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六章
病気の真実
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あの後、解散して部屋で休んでいたけどどうしても眠れず、タカシさんに「ちょっと出ます」と告げて出るとロビーにスズエさんが座っていた。
「スズエさん」
「あ、ユウヤさん……」
「隣、座るね」
ボクが隣に座ると、スズエさんはうつむいたまま黙ってしまった。
「大丈夫?」
「……えぇ」
「おなかの傷は大丈夫?血がにじんだりしていない?」
「大丈夫ですよ。……無痛病、ですし」
その答えにボクは悲しくなる。
「……本当に、痛くないの?」
どうしても、そうは思えなかった。もともとそうだったのかもしれないけど、あの時、少しだけ顔を歪めていた気がした。
彼女は下を向く。そして、
「……なんで、ユウヤさんは気付くんですか?」
そう、聞かれた。
「やっぱり、痛かったんだね」
「本当に少しだけですけどね。……はぁ、なんでだろ……?」
スズエさんがため息をつく。本当に、なんで急に無痛病が治るのだろうか?
ふと、嫌な想像が浮かんだ。
「……ねぇ、スズエさん」
「なんですか?」
「もしかしてだけどさ……君のご両親が何かしたんじゃない?」
ボクが聞くと、スズエさんは顔を青ざめながら「え……?」と声をこぼした。
「……人体、実験……?あんまり考えたくないけど……あの人達なら、違法なこともやりかねない……」
心当たりがあるのか、ブツブツ何か言っている。
もしこれが事実だとしたら……本当に、酷い両親だ。娘すら、利用しているということだから。
足音が聞こえ、振り返る。そこにはアイトが悲しげな顔をして見ていた。
「……二人とも」
「どうしたの?アイト」
「いや……君の想像は、あながち間違ってないよ」
その言葉にボクとスズエさんは顔を見合わせる。それに気付いているだろうけど、アイトは続けた。
「……昔さ、病院にお見舞いに行った時あったでしょ?その髪結びを渡した時……」
「うん、覚えているけど……」
「その時さ……注射の痕、あったじゃん。いつの間に採血したんだろって話してたでしょ?」
「……うん」
「……あの後、聞いたんだけど……あの時はまだ、採血していなかったって。だから注射の痕なんてあるわけないんだって言われたんだ」
「……え?」
それを聞いたスズエさんは青を通り越して白くなる。
「……あの前に来たの、確かにお父さん達だけだ……」
そして、そう呟いた。ほぼ、確定のようなものだろう。
あの人達は、スズエさんに何かを注射したのだ。そしてそれは……無痛病や失感情症というものにしてしまうもの。
でも、何が目的でそんなことをしたのだろうか?それは続く言葉で分かった。
「スズエさんのその力を利用するためだよ、絶望すればするほど、強くなるからだと思う」
「……っ!」
そうだ、スズエさんのその力は……絶望すればするほど、死者さえ蘇らせるほどの強さを持つものだ。だからこそ、ボク達「守護者」がいるのだから。
「……そっか。だから私、あんなこと言われて……」
あんなこと、というのは裏切れと言われたことだろう。……スズエさんは、もともと裏切れるような性格ではないのはよく分かっている。だからこそ、彼女の両親は「他人を殺せ」という命令を下したのだ。
「…………」
スズエさんは黙り込んでしまった。今は、何も考えたくないのかもしれない。
「……ごめんね、言わない方がよかったね」
「……ううん。大丈夫」
アイトがスズエさんに声をかけると、彼女は首を横に振った。ボクも彼女の背中を優しくさする。
――あぁ、絶対に彼女を守ろう。
そう、心に誓いながら。
「スズエさん」
「あ、ユウヤさん……」
「隣、座るね」
ボクが隣に座ると、スズエさんはうつむいたまま黙ってしまった。
「大丈夫?」
「……えぇ」
「おなかの傷は大丈夫?血がにじんだりしていない?」
「大丈夫ですよ。……無痛病、ですし」
その答えにボクは悲しくなる。
「……本当に、痛くないの?」
どうしても、そうは思えなかった。もともとそうだったのかもしれないけど、あの時、少しだけ顔を歪めていた気がした。
彼女は下を向く。そして、
「……なんで、ユウヤさんは気付くんですか?」
そう、聞かれた。
「やっぱり、痛かったんだね」
「本当に少しだけですけどね。……はぁ、なんでだろ……?」
スズエさんがため息をつく。本当に、なんで急に無痛病が治るのだろうか?
ふと、嫌な想像が浮かんだ。
「……ねぇ、スズエさん」
「なんですか?」
「もしかしてだけどさ……君のご両親が何かしたんじゃない?」
ボクが聞くと、スズエさんは顔を青ざめながら「え……?」と声をこぼした。
「……人体、実験……?あんまり考えたくないけど……あの人達なら、違法なこともやりかねない……」
心当たりがあるのか、ブツブツ何か言っている。
もしこれが事実だとしたら……本当に、酷い両親だ。娘すら、利用しているということだから。
足音が聞こえ、振り返る。そこにはアイトが悲しげな顔をして見ていた。
「……二人とも」
「どうしたの?アイト」
「いや……君の想像は、あながち間違ってないよ」
その言葉にボクとスズエさんは顔を見合わせる。それに気付いているだろうけど、アイトは続けた。
「……昔さ、病院にお見舞いに行った時あったでしょ?その髪結びを渡した時……」
「うん、覚えているけど……」
「その時さ……注射の痕、あったじゃん。いつの間に採血したんだろって話してたでしょ?」
「……うん」
「……あの後、聞いたんだけど……あの時はまだ、採血していなかったって。だから注射の痕なんてあるわけないんだって言われたんだ」
「……え?」
それを聞いたスズエさんは青を通り越して白くなる。
「……あの前に来たの、確かにお父さん達だけだ……」
そして、そう呟いた。ほぼ、確定のようなものだろう。
あの人達は、スズエさんに何かを注射したのだ。そしてそれは……無痛病や失感情症というものにしてしまうもの。
でも、何が目的でそんなことをしたのだろうか?それは続く言葉で分かった。
「スズエさんのその力を利用するためだよ、絶望すればするほど、強くなるからだと思う」
「……っ!」
そうだ、スズエさんのその力は……絶望すればするほど、死者さえ蘇らせるほどの強さを持つものだ。だからこそ、ボク達「守護者」がいるのだから。
「……そっか。だから私、あんなこと言われて……」
あんなこと、というのは裏切れと言われたことだろう。……スズエさんは、もともと裏切れるような性格ではないのはよく分かっている。だからこそ、彼女の両親は「他人を殺せ」という命令を下したのだ。
「…………」
スズエさんは黙り込んでしまった。今は、何も考えたくないのかもしれない。
「……ごめんね、言わない方がよかったね」
「……ううん。大丈夫」
アイトがスズエさんに声をかけると、彼女は首を横に振った。ボクも彼女の背中を優しくさする。
――あぁ、絶対に彼女を守ろう。
そう、心に誓いながら。
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