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第七十六話 高級な宿

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 街についた一行は、前の町での宿屋での一件があったので、ランクの高い宿を利用する事にした。
 今回は3日程滞在する予定なので、あまりあれこれ気を使いたくないからだ。

 街の入り口で衛兵に質問し、よさそうな宿があったので現在はそちらに向かっていた。

「よさげな宿あってよかったねぇ」
「うん、裕福な商人とかが利用するらしい。だから、従業員もあまり詮索とかしてこないみたい」
「なるほど、それは助かるなぁ。今回も部屋は二つ?」
「いや、まだ確認してからになるけど、同じ部屋でも中で分かれてて、扉もあるらしいんだ。だから大きめの部屋に全員かな」
「そうかそうか。じゃあボクは久しぶりにサーシャと一緒に寝ようかなー」
「それもいいね。きっとサーシャは喜ぶよ」

 会話してるうちに大きく立派な宿屋についた一行が馬車から降りると宿屋の従業員だろうか、男が出てきて頭を下げつつ馬車を見ていると言った。
 素直に馬車を預け、宿屋に入って行く。
 従業員が少しだけ訝しんでいたのは、馬車がいい物ではないせいだろう。

 さすがに裕福な商人が泊まるだけあって宿屋は大きく立派で、また受付は広かった。
 厭味にならない程度に高価そうな装飾が施されている。

 エルとアソートが子供達の相手をしている間に、サイリールが受付に向かった。

「いらっしゃいませ。ようこそおいで下さいました。本日はいかが致しましょうか?」

 さすがにランクの高い店だけあって言葉遣いも丁寧だし昨日泊まった宿屋のように最初に料金をすべて伝えたりはしないようだ。
 それでも昨日の宿屋も普通よりは少しだけいい宿ではあったのだが。

「泊まりたいんだが、部屋内で仕切りのある部屋は空いてるだろうか?人数は五人なんだが」

 サイリールがそう言うと受付の男性はさっと後ろにいるエル達を見て笑顔で答えた。

「はい、ございますよ。部屋内に仕切りがございまして、各部屋にベッドが2つづつございます。小さいお子様二人なら同じベッドで寝ても十分な広さでございます」
「じゃあそこでお願いしたい」
「はい、そちらのお部屋ですと、料金は1日金貨2枚となります。また、夜は18時以降でしたら、いつでもお食事をして頂けます。こちらも料金に含まれていますのでぜひご利用下さいませ。何泊ご利用されますでしょうか?」

 さすがに高級な宿だけあるし部屋が特殊なだけあり、金額は跳ね上がるようだ。

「3日程お願いしたい。延長は出来たりするだろうか?」
「ええ、ご利用日数の最終日の朝に申し付けて頂ければ大丈夫でございます」

 確認を終えたサイリールが金貨を6枚出し、受付の男性がさっと素早く確認すると、金属のプレートがついた鍵を別の男性に渡した。
 サイリールが馬車について尋ねると、こちらできちんと預かりますと言われたので任せる事にした。
 黙ってその場で待機していた、鍵を受け取った男性は話しが終わったのを確認すると丁寧に頭を下げた。

「ご案内致します」

 男性に案内されて一行は部屋まで移動した。
 風呂は地下にあり、夜の20時~24時まで利用が可能との事だった。
 ただ、部屋にも簡易ではあるがシャワーは備え付けてあるそうだが、こちらも20時~24時までしかお湯は出ないそうだ。
 時計については、持っていなくても部屋に備え付けてあるのでそれで確認をして欲しいとの事だった。
 トイレの場所や、部屋内部の説明を聞いて、男性は鍵を渡し去って行った。

「すごいねぇ。ランクが高いとここまで丁寧にされるんだね。びっくりしたー」
「本当でございますね、貴族の屋敷のようでございます」
「うん、すごいね。次回からもこういう宿がいいかもしれないね」
「ええ、長期泊まる場合は、多少高くはありますが、色々と落ち着けそうではございます」
「さて、それじゃ話してた通り、今から僕とアソートは出かけてくる。エルは子供達を宜しくね」
「はい、承知致しております」
「パパ、おにいちゃん、どこいくの?」

 少し不安そうな顔で聞いてくるサーシャの頭を撫でながらアソートが優しく声をかけた。

「下見しに行ってくるだけだよー。明日は一緒に皆で出かけようね」

 その言葉を聞いてぱっと顔を輝かせたサーシャは元気に返事をした。

「うん!たのしみ!」

 そう言うと肩にフォウを乗せ、ファニーと手を繋いで部屋の探検を始めた。

「それじゃ行ってくるね」
「いってきますー」
「いってらっしゃいませ」

 そうして二人は宿を出て行った。
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