39 / 61
五章
死の鬼ごっこの始まり
しおりを挟む
しばらくして、フウ君が疲れてしまったのか眠ってしまった。
「……まったく……」
困ったように笑いながらも、スズエさんは自分の上着をフウ君にかける。そして静かにパソコンで続きを調べ始めた。やっぱり、世話好きだなぁ……。
「あー……クソッ。早く首輪の解除をしないといけないのに……」
頭を掻きむしりながら起こさないように、しかし確実にいら立ったように呟く。
「スズエさん、あんまり無理しないでいいよ。疲れてるでしょ?」
さっきまでフウ君と遊んでいたのだ。それを抜きにしても、ここに連れてこられてからずっと探索しっぱなしで疲れていないはずがない。
「いえ、大丈夫ですよ。……見張られているとゆっくり休むに休めないですしね」
チラッとスズエさんが少し遠くを見る。そこにはレイさんやケイさんが立っていた。ケイさんは元とはいえ警官だから職業柄どうしても疑わないといけないのだろう。レイさんも疑い深い性格そうだし、仕方ないのかもしれない。
それを知っているからか、スズエさんは特に気にした様子もなくまたすぐにパソコンを触り出した。
(……本当に大丈夫かな……?)
彼女だって、たまには休まないといけないのに……。
一日が経ち、全員でロビーに集まっていると「アハハッ!そろそろデスゲームらしいことしたいよね!」とアイトの声が聞こえてきた。
「……は?急に出てきて何言ってんのお前」
スズエさんが冷たい目をしながら彼を見る。
「そんな目で見ないでよー。可愛いだけだよ?スズエさん」
「……こいつぶん殴りたい……」
うん、同感。
「酷いなー。ボク、スズエさんのことこんなに大好きなのに」
「本当に好きならこんなことすんな。このサイコパス野郎」
「えー?スズエさんが泣く姿が可愛いのにー」
「……とっとと要件を言え、サイコパス緑野郎」
ため息をつきながら睨む彼女にニコニコしながらアイトは「鬼ごっこしよ!」と告げる。
「は?鬼ごっこ?」
「うん!小さい頃よく遊んだでしょ?」
「……ここでの鬼ごっこってロクなものじゃないだろ」
確かに、と思う。下の階でやったミニゲームですら命をかけたのだから。
案の定、アイトは「そりゃ、デスゲームだからね!」と笑顔で頷いた。そんなんだからサイコパスって言われるんだぞ、お前。
「じゃあ、勝手に始めちゃいまーす!」
アイトが指を鳴らすと、フウ君の首輪に赤いランプがついた。
「その赤いランプがついている人が鬼ね!時間内にボクを捕まえないと……首輪が発動するかもね?」
「ニャッ!?」
「制限時間は……今日の夕方六時。それじゃあ、はじめ!」
勝手に始め、アイトは姿を消す。「おい、待て!」と手を伸ばすけど、届かなかった。
フウ君は震えていた。死ぬかもしれないのだ、当然だろう。
「……フウ」
誰も声をかけられずにいた中、スズエさんがフウ君の手を握る。
赤いランプが、スズエさんの首輪に映った。
「……私が、鬼をやる」
そのまま、フウ君をシルヤ君の方に優しく飛ばした。
「おっと、スズ、本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫。……だから、フウを見てやってくれ」
「ねえ、ちゃ……」
フウ君が泣きそうになりながら彼女を見ている。それに気付いたスズエさんは目線を合わせるようにしゃがみ、
「……大丈夫。お姉ちゃんが何とかしてあげるからね」
そう言って笑った。
「……まったく……」
困ったように笑いながらも、スズエさんは自分の上着をフウ君にかける。そして静かにパソコンで続きを調べ始めた。やっぱり、世話好きだなぁ……。
「あー……クソッ。早く首輪の解除をしないといけないのに……」
頭を掻きむしりながら起こさないように、しかし確実にいら立ったように呟く。
「スズエさん、あんまり無理しないでいいよ。疲れてるでしょ?」
さっきまでフウ君と遊んでいたのだ。それを抜きにしても、ここに連れてこられてからずっと探索しっぱなしで疲れていないはずがない。
「いえ、大丈夫ですよ。……見張られているとゆっくり休むに休めないですしね」
チラッとスズエさんが少し遠くを見る。そこにはレイさんやケイさんが立っていた。ケイさんは元とはいえ警官だから職業柄どうしても疑わないといけないのだろう。レイさんも疑い深い性格そうだし、仕方ないのかもしれない。
それを知っているからか、スズエさんは特に気にした様子もなくまたすぐにパソコンを触り出した。
(……本当に大丈夫かな……?)
彼女だって、たまには休まないといけないのに……。
一日が経ち、全員でロビーに集まっていると「アハハッ!そろそろデスゲームらしいことしたいよね!」とアイトの声が聞こえてきた。
「……は?急に出てきて何言ってんのお前」
スズエさんが冷たい目をしながら彼を見る。
「そんな目で見ないでよー。可愛いだけだよ?スズエさん」
「……こいつぶん殴りたい……」
うん、同感。
「酷いなー。ボク、スズエさんのことこんなに大好きなのに」
「本当に好きならこんなことすんな。このサイコパス野郎」
「えー?スズエさんが泣く姿が可愛いのにー」
「……とっとと要件を言え、サイコパス緑野郎」
ため息をつきながら睨む彼女にニコニコしながらアイトは「鬼ごっこしよ!」と告げる。
「は?鬼ごっこ?」
「うん!小さい頃よく遊んだでしょ?」
「……ここでの鬼ごっこってロクなものじゃないだろ」
確かに、と思う。下の階でやったミニゲームですら命をかけたのだから。
案の定、アイトは「そりゃ、デスゲームだからね!」と笑顔で頷いた。そんなんだからサイコパスって言われるんだぞ、お前。
「じゃあ、勝手に始めちゃいまーす!」
アイトが指を鳴らすと、フウ君の首輪に赤いランプがついた。
「その赤いランプがついている人が鬼ね!時間内にボクを捕まえないと……首輪が発動するかもね?」
「ニャッ!?」
「制限時間は……今日の夕方六時。それじゃあ、はじめ!」
勝手に始め、アイトは姿を消す。「おい、待て!」と手を伸ばすけど、届かなかった。
フウ君は震えていた。死ぬかもしれないのだ、当然だろう。
「……フウ」
誰も声をかけられずにいた中、スズエさんがフウ君の手を握る。
赤いランプが、スズエさんの首輪に映った。
「……私が、鬼をやる」
そのまま、フウ君をシルヤ君の方に優しく飛ばした。
「おっと、スズ、本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫。……だから、フウを見てやってくれ」
「ねえ、ちゃ……」
フウ君が泣きそうになりながら彼女を見ている。それに気付いたスズエさんは目線を合わせるようにしゃがみ、
「……大丈夫。お姉ちゃんが何とかしてあげるからね」
そう言って笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
M性に目覚めた若かりしころの思い出 その2
kazu106
青春
わたし自身が生涯の性癖として持ち合わせるM性について、終活的に少しづつ綴らせていただいてます。
荒れていた地域での、高校時代の体験になります。このような、古き良き(?)時代があったことを、理解いただけましたらうれしいです。
一部、フィクションも交えながら、述べさせていただいてます。フィクション/ノンフィクションの境界は、読んでくださった方の想像におまかせいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる