DEATHGAME~裏切りと信念の姫~

ひいらぎななみ

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六章

奇跡の逆転

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「時間切れだ、早く投票をしろ」
 コウシロウの言葉に、スズエさんは諦めたような表情を浮かべる。ボクは震える指で、スズエさんに票を入れる。
 票は、ボクに集まっていた。それもそうだ、ボクの役職が平民になっているのは確定しているのだから。
「さて、じゃあ役職を明かしていくか。
 鍵番はシルヤ、賢者はフウだ。身代は……ユウヤだったが、スズエになっているな。よかったな、スズエを選ばなくて」
 クスクスと彼は笑う。スズエさんはうつむいたまま、動かない。
「しかし、まさか本当に身代を盗めるとは思っていなかったぞ」
「……うるさいな」
「おー、怖い怖い。じゃあ、死ぬ前に何か言いたいことはあるか?」
 彼が近付き、スズエさんの顎をクイッと上げる。その手を彼女ははたいた。
「……気安く触らないで、クソ親父」
「酷いなぁ。お前のお父様なのに」
「何回も言わせるな。お前の血を引いていると考えるだけで吐き気がする」
 忌々しげに父親を睨む彼女の瞳には、光が消えていなかった。
「本当にその態度、好きだなぁ。反抗的で、屈服させたくなる」
 その笑顔が腹立つ。本当は気付いていたのだろう、スズエさんが、身代を奪うってことを。
(ただ、その作戦に踊らされていただけじゃんか……)
 絶望していると、階段をのぼりながら「アイト」とスズエさんが声をかけた。
「何?スズエさん」
「……あとは任せたよ。ユキナさんも来てくれているハズだから」
「……ユキナ、さんが……」
 アイトが目を伏せると同時に、「それじゃあ、最初で最後の処刑を始めようか」とコウシロウが笑う。
 同時に、スズエさんの身体からツルが生えてきた。
「え……」
 何が起こっているのか分からない。スズエさんは力が入らないのか、膝をついた。顔色が悪くなっていっているけど、苦しそうではない。
「私が作った特製の植物なのよ。いいものでしょ?」
 スズカがクスクス笑いながら、その様子を見ていた。
 ゆっくり、しかし確実にその植物が成長していく。そしてつぼみが花開いた。
 ――それは、赤いバラだった。
「あらあら。最期まで本当にあなた達を大事にしていたのね?赤いバラは「愛情」だものね」
 スズカのその言葉に、ボク達は目を伏せる。エレンさんとシルヤ君は涙を流していた。
 ――結局、守れなかった……。
 本当は守らないといけなかったのに。
 その時だった、下駄の音が聞こえてきたのは。
「まったく……この子は本当に無理するんだから」
 振り返ると、ロビーで見たあの桜色の髪の女性と、着物を着た茶髪の少女が近付いてきていた。
 その少女を見たコウシロウとスズカは驚いた表情を浮かべた。
「なんで……」
「アカリ、エレン君とシルヤ君の傍に行って」
「は、はい」
 着物の女性が茶髪の少女をエレンさんとシルヤ君に預け、スズエさんの近くに歩いていく。
 同時に、赤いバラの色が変わっていくことに気付いた。
(バラの色が……青に、なった?)
 それに気付いたと同時に、スズエさんの指が動いた、気がした。そんなわけ、ないのに。
 でも、それが気のせいじゃないってことはすぐに分かった。
「スズエ、大丈夫?」
 ユキナさんが尋ねると同時に、スズエさんの目が開く。そして、腕に絡まった植物のツルを無理やり引きちぎった。
「ユウヤさん!」
 そして、高いところから飛び降りた。ボクが慌てて走ってスズエさんをキャッチする。
「……っ!スズエさん、大丈夫?」
「大丈夫……ではないですね。頭がくらくらする……」
 おろしながら尋ねると、スズエさんは苦笑しながら答える。
「あー……クソッ、ユキナさんが来てくれるって思ってたから無茶したけど、まさか本当に殺されるとは思ってなかった……」
「え、そうなの?」
「正確には何とか仮死状態にしただけですけどね。でも、これ以上は私も動くのがきついですね……」
 確かに、死んだハズなのにすぐに目を覚ましてってなるとかなり体力が消耗されるだろう。そもそもそんな奇跡が起こるとは思っていなかった。
「スズエはゆっくりしてて。私がどうにかしてあげるから」
 ユキナさん、と呼ばれた女性はスズエさんに笑いかけた。
「ラン君、スズエさんをそっちに連れて行ってくれる?」
「分かったっす」
 ボクがスズエさんを託すと、ラン君は彼女を支えながらレイさん達のところに連れて行った。
 ユキナさんは懐に手を入れると、拳銃を取り出す。
「最期に言い残すことはある?」
「あーあ、失敗したか……」
「でも、私達が死んでも仲間達が引き継いでくれるわ」
「……そう。反省する気はないのね」
 二人の答えにユキナさんは悲しげな表情を浮かべる。しかしそのまま、引き金を引いた。
 動かなくなったことを確認し、ユキナさんはスズエさんのもとに来る。
「ごめんね、スズエ。遅くなっちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ。……すみません、本当は私がしないといけなかったのに」
「ううん、これぐらいならいいよ」
 頭を下げるスズエさんに、ユキナさんは優しく微笑んだ。
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