこっちみたいです」とスズエさんが案内してくれた。
「気を付けてくださいね。罠があるかもしれませんから……」
図書館に着くと、スズエさんにそう言われる。まぁ、確かにね……。
罠に気をつけながら探索していると、「ねぇ、これ」とマイカさんがノートを見つけてきた。ケイさんがそれを受け取り、内容を確認する。
「……ねぇ、エレンー」
「なんですか?」
「これ、心当たりあるかなー?」
やがて、ケイさんがエレンさんに質問する。どんな内容だったのだろうと覗き込むと、狂研究者の日記のような内容だった。
不思議な力を持つ子供が生まれた。もしかしたらこの力を使って世界を壊せるかもしれない。
妻に聞いたところによると、「血療」というのはすごいもので死者蘇生までさせてしまうものらしい。特に女の子ならその力は強力なものになるそうだ。
女の子が生まれた!これで計画が遂行できる!妻も大喜びで抱き合ってくれた!
「……これ、は……」
「エレン、君がスズちゃんのお兄さんってことは……同じ力が使えるってことだよねー?」
ケイさんに聞かれ、エレンさんは黙り込んでしまう。……そして、ギュッと手を握って、
「……えぇ、使えますよ。スズエよりは弱いでしょうけど」
そう、正直に話した。
彼らの母方の血筋である咲祈家は、「祈療姫」と呼ばれる巫女の血を引いている。彼女は異世界で生まれたといわれていて不思議な力を使えるのだ。
「そうなんだねー」
ケイさんがもう少し聞こうと口を開くと、アラームが鳴り響いた。
「え、な、何っ!?」
同時に本の化け物が飛び始めた。原因が何か考えようとするけど、混乱してまとまらない。
その間、スズエさんがどこかイライラしながら隙間を調べ始める。
「な、なんか、怒ってる?」
「うるさくて考えがまとまらないんですよ。イライラする……」
「……鬼神……」
「聞こえてますよ、レイさん」
……かなりキレているらしい。
そのまま、スズエさんはアラームが鳴っているスマホや目覚まし時計を投げた。
「それ壊してください」
「あ、あぁ」
怒りを表に出さないように冷静に指示を出す彼女におどおどしながら、ラン君とシルヤ君がそれを壊しだす。最後の一つを見つけ出し、スズエさんがそれを強く投げつける。
ふと怪物の様子を見ると、動きが鈍くなっている。
「みんな、静かに……」
ボクの言葉に全員が呼吸もひそめた。怪物が戻っていっていると、
「ニャッ!?」
何かを踏んでしまったのか、フウ君が悲鳴をあげてしまった。同時に怪物が彼に襲いかかった。
ボクがフウ君に駆け寄る前に、スズエさんがフウ君を抱きしめて右腕を伸ばした。
「……っ!」
怪物がスズエさんの腕にかみつく。血が飛び散るが、彼女は声を出すことはしなかった。
「ね、ねえちゃ」
「しっ、静かに」
そのまま、静かにしていると怪物が腕から離れて戻っていった。
最後の本が戻っていったことを確認して、「よかった……」とフウ君から離れた。
「大丈夫?どこも怪我してない?」
「う、うん、大丈夫ニャ……」
フウ君が頷くと安心したように笑った。
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