ＤＥＡＴＨＧＡＭＥ～裏切りと信念の姫～

五章

少女の孤独な心

　スズエさん達がモニター室に行って十分が経ったぐらいの時、ラン君が降りてきた。
「ラン、一人で行動しても大丈夫なのか？」
　ミヒロさんが目を丸くしていると「スズエが赤い糸の設定を解除したっすから」と彼は答えた。
「それなら、自由に動けるようになりますね」
　ハナさんが安心したような表情を浮かべる。あの赤い糸が一体何を意味していたのかは分からなかったけど、まぁロクなことはないのだろう。
　そのスズエさんとシルヤ君はまだモニター室にいるようだ。
「……今はそっとしておいた方がいいかもしれないっす」
　ボクがすぐに行こうとすると、ラン君がそう言った。
「どうして？」
「ちょっと頭を冷やしたいって言っていたっすよ。……あの状況じゃ、頭を冷やすも何もないと思いますけど」
「なるほど……分かった、少し待ってから行くよ」
　スズエさんも、シルヤ君といる方が安心するだろう。
　ボクがエレンさんの近くに来ると、「スズちゃんって、お姉さんっぽいよねー」とケイさんが言ってきた。
「急になんですか？スズエを狙っているなら吹っ飛ばしますよ」
「アハハー、怖いなー。でもそうじゃないよー」
　ではなんで突然そんなことを言い出したのだろうか？ケイさんは笑顔を張りつけながら、「さっきの、シルヤ君を言い聞かせた時とかさー」と告げた。
　そういえばと思い出す。確かに、まるで弟に言い聞かせるような言い方だった。
「まぁ、スズエの方がお姉さんですからね」
　エレンさんがため息をつく。「ふーん……」と何かを探るような目を向けるけど、何か言ってくることはなかった。

　少しして、スズエさんとシルヤ君が合流する。
「すみません、少し話してて」
「大丈夫だ。……それより、今日はもう休もう。キナとフウが精神的に疲れているだろうからさ」
　スズエさんが頭を下げると、マミさんがそう提案してくれた。「そうですね……」と彼女も頷いた。
「では、休んでもいいですし探索を続けてもいいです。今日は少し、ゆっくりしましょう」
　その言葉に反対する人はいなかった。
　各々が自由に過ごしている中、スズエさんは一人でパソコンをかかっていた。
「スズ姉ちゃん、何してるニャ？」
　フウ君が彼女の傍に来る。スズエさんはその頭を撫でながら「ちょっと解除できそうなものを探しているんだよ」と答えた。
「そうなのかニャ……」
「フウは休まないのか？疲れただろう？」
「大丈夫ニャ！それに、姉ちゃんを守らないといけないニャ！」
　笑顔を浮かべているフウ君を見て、彼女もつられるように笑う。
「……そうか、ありがとう」
　そのまま、彼女はフウ君の話に耳を傾けながらパソコンを使っていた。
「……スズ姉ちゃんは、パソコンが好きなのかニャ？」
　やがて、疑問に思ったのかスズエさんにそう聞いてきた。それに彼女は手を止めて、
「……そう、だな……パソコンを触ること自体は好きだよ。でも、それ以上に孤独を紛らわせるための手段でもあるんだ」
　悲しそうにしながら、そう答えた。
「どういう意味かニャ？」
　不安そうに見ている彼に心配させないように、スズエさんは小さく笑った。
「……別にパソコンが嫌いなわけじゃないよ、本当に好きだし。でも、私は「化け物」だから、みんなに怖がられるんだ」
「姉ちゃんは姉ちゃんニャ！化け物じゃないニャ！」
「フフッ、ありがとう。シルヤと同じことを言ってくれるんだね」
「だって本当ニャ！スズ姉ちゃんは優しいんだニャ！」
　フウ君がスズエさんに抱き着く。
　……きっと、彼女の言う「化け物」というのは、「血療」のことを言っているんだろう。
　さっき、ゴウさんに使った力。あれは、文字通り自分の血で他人の傷を癒すことが出来るのだ。彼女の地には、その力が宿っている。
　しかしそのせいで、どれぐらい心を傷つけられてきたのだろうか。……ボクだって、同じだったから。
「ねぇねぇ、一緒に遊ぼうニャ！」
　フウ君の言葉にスズエさんは目を丸くした。そして小さく微笑んで「……いいよ」と頷いた。
　パソコンを机に置いて、スズエさんはフウ君と遊び始める。その姿はとても楽しそうで、まるでデスゲームに巻き込まれてしまったとは思えないほどだった。