DEATHGAME~裏切りと信念の姫~

ひいらぎななみ

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五章

二人の関係性

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「……え?」
 ボク達が目を丸くする。なんで、スズエさんの父親が……。
「さすが、あいつの娘だな。よく見破った」
 突然声をかけられ、ビクッと震える。この、聞き覚えのある低い声は……。
「……シンヤ……」
「ユウヤ、兄さんに呼び捨てはないだろ?」
 ボクと顔のよく似た青年が笑う。
 ――彼は、ボクの双子の兄だ。本来なら、ここにいるはずのない人間。
「なんで……」
「エレンも、久しぶりだな?」
「シンヤは……あの時、確かに死んだハズなのに……」
 そう、兄さんは既にこの世にいないハズなのだ。忌まわしきあの咲祈家のせいで。
「答え合わせだ、確かにケイに恩人を殺させたのはスズエの父親だよ」
「なんで、そんなこと……」
「なんとなく分かっているだろ?スズエを縛って縛って身動きできなくするためだ」
 名前を呼ばれ、スズエさんはビクッと震える。それを見て彼は大声で笑った。そして、シルヤ君の後ろに回って首に腕を回した。
「さぁ、選べ。スズエか、シルヤか。どっちかを殺す」
 それを聞いた瞬間、スズエさんが「ふ、ふざけないで!」と顔を青ざめながら叫んだ。
「シルヤに手を出すな!」
「さぁ、どうするかな?こいつら次第だろ?お前に選択権はない」
「……っ!」
 シンヤはニコニコしていた。こんなこと、する奴じゃなかったのに……。
 ボク達は冷や汗を流す。どっちを選んでも絶対にどっちかが傷ついてしまう。いや、そもそも……どっちかが死なないといけないなんておかしい。
「私を選んでよ!」
 ボク達が悩んでしまったことに気付いたのか、スズエさんが叫んだ。
「私のことが嫌いなんでしょ!?私のことが憎いんでしょ!?だったら私を殺せばいいじゃん!シルヤを選んだら絶対許さない!」
 顔を青くしながら、彼女は懇願する。そこまで必死になっているスズエさんなんて見たことがなかった。
「ダメだ!オレを選んでくれよ!スズはまだ必要だろ!?」
 シルヤ君も負けじと叫んだ。お互いがお互いを大事にしているのが、よく分かった。
「あーはっはっはっ!ほんと、素晴らしい絆だなぁ!」
 シンヤが大声で笑う。そしてすぐに真顔になって、
「じゃあ、二人とも死ぬか?」
 スズエさんとシルヤ君にそう聞いた。二人は顔を見合わせ、考え込んでしまった。
「……何が目的だ?」
 しばらくして、スズエさんが尋ねると彼は「お前は分かっているんじゃないか?」とニコニコしていた。
「こいつらを裏切れ。誰かを殺せ。そしたら、シルヤを解放してやるよ」
「……っ」
「お前なら簡単だろ?」
 いやらしく笑う兄に、ボクは首を傾げる。なんで、そんなことを言うのだろうか?
 スズエさんは唇を噛む。少し考えて、逆らうわけにはいかないと思ったのか懐に手を入れた。
 ――取り出したのは、短剣だった。
「……ごめんなさい。あなた達に恨みはないけれど……」
 彼女は震えながら、ボクに少しずつ近付いた。
「スズエ、待ってくれ。少し話し合おう」
「……話し合うことなんてないよ、ラン。私は裏切り者、それだけが事実だろ」
 ラン君がスズエさんを止めようと話しかけるけど、短剣を手放すことはしない。
「それなら、答えてくれ。お前とシルヤは、どんな関係なんだ?なんでそこまで、シルヤを最優先にする?」
 その質問に、スズエさんは立ち止まる。
「なんでそれを答えないといけないの?お前達に関係ある?」
「関係ある。理由が分からないとオレ達だってなんでお前が裏切るか分からない」
 そう言われ、彼女は歯ぎしりする。
「……双子だよ。シルヤは双子の弟だ。これでいい?」
 投げやりに答えられ、ボクとエレンさん以外は驚く。
 そう、二人は名字こそ違うが双子の姉弟なのだ。……だからお互い気遣い、支えてきた。
「スズ……」
「大丈夫だよ、シルヤ。あなただけは絶対助けてあげるから」
 不安げに見るシルヤ君に、スズエさんは優しく微笑んでボクの方に歩き出す。
 ――ボクを狙っているのなら、対処できる。
 彼女の手首を掴んで、説得すればいい。彼女だって、裏切りたくないハズだ。もしかしたら、彼女もボクを狙えばどうにかしてくれるって分かっているのかもしれない。
 ボクの目の前に来た彼女は、手を振り上げた。手首を掴もうとボクが手を伸ばすけど、なぜかかすった。
 ――血が飛び散る。それはボクのものではなく、目の前の少女のものだと気付くまでに少しかかった。
「……誰かを殺すことが出来ないなら、自分を殺せばいいよね?」
 口から血を流しながら、彼女は呟く。短剣はスズエさんのおなかを刺していてそこから血が滴っていた。
「す、スズエさん!?何して……っ!」
 ボクが手を伸ばすと同時に、彼女はそのまま横に斬った。そして、短剣を落として手で傷を押さえる。
「……これでいいだろ?シンヤ。早くシルヤを解放しろ」
「アハハ!ホント、お前面白いな!いいよ、その覚悟にめんじてシルヤを解放してやるよ」
 シンヤが笑って、シルヤ君を解放する。それを確認したと同時にスズエさんが倒れた。
「スズ!」
 シルヤ君がスズエさんに駆け寄る。呼吸は……弱いけど、まだある。
「ち、血療を……!」
「エレンさん、あんまり使わない方がいいですよ。ただでさえ酷く疲れるんですから」
 そんな会話をしながら、ボクはマフラーを使ってスズエさんの傷を押さえた。……でも、刺しどころが悪いのだろう。血が止まりそうにない。
 どうしよう……!なんてパニックになっていると肩を叩かれた。
「私が代わりにやるよ」
 マイカさんだ。彼女はスズエさんの上着を脱がして傷を確認した。
「ちょっと、マイカさん……なんで……」
 レイさんが戸惑ったように声をかけると、「スズちゃんは、私が裏切っても助けてくれた」と答えた。
「だから私も助けるの。……それに、自分のためだった私と違ってスズちゃんは大事なものを人質に捕られてたからあんなことをするしか出来なかったんだよ」
「……そう、ですか」
 そう言われては、レイさんもこれ以上何も言えないのだろう。マイカさんは「ユウヤ君、マフラー借りるね」と言ってスズエさんのおなかを軽く縛った。
「エレンさん、ちょっと部屋まで運んでくれる?」
 マイカさんの指示に「え、えぇ。もちろんです」と頷いてスズエさんを優しく抱き上げた。
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