DEATHGAME~裏切りと信念の姫~

ひいらぎななみ

文字の大きさ
57 / 61
エピローグ

脱出

しおりを挟む
「あの、結局誰なんですか?」
 ユミさんがユキナさんに尋ねると、彼女は小さく笑って「スズエのカウンセリングの先生だよ」と笑う。
「昔、スズエの祖父母やおじが亡くなった時に担当になってね。その時の縁で仲良くしているんだ」
「え、でもかなり若く見えますけど……」
 レイさんがジッとユキナさんを見る。確かに、カウンセリングの仕事をしているにしては若すぎる気がする。
「こう見えてかなり長生きなんですよ、ユキナさん。龍神の血を引いているんでしたよね」
 スズエさんの言葉にあぁ、なるほど……と納得してしまう。普通なら信じられない話だけど、ボク自身も妖狐の血を引いているし異世界というものがあるぐらいなのだ。龍神が存在していてもおかしくないだろう。
「うん、そうだよ。こう見えて平安時代ぐらいから生きてるし。祈療姫とも知り合いだったんだよ」
 ユキナさんもクスクスと笑っている。そんな昔から……と思っていると、
「アイト君も元気そうだね」
「久しぶりー!……まさか本当に来てくれるとは思ってなかったよ」
「アトーンメント……スズエの依頼とあればすぐに駆け付けるよ。まぁ場所特定に時間かかっちゃったけどね」
 アトーンメント、と聞いてユミさんが「え、アトーンメントって……あの、情報屋の?」と目を丸くした。
「ん?どこかで会ったことありました?」
「う、うん……その……母親の身体が弱くて……それで……」
「……あぁ、数年前の、あの高校生か」
 心当たりがあったのか、スズエさんはそう呟いた。そして、
「母親の調子はどう?よければまた手伝ってほしいことがあるのだけど」
 そう、ユミさんを誘った。彼女は目を丸くした後、「でも……」と寂しげな表情をした。
「……大丈夫、手首を確認してごらん?」
 しかし、スズエさんは小さく微笑んでそう告げた。キョトンとした後、彼女はハッと手首で脈を確認し始めた。
「……うご、いてる……?」
「ユキナさんが来た時に、ね」
 その言葉に、ほかの人形達も慌てて確認した。
「……本当だ……」
 レイさんが呟く。あぁ、だから時間稼ぎをしたかったのか。
「本当に……ごめんね、スズエさん。君に全部任せちゃって」
「別にいいよ。一階から動けたのが私とシルヤだけだったし」
 アイトが申し訳なさそうに謝っていると、スズエさんは頭を掻きながらため息をついた。
「そっちこそ、ルイスマ達を縛っててくれていたんでしょ?」
「うん。ボクの得意分野だしね、ナシカミも壊せたし!」
「ドヤ顔するところじゃない。そんなんだからサイコパスって言われるんだぞ」
 アイトのその言葉にスズエさんが苦笑する。「あぁ、あの三人ね」とユキナさんが口をはさんだ。
「シナムキさん?以外の二人は絶対に出さないようにするから安心して」
「……ユキナさんも怖いですよね……」
 怒らせないようにしよう……。
 ユキナさんに連れられ、全員で脱出しようと歩き出す。ボクとスズエさんが後ろからついてくると、彼女に服を掴まれた。
「……スズエさん?どうしたの?」
「……あの、ユウヤさん」
 ボクが振り返ると、彼女は頬を染めながら小さな声で言葉を紡いだ。
「……信じて、助けようとしてくれてありがとう……」
 その言葉に、ボクはその小さな手を優しく握る。
「……ボクは何も出来なかったよ。ボクの方こそありがとう」
 そのまま、ボクは彼女の手を引いて出口まで向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/15:『ちいさなむし』の章を追加。2025/12/22の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/14:『さむいしゃわー』の章を追加。2025/12/21の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/13:『ものおと』の章を追加。2025/12/20の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/12:『つえ』の章を追加。2025/12/19の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/11:『にく』の章を追加。2025/12/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...