追放されて一人になったので全部斬る!

ルノ

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追放少女と乱戦

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凪咲たちは、崩れ落ちた瓦礫の中で目を覚ました。

「お、おねえちゃん……だいじょうぶ?」

ミナが、ぐにゃりとしたスライムの形態で凪咲を支えていた。
どうやら、落下の衝撃を彼女が完全に受け止めてくれたらしい。
凪咲自身も、ほとんど傷一つ負っていなかった。

「……ありがと、ミナ」

その横で、弓使いのリアが目を丸くしていた。
人間だったはずの少女が、スライムへと変化した姿を見て、流石に驚きは隠せなかった。
だが。

「……今は、その話をしてる場合じゃないね」

リアはすぐに顔を引きしめた。
周囲を埋め尽くす光景が、すべてを物語っていたからだ。

巨大な、うねるような影。
無数の、地を這う音。
ずるずると、ずるずると、地を覆うように押し寄せてくる。

それは、異常に肥大化したミミズ型モンスターたちだった。

「……あれが、天井をぶち破った?」

それとも、別の何かがいるのか。
分からない。
だが、立ち止まっている暇はなかった。

負傷していた他の冒険者たちも、壁を背に必死で戦っていた。
隊列を組み、囲まれないように踏ん張りながら、剣や槍を突き出す。

リアも素早く後方へ下がり、次々と矢を放つ。
ミナも、何度も体当たりを繰り返し、ミミズの群れを押し返そうと奮闘する。

だが。

「……私は」

凪咲の手が、剣の柄を震わせた。

(今、ここで剣を振れば……)

狭いこの空間で居合を放てば、敵だけではない。
必死に戦っている仲間たちすらも、まとめて斬り裂いてしまうだろう。

剣が振れない。
またしても、過去と同じ恐怖が凪咲を縛り付けた。

「くそっ、数が多すぎる!」

「後がないぞ、もう……!」

冒険者たちから、ついに弱音が漏れ始める。
ミミズたちは、いくら倒しても奥から這い出てきた。
このままでは、確実に押し潰される。

(何か、変えなきゃ……)

ミミズが這い出してくる方向を見つめ。
そして、静かに決意する。

「……ミナ」

「うん!」

何も言わずとも、ミナは凪咲の意図を悟った。
彼女はすぐにスライム形態になり、凪咲の全身を包み込む。

次の瞬間、凪咲は壁を蹴り、ミミズの群れをすり抜け、奥へと突き進んだ。

「援護する!」

リアの矢が次々と飛び、進路を開ける。
その支援を受けながら、凪咲はついに、ミミズたちの発生源。
巨大な卵だらけの広間へとたどり着いた。

広間の中心には、無数の卵がうず高く積まれている。
そして、その周囲を守るかのように、さらに巨大なミミズたちが蠢いていた。

誰もいない。
味方はいない。
壁もない。

ここには、自分と敵だけ。

――なら、斬れる。

凪咲は静かに刀を抜いた。
周囲の空気が凪ぐ。
ミナの身体がぴったりと密着し、ブレスや毒液から彼女を守る。

「おねえちゃん……!」

ミナの声が、背後から聞こえた。
そして。

凪咲は、ただ、すべてを断つために踏み出した。

一閃。
また一閃。

放たれる斬撃は、もはや音すら置き去りにする。

ミミズたちが一瞬で切り裂かれ、卵の群れも次々と叩き斬られていく。
鉄の皮膚も、巨体も、凪咲の剣の前では、ただの紙のようだった。

血と体液が飛び散る中、ただ一人、ただ一つの意志を貫いて。

この広間で立っていられる者は、もはや。
凪咲と、彼女を守るスライムだけだった。

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